異化

脱水素酵素の実験-コハク酸脱水素酵素の実験-

脱水素酵素の実験とは

酵母などを用いて、脱水素酵素の一種であるコハク酸脱水素酵素(コハク酸デヒドロゲナーゼ)の性質を調べる実験は有名である。手順として次のように行われる。

  1. ツンベルク管の主室に酵母液(ドライイーストを蒸留水に混ぜたもの)、緩衝液を加える。
  2. ツンベルク管の副室にコハク酸ナトリウム液メチレンブルーを加える。
  3. アスピレーターで十分に脱気した後、密閉状態にする。これは、脱水素された水素原子が酸素(気体)と反応することを防ぐためである。
  4. その後、主室と副室の液を室温で混合し、反応させた。

http://www.nps.ed.jp/

実験結果

主室と副室の液を混合すると、メチレンブルーの青色が次第に薄くなっていく。

コハク酸脱水素酵素はコハク酸から水素を引き抜く作用を持つ。通常は、NADなどの補酵素が受け取るが、溶液内に大量にあるメチレンブルーも水素を受け取ることができる。

メチレンブルーは水素を受け取ると、構造が変化し、無色になる性質を持っている。

http://rikabank.org/

なお、ツンベルク管に空気を入れると、メチレンブルーの水素が空気中の酸素に奪われ、色が青色に戻る。

http://tekibo.net/biology-13/

脱水素酵素とは?

脱水素酵素とは、物質から水素を引き抜く酵素である。コハク酸脱水素酵素は、クエン酸回路で使われる酵素である。

緩衝液を加える理由

酵素のしっかりとした反応を見るためには、緩衝液を加える必要がある。緩衝液はpHの変化を抑える溶液である。酵素反応の活性には最適pHがあり、pHを一定にすることは安定した反応を見るために重要である。

CoA(コエンザイムA)

CoA(コエンザイムA)

CoAコエンザイムAの正式名称を持つ補酵素である。 補酵素とは酵素の活性を発現させる非タンパク質性の低分子有機化合物である。CoAが結合する物質には様々な種類がある。

CoA
緑色の部分がCoAhttps://commons.wikimedia.org/

アセチルCoA

CoAにアセチル基(CH3COO)が結合した物質をアセチルCoAと呼ぶ。生体内ではアセチルCoAが様々な経路で合成される。アセチルCoAは酢酸にCoAが結合した物質であり、クエン酸回路オキサロ酢酸と一部が結合し、クエン酸となる。消費されない過剰のアセチルCoAは脂肪酸合成の材料となり、最終的に中性脂肪となる。

 アセチルCoA
https://commons.wikimedia.org/

クエン酸回路でのアセチルCoA

アセチルCoAはオキサロ酢酸と反応し、アセチル基のみがクエン酸回路に組み込まれる。CoAは補酵素であるため、酵素の活性を発現するためにサポートするだけで、クエン酸回路には組み込まれない。

基質レベルのリン酸化と酸化的リン酸化

基質レベルのリン酸化(解糖系)

高エネルギーのリン酸を持つ化合物から、ADPにリン酸が渡されてATPが生成される反応を基質レベルのリン酸化と呼ぶ。

基質レベルのリン酸化
基質
①酵素が作用する相手の物質。アミラーゼに対するデンプンなど。酵素基質。
②呼吸に使われる物質。糖類や脂肪など。

解糖系

解糖系では、グリセルアルデヒドリン酸がADPにリン酸を渡し、ピルビン酸とATPを生じる。これはエネルギーの高い物質からリン酸がADPへ渡されるので、基質レベルのリン酸化である。

呼吸

酸化的リン酸化(電子伝達系)

ミトコンドリアの内膜にある電子伝達系で起こる一連のリン酸化反応を酸化的リン酸化と呼ぶ。電子伝達系では、NADHやFADH2が酸化されて(電子と水素を失って)、NAD+やFADとなる。その際に放出された電子は酸素と結合し、酸素原子は還元されて水分子となる。

一方、マトリックス内に侵入したH+は濃度勾配を形成し、ATP合成酵素を通る。その際のエネルギーを利用してADPにリン酸を結合させ、ATPを合成する。 

電子伝達系

FADH2

FADH2とは

フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)は、水素つを運ぶことができる物質である。還元(水素を得る)されることによって、水素原子2つと結合し、FADH2となる。

FAD + 2H+ + 2e- ⇔ FADH2
FADH2

http://ja.wikipedia.org

FADH2の役割

ミトコンドリアのクエン酸回路で補酵素として使用される。NADPHは葉緑体、FADH2とNADHはミトコンドリア、この補酵素の使用場所を混乱しないように区別することが大切である(NADPH、NADPについて)。

呼吸

http://ja.wikipedia.org/wiki/

補酵素まとめ

同化・異化で使われる補酵素をまとめると、次のようになる。

光合成 葉緑体 NADPH
呼吸 ミトコンドリア NADH(解糖系・クエン酸回路)
FADH2(クエン酸回路)

呼吸の仕組み-解糖系・クエン酸回路・電子伝達系-

ミトコンドリアの構造

ミトコンドリアは内膜外膜からできている。内膜は内側に折れ曲がってひだひだを形成している。このひだひだをクリステと呼ぶ。内膜に包まれた空間はマトリックスと呼ぶ。マトリックスにはクエン酸回路などの代謝経路がある。内膜には電子伝達系、ATP合成酵素、などの酵素が埋め込まれている。

ミトコンドリア

呼吸の仕組み

呼吸とは酸素を用いて、グルコースを水と二酸化炭素に分解しエネルギーを得る反応である。呼吸全体で最大で38ATPを作ることができる。呼吸には解糖系、クエン酸回路、電子伝達系の3段階がある。

グルコース + 6O2 +6H2O → 6CO2 +12H2O +38ATP

 

エネルギー効率

グルコース1molが完全に分解されたとき、2867kJに相当するエネルギーが生じる。燃焼反応であれば全て熱エネルギーとなるが、呼吸ではこのエネルギーを利用して最大で38molのATPを合成する。

ADPとリン酸からATP1molを合成するのには30.5kJのエネルギーを要する。よって、1molのグルコースから38molのATPを合成する際のエネルギー利用の効率は次の式となる。

(30.5kJ × 38) ÷ 2867kJ × 100 = 約40%

残りの60%は熱として失ったと考えることができる。

解糖系

発酵の解糖系と同様の反応が起こる。グルコース1分子からピルビン酸2分子が生成され、ATP2分子が生成される。

解糖系

クエン酸回路

ミトコンドリアのマトリックスで起こる反応。ピルビン酸が、脱炭酸酵素脱水素酵素によって、二酸化炭素、H+、e-に分解される。また、水が付加される。H+、e-はNAD+FADと結合し、電子伝達系へと供給される。クエン酸回路では、ピルビン酸1分子からATP2分子が生成される。

電子伝達系

ミトコンドリアの内膜にある。解糖系とクエン酸回路で生じたNADHFADHからH+とe-が放出される。e-は電子伝達系のシトクロム(鉄を含むタンパク質)に次々伝達されていき、エネルギーを放出する。そのエネルギーを利用してH+が外膜と内膜の間に取り入れられ、H+の濃度差によってATP合成酵素が働き、34ATPを生成する。e-は最終的に酸化酵素(シトクロムオキシダーゼ)によってH+と結合し、その後O2と結合してH2Oとなる。

発酵

アルコール発酵

酵母菌などが行う発酵をアルコール発酵と呼ぶ。グルコース1分子からエタノール×2二酸化炭素×2が放出される。その過程でATP×2が合成される。呼吸とは異なり酸素を使用しない。

解糖系

発酵には共通して解糖系と呼ばれる反応経路が存在する(下図左)。解糖系はすべての生物が持つ代謝経路であり、細胞質基質で行われる。解糖系はグルコース1つからピルビン酸2個が生じる反応である。

呼吸
  • 物質の変化:グルコース→フルクトースビスリン酸→グリセルアルデヒドリン酸×2→ピルビン酸×2
  • ATP:2個ATPが消費され、4個ATPが合成される。つまり2個ATPが増える。
  • 脱水素酵素:グリセルアルデヒドリン酸からピルビン酸への変化は、脱水素酵素によって水素×4と電子×4が引き抜かれることによって起こる。補酵素はNAD+であり、NAD+×2が水素と電子を受け取る。受け取りきれなかった2H+は余る。

解糖系で必ず覚えて置かなければならないことは、1個のグルコースから、2個のATPができることである。この量的関係が非常に重要となる。

グルコース + 2NAD+ → 2ピルビン酸 + 2NADH + H+ + 2ATP

さらに詳しく化学的に知りたい場合は、下図を参考にして欲しい。下図ではGlyceraldehyde3-phospate(グリセルアルデヒドリン酸)からは2個だが、図は便宜上1個で描かれている。

解糖系

ピルビン酸→エタノール

ピルビン酸はその後、脱炭酸酵素によってCO2が引きぬかれアセトアルデヒトになり、NADHによって還元され(水素と電子を渡され)、エタノールとなる。

乳酸発酵

乳酸菌が行う反応である。解糖系はアルコール発酵と同様である。グルコースからピルビン酸になった後、NADHに還元されて乳酸となる。グルコース1分子から乳酸×2が合成される。呼吸とは異なり酸素を使用しない。

呼吸商(RQ)とその計算方法

呼吸商とは

生物が放出する二酸化炭素を外部から吸収した酸素で割ったものを呼吸商(RQ)と呼ぶ。つまり、1酸素あたりにどれくらい二酸化炭素を放出するか、という値である。

kokyu

呼吸基質(炭水化物、脂質、タンパク質)によって呼吸商の値は異なる。例えば、炭水化物では次のような式になる。

C6H12O6 + 6O2 + 6H2O → 6CO2 + 12H2O

酸素が6、二酸化炭素が6なので、6÷6=1。炭水化物の呼吸商は1となる。

脂質はすべてがパルチミン酸だった場合は次のようになる。なお、下のような化学反応式は覚える必要はない。詳しくは下の「呼吸商の計算」を見てほしい。

2C51H98O6+145O2102CO2 + 98H2

RQ=102/145=0.703≒0.7

よって、脂質の呼吸商は0.7である。タンパク質は体内で完全に燃焼しないので計算は簡単ではないがタンパク質の呼吸商は約0.8となる。まとめると、各呼吸基質の呼吸商は次のようになる。

  • 炭水化物:1.0
  • タンパク質:0.8
  • 脂質:0.7

呼吸商の計算方法

例えば、C16H32O2の物質が好気呼吸に使われた場合の呼吸商を求めてみよう。始めに、この呼吸基質が好気呼吸に使われた反応式を作成する。この反応式は暗記する必要は全くなく、その場で作ることができる。

C16H32O2 + xO2 → yCO2 + zH2O

とO2、CO2、H2Oの係数をそれぞれx、y、zと置く。あとは化学反応式を作る方法と同じように式を完成させる。

Cに注目する

左辺はCが16個なのでy=16とする。

Hに注目する

左辺はHが32個なのでz=16とする。

Oに注目する

右辺にはOが48個あり、左辺には2個ある。そのため、残りの46個がxO2にあればよいのでx=23となる。

よって反応式は次のようになる。

C16H32O2 + 32O2 → 16CO2 + 16H2O

呼吸商は、CO2 / O2 なので次のようになる。

y / x = 16 / 23 =0.7

ちなみに呼吸基質はその物質によって呼吸商が決まっている(炭水化物:1.0、タンパク質:0.8、脂肪:0.7)。よって上記の物質は脂肪であることがわかる。

混合物の呼吸商

何か物を食べる際に、タンパク質単体で食べることは滅多にない。肉にはタンパク質も脂肪も炭水化物も含まれている。その際にはどのように計算したら良いだろうか。次の例題を見てみよう。

タンパク質の呼吸商は0.8である。1gのタンパク質が好気呼吸で消費されると、0.95Lの酸素が吸収され、0.16gの窒素が尿中に排出される。ある動物が酸素を428.0L吸収し、二酸化炭素を380.4L放出し、窒素8gを尿中に排出した。この時のタンパク質以外の呼吸商を求めよ。

タンパク質以外の物質で使用した際のO2を求める。

問題文より、タンパク質1gから0.16gの窒素が排出されるので、窒素8gを排出するのに必要なタンパク質は次のようになる。

8 / 0.16 = xg / 1g

x= 50g

さらに、タンパク質1gからは0.95LのO2が吸収されるので、50gのタンパク質では次のようになる。

0.95 × 50 = 47.5L

全体で使用した酸素量は428.0Lなので、タンパク質以外の呼吸基質で使用した酸素量は次のようになる。

428.0L – 47.5L = 380.5L

タンパク質以外の物質で排出されたCO2を求める。

上記と同様の方法でも良いが、呼吸商がわかっているため、次のような方法でもタンパク質で排出された二酸化炭素量を求めることができる。

タンパク質で排出された二酸化炭素 / 47.5L = 0.8

タンパク質で排出された二酸化炭素 = 38.0L

全体で排出されたCO2は380.4Lなので、タンパク質以外の物質で排出されたCO2は次のようになる。

380.4L – 38.0L = 343.4L

呼吸商を求める

タンパク質以外での呼吸商は次のようになる。

342.4L / 380.5L = 0.90

呼吸基質

クエン酸回路は解糖系からピルビン酸を受け取って、化学反応を行うが、それ以外にも方法はある。
ガンジーが断食をしていたとき、みるみる体の骨と皮になっていった姿から、脂肪とタンパク質(筋肉)がエネルギーを作るために使われたことが想像できる。まさに、その通りで、クエン酸回路は脂肪タンパク質でも回すことができる。
このように、呼吸によって分解されるものを呼吸基質と呼ぶ。

ganji
「脂肪とタンパク質を分解中のガンジー」

脂質の代謝

体内での脂肪は、脂肪酸(-COOH)グリセリン(OHが3つある)が脱水縮合したエステル(-COO-結合を持っている)が一般的だ。下の構造式はトリステアリンという脂肪である。COO結合が脂肪酸とグリセリンの結合部位にある。

torisutearin

脂肪が加水分解されると、脂肪酸モノグリセリドに分解される。モノグリセリドとは、グリセリンに脂肪酸が1つだけくっついている物質である。

mono
http://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/j-scie/q_a/life2_02.html

脂肪酸はミトコンドリアのマトリックスでβ酸化されて、アセチルCoAになる。β酸化とは、脂肪酸にCoAがついて、剥がれてを繰り返し、アセチルCoAを生産していく反応である。生産されたアセチルCoAはクエン酸回路で使われる。また、モノグリセリドは解糖系で消費される。

β酸化(ベータさんか)とは脂肪酸を酸化して脂肪酸アシルCoAを生成し、そこからアセチルCoAを取り出す代謝経路のことである。β酸化は4つの反応の繰り返しから成り、反応が一順するごとにアセチルCoAが1分子生成され、最終生産物もアセチルCoAとなる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%CE%92%E9%85%B8%E5%8C%96

be-ta
β酸化の例http://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch3-4/keyword6/

タンパク質の代謝

タンパク質はアミノ酸が繋がったものである。はじめに加水分解によって、アミノ酸に分解される。そして、脱アミノ反応によってアンモニア有機酸に分解される。脱アミノ反応とは、アミノ基(-NH2)を除去し、NH3を合成する反応である。アンモニアは肝臓で尿素に変えられる。有機酸とは、有機物の酸の総称である。カルボン酸(-COOH)であることが多い。有機酸はピルビン酸や、アセチルCoAの材料として使用され、クエン酸回路で使用される。