発生

神経誘導の仕組み(ノギン、コーディンの作用)

神経誘導とは

外胚葉は原腸胚後期において中胚葉に裏打ちされるような構造を取り、中胚葉から誘導物質が分泌されて神経管が誘導されることが知られている。この一連の誘導を神経誘導と呼ぶ。神経誘導は、ノギン、コーディン、BMPなどのタンパク質によって制御されている。

http://csls-text.c.u-tokyo.ac.jp/

ノギンとコーディン

ノギンコーディンと呼ばれるタンパク質は、β-cat(βカテニン)などの作用によって合成されるタンパク質である。β-catは胞胚期においては、胚の予定背側で発現するタンパク質である。ノギンとコーディンは神経を誘導する物質であることが明らかになっている。下画像では赤点がノギンやコーディンである。

BMPとは

BMPは肺全体に均一に分布しているタンパク質である。外胚葉にはBMP受容体が存在しており、BMPが受容体に結合すると、表皮分化に関わる遺伝子発現が促進される。一方、BMPが受容体に結合しないと、神経分化に関わる遺伝子の発現が促進される。

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ノギンとコーディンのBMPへの作用

ノギンとコーディンはBMPに結合する物質であり、外胚葉の一部(背側)ではBMPは受容体に結合できなくなっている。その結果、背側では神経が誘導され、その他では外胚葉は表皮となる。つまり、ノギンとコーディンは直接神経を誘導するのではなく、表皮への誘導を阻害することによって、神経の分化を引き起こしている。

下画像右では、T字部分がBMPが受容体に結合するのを抑制している領域(予定背側)である。

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ホメオティック遺伝子とホックス遺伝子の違い

ホメオティック遺伝子とは

ホメオティック遺伝子とは、突然変異を起こすとホメオティック突然変異(身体のある部位が別の部位に換わる突然変異)を起こす遺伝子のことを指す。

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ホックス遺伝子とは

それでは最大の混乱を生じるホックス遺伝子のいくつかの定義を並べてみたい。

ホックス遺伝子という調節遺伝子は、分節遺伝子によって形成された体節が、頭・胸・腹のどの部位になるかを決める。ホックス遺伝子に突然変異が起こると、体のある部位だけが別の部位に換わる突然変異体となる。

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前後軸に沿った形態の形成に中心的な役割を果たしている調節遺伝子群をホックス遺伝子群と呼ぶ。ショウジョウバエのホメオティック遺伝子もホックス遺伝子の1つである。

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脊椎動物を含む多くの動物で、ショウジョウバエのホメオティック遺伝子とよく似た塩基配列があり、染色体上で集まって並んで存在する遺伝子群が発見された。それらは、ショウジョウバエのものも含めてホックス遺伝子と呼ばれる。

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ホメオボックスに相同性の高い塩基配列領域をもつ遺伝子の総称。

Weblio辞書

 

どちらもホメオボックスを持つ遺伝子

ホメオティック遺伝子とホックス遺伝子の共通点として、どちらもホメオボックスと呼ばれる約180塩基対の共通した配列を有することが挙げられる。ホメオボックスとは、ホメオドメイン(DNAに結合するタンパク質構造)をコードしている塩基配列である。ホメオボックス遺伝子は生物に普遍的に存在し、ゲノム中に特徴的なクラスターを形成しているHox遺伝子群と、Hox以外のゲノム中に散在するnon-Hox遺伝子に大別される。

下表はホメオボックスの塩基配列の一部である。異なる生物種においても塩基配列に類似性が見られる。

ホメオドメイン

ホメオドメインとは

ホメオドイメインとは、DNAに結合する機能を有するヘリックスターンヘリックス構造のことである。ホメオドメインは60のアミノ酸からなる。

ホメオドメイン

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ホメオボックスは、DNAに結合するために調節遺伝子が持つ共通の領域である。もちろんその中には、体節決定以外の調節遺伝子も福間らえる。ホメオボックスを持つ遺伝子はクラスター構造を取るものと,クラスター構造を取らないものに大きく分けることができる。クラスター構造を持つものには、ショウジョウバエのホメオティック遺伝子と脊椎動物のホックス遺伝子とがある。これらはヒト,マウスなどで様々な呼び名が使われていたが,最終的にHoxA, HoxB, HoxC, HoxDと統一され,全ての脊椎動物で共通した名前を使っている。

ホメオティック遺伝子とホックス遺伝子の違い

ホメオティック遺伝子の厳密な定義は、ホメオティック突然変異を生じさせる遺伝子のことである。ホメオティック突然変異とは、名前の通り、ホメオティック突然変異を生じさせる遺伝子のことである。ショウジョウバエの場合、lab、pb、dfd…など多くのホメオティック遺伝子がある。これらのホメオティック遺伝子は調節遺伝子であるため、ホメオボックス遺伝子を持っている。

一方、ホックス遺伝子はホメオボックス遺伝子(ホメオドメインをコードする遺伝子)を持つ遺伝子のうち、形態形成に関係した遺伝子の総称であると言える。特に脊椎動物の場合には、ホックス遺伝子がクラスター(集合)構造をしており、複数のホックス遺伝子によって1つの部位が特徴付けられている。

ショウジョウバエのホメオティック遺伝子はホメオボックスを有して形態形成に関わる遺伝子のため、ホックス遺伝子である。脊椎動物などでは発生様式が極めて複雑であり、ショウジョウバエのようなホメオティック突然変異体が生まれづらい。ホメオティック突然変異体を生じさせる遺伝子がホメオティック遺伝子とするならば、その範囲は極めて狭いものとなるだろう。しかし、マウスなどでも体節を決定する同様の遺伝子は存在するわけで、それらの名称をホックス遺伝子と呼んでいる。ホメオティック遺伝子の定義が、さらに広くなったものがホックス遺伝子であると言える。もちろん、ショウジョウバエのホメオティック遺伝子をホックス遺伝子と呼んでも差し支えはない。しかし、脊椎動物のホックス遺伝子をホメオティック遺伝子と呼ぶことはしないようである。

まとめると、次のような表になる。

花の形成(ABCモデル)

花の形成(ABCモデル)

花の形成には調節遺伝子が3つ働く。それぞれ、A、B、Cと名づけられており、ホメオティック遺伝子である。それぞれが相互作用して、遺伝子発現を調節している。

  1. A→がく
  2. A+B→花弁
  3. B+C→おしべ
  4. C→めしべ

ABC

ホメオティック遺伝子

胚発生の初期において組織の前後軸および体節制を決定する遺伝子である。ショウジョウバエのホメオティック遺伝子(アンテナペディア、バイソラックス)などが有名。

ホメオティック遺伝子

ABCモデルのホメオティック突然変異

A、B、Cのいずれかが突然変異が起きると、花の形態が大きく変化する。

  1. Aの異状:がくと花弁を形成しない。
  2. Bの異状:花弁とおしべを形成しない。
  3. Cの異状:おしべとめしべができない。
ホメオティック遺伝子
ホメオティック突然変異http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2005278499

裸子植物の生殖

裸子植物の生殖

裸子植物とは

種子植物のうち胚珠がむきだしになっているものを指す。ソテツ類、イチョウ類、マツ類、グネツム類を含む。裸子植物は種子を作るようになった最初の植物である。イチョウの種子であるギンナンは一見、子房があるように見えるが、実際は種皮が厚くなったものである(詳しくは→「イチョウの種子のギンナンは子房ではない」)。

精子の形成

イチョウ・ソテツに限っては遊泳する精子を形成する。裸子植物・被子植物では通例精子を作ることはないので、それより下等な植物の形質を持っていると言える。

イチョウ精子

胚(2n)の形成

花粉管内でできた精細胞と胚のう内の卵細胞が受精し、胚(2n)となる。被子植物とは異なり胚乳(n)とは受精(重複受精)しない。

胚

 

松ぼっくりの形成過程は次の図の通りである。

松

植物の受精と発生

被子植物の重複受精

被子植物では、精細胞(n)×2卵細胞(n)中央細胞(n+n)と受精する。これを重複受精と呼ぶ。受精後は、卵細胞は受精卵(2n)に、中央細胞は胚乳(3n)になる。裸子植物では胚乳の核は受精しないため、nのままである。

重複受精
紫色のものが精核http://ecurrentaffairs.in/

花粉管の誘導

助細胞はルアーと呼ばれるタンパク質を放出し、花粉管を誘導する。

胚の発生

受精卵は体細胞分裂を繰り返し、胚柄球状胚を形成する。球状胚は成長し、子葉、幼芽、胚軸、幼根となる。胚柄を除くこれらをと呼ぶ。

胚
一番左図の灰色のひょろっと伸びているものが胚柄、一番右図の濃い緑色が子葉、赤色が幼芽、黄色が胚軸、紫色が幼根http://www.mun.ca/biology/desmid/brian/BIOL3530/DB_06/DBNPlant.html

種子の形成

種子は胚珠が成長したものである。被子植物の場合、子房が成長した果実の中に種子ができる。種子には胚乳に栄養を蓄えている有胚乳種子と、子葉に栄養を蓄えている無胚乳種子がある。

胚珠

有胚乳種子
http://blog.goo.ne.jp/daimajin-b/e/35aa64677784d1b5e34a74b620da2379

柿
有胚乳種子http://d.hatena.ne.jp/gzutetsu/20091202/p1

有胚乳種子と無胚乳種子の覚え方

解答もあるが、あーまくない。
キ、ネ、トウモロコシ、胚乳種子、サガオ、ブラナ、メ、リ、胚乳種子

自家不合和性

同じ花の中で受粉が起こることを自家受粉と言う。自家受粉は遺伝子多様性を損なうことから、自家受粉を防ぐ仕組みを持つ植物もある。その仕組を自家不合和性と呼ぶ。

S遺伝子

ある膜タンパク質の遺伝子。柱頭のS遺伝子由来の膜タンパク質と、花粉のS遺伝子由来の膜タンパク質が全く同じであったとき、花粉管の伸長が阻害される。

植物の配偶子形成

被子植物の配偶子形成

被子植物は雄性配偶子である花粉と、雌性配偶子である卵細胞が形成される。卵細胞形成の際には、栄養分を蓄える胚のうも作られるのが特徴である。

花粉の形成

  1. 花粉母細胞(2n)が減数分裂し、花粉四分子(n)となる。
  2. 花粉四分子(n)は体細胞分裂し、雄原細胞(n)花粉管核(n)となる。
  3. 雄原細胞(n)はさらに体細胞分裂し、精細胞(n)×2となる。
  4. 精細胞(n)は受精するための精核(n)をそれぞれ1つずつ持っている。
花粉
上:花粉の形成。紫色のものが花粉管核http://www.biosci.ohio-state.edu

精細胞

卵細胞と中央細胞と受精するため精細胞は2つある。これを重複受精と呼ぶが、重複受精をするのは被子植物のみ。

精細胞
Aが精細胞核、Bが精細胞膜表面、CがAとBを合わせたもの。http://www.natureasia.com/ja-jp/jobs/tokushu/detail/289

花粉管

柱頭から胚のうまで距離があるため、花粉管を伸ばして精細胞を送る。

胚のうの形成

  1. 胚のう母細胞(2n)が減数分裂し、胚のう細胞(n)とその他の細胞(n)×3となる。
  2. 胚のう母細胞以外は退化する。
  3. 胚のう母細胞で核分裂が起き、8個の核が生じる。
  4. それぞれが細胞膜でしきられ、反足細胞(n)×3、中央細胞(n+n(核が2つある))、助細胞(n)×2、卵細胞(n)となる。それぞれを全て合わせて胚のうと呼ぶ。
花粉
下:胚のう形成。右端のオレンジ色が反足細胞、青色が中央細胞の核、赤色の中央が卵細胞、赤色の残りが助細胞http://www.biosci.ohio-state.edu

反足細胞

胚のうに養分を供給する役割があるかもしれないとされているが、よくわかっていない。発生に伴い消失する。

反足細胞
左にある3つの細胞が反足細胞http://plantphys.info/plant_biology/labaids/flowerlab/

中央細胞

精細胞と受精して胚乳(3n)となる。核が2つあるのが特徴。

egg
真ん中の楕円の細胞が中央細胞。中に助細胞(左)、卵細胞(左)、反足細胞(右)も埋まっている。http://www.iasprr.org/old/iasprr-pix/lily/female.shtml

助細胞

花粉管を誘導する物質を放出する。

卵細胞

精細胞と受精してになる。

裸子植物の配偶子形成

裸子植物の一部(イチョウやソテツ)は精細胞の代わりに精子を形成する。

母性因子による体軸の決定

母性因子

母性因子とは卵細胞が持っている物質で、体軸の決定を行っているもののことを指す。具体的にはmRNAタンパク質がそれに当たる。ウニの母性因子、ショウジョウバエのビコイドmRNA、カエルの卵のディシュベルドタンパク質などがあげられる。

ウニの母性因子

ウニの体軸決定因子を調べるために次の実験を行った。

  • 植物極と動物極どちらも含むようににウニの未受精卵を切断する(実験1)
  • 植物極、動物極だけの細胞を作るためににウニの未受精卵を切断する(実験2)

その後、精子を受精させて発生過程を観察した。なお、無核の卵でも精子の進入によって発生が進むことは確認されている。実験結果は以下のようになった。

  • 1の実験では、どちらも正常な幼生が発生した。
  • 2の実験では、動物極側は胞胚期で発生が停止した。植物極側は不完全な幼生が形成された。

このことから、植物極側に体軸を決定する母性因子があること、動物極側の細胞質基質もなければ正常な発生をしないことが判明した。

カエルの発生

受精卵から尾芽胚まで

カエルの発生は次の過程を経る。原腸胚からはウニよりも複雑な過程を辿る。

  1. 受精卵から4細胞期までは等割を行う。
  2. 8細胞期からは不等割を行う。
  3. 胞胚腔はウニとは異なり、動物局側にできる。
  4. 原腸胚初期には原腸が胞胚腔内に貫入し、原口が形成される。この時、内胚葉、中胚葉、外胚葉が分かれる。
  5. 原口は最終的に内胚葉によって埋められ、卵黄栓となる。
  6. 神経胚には、外胚葉から神経板が、中胚葉から脊索・側板が、内胚葉には腸管ができる。
  7. 神経胚が進むと、側板は体節・腎節・側板に分化する。
  8. 外胚葉からは神経堤細胞が移動し、末梢神経神経膠細胞(グリア細胞)が形成される。
  9. 尾芽胚になると、が発達する。また、肛門ができる。

原腸陥入

カエルの発生で最も理解しにくいのは原腸陥入ではないだろうか。ウニでは胞胚腔が残る形で原腸が形成されるが、カエルでは原腸が胞胚腔を埋め尽くす。

カエル
胞胚腔が原腸によって追いやられているのがわかる。https://embryology.med.unsw.edu.au/embryology/index.php/Book_-_The_Frog_Its_Reproduction_and_Development_7

胚葉の分化

まとめると、外胚葉、中胚葉、内胚葉は次のように文化する。

外胚葉

  • 表皮:皮膚、水晶体、角膜、嗅上皮、内耳
  • 神経管:脳、脊髄、網膜

中胚葉

  • 体節:骨格、骨格筋、皮膚の真皮
  • 腎節:腎臓、輸尿管
  • 側板:心臓、血管、平滑筋、腸間膜、結合組織

内胚葉

  • 腸管:胃、腸、肝臓、膵臓、中耳、肺、気管、えら、膀胱

ウニの発生

受精卵からある程度の成体(幼生)になるまでの過程をと呼ぶ。ウニ、両生類、哺乳類では胚の内部に空洞(胞胚腔)ができ、胞胚となる。その後、細胞が胞胚腔内に陥入し、原腸を形成する原腸胚となる。その後、細胞は胚葉と呼ばれる大まかなグループへと分化する。

外胚葉

表皮や神経管を形成する。

中胚葉

骨格や、腎臓、筋肉、心臓、血管などを形成する。

内胚葉

内蔵などを形成する。

ウニの発生

ウニの発生は次の過程で進む。

  1. 受精卵~8細胞期までは等割である。8細胞期からは不等割が行われる。
  2. 胚はさらに細胞分裂を重ね、桑実胚となる。
  3. 胞胚期には受精膜から飛び出し孵化する。中は空洞で、胞胚腔と呼ばれる。
  4. 原腸胚初期には植物極側から細胞の陥入が始まる。
  5. 原腸胚後期には原腸が形成され、貫入した入り口は原口とよばれる。原腸を形成する細胞は内胚葉となる。胞胚内には細胞が浮遊し、中胚葉となる。一部は骨片に分化している。胞胚の表面の細胞を外胚葉と呼ぶ。
  6. プリズム形幼生になると、原腸が反対側に達し、が形成され。原腸は消化管となる。
  7. プルテウス幼生になると形が変形してくる。

卵割

卵割

卵割とは、卵の初期の体細胞分裂のことである。細胞が成長せずに分裂を続けてどんどん小さくなっていくのが特徴である。また、細胞周期が短く(G1、G2がない)、それぞれの細胞が同じペースで分裂が行われる。

卵の種類

卵には卵黄の分布によって種類がある。図はピンク色が核、黄色が卵黄。

等黄卵

卵黄が少なく、均一に分布している。ウニや哺乳類など。

端黄卵

卵黄が多く、植物極側(卵の下側)に偏っている。両生類など。

端黄卵

卵黄がとても多く、植物極側に偏っている。魚類、爬虫類、鳥類など。

端黄卵

心黄卵

卵黄が卵の中央に分布している。昆虫や甲殻類など。

卵割の様式

等割

卵が均等に卵割する。

等割

不等割

卵が不均等に卵割する。

不等割

盤割

卵のごく一部が卵割する。ニワトリなど。

盤割

表割

卵の表面全体が卵割する。中央には卵黄がある。ショウジョウバエなど。