遺伝子プールとは?
交配可能な集団に存在する遺伝子のすべてを遺伝子プールと呼ぶ。遺伝子頻度とは遺伝子プール内における遺伝子の出現頻度である。
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遺伝子頻度と遺伝子型の頻度
遺伝子プールにおける、1つの遺伝子座における対立遺伝子の頻度を遺伝子頻度と呼ぶ。遺伝子頻度はある遺伝子の数を全体の遺伝子数で割って計算できる。
遺伝子型の頻度は、それぞれの遺伝子の頻度を掛けた値となる。
例えば、100個体の集団でAとaの2つの対立遺伝子が存在し、AA、Aa、aaの遺伝子型を持った個体が64、32、4個体存在したとする。
Aとaが自由交配によって混ぜ合わさると考えると、実際の遺伝子型の組み合わせは次の通りになる。
A | a | |
A | AA | Aa |
a | Aa | aa |
これに、実際の遺伝子型の頻度(1=100%とする)を当てはめると次のようになる。
A | a | |
A | AA=0.64 | Aa=0.16 |
a | Aa=0.16 | aa=0.04 |
それぞれの遺伝子型の頻度は、遺伝子の頻度を掛け合わせた値であるから、次の計算式が成り立つ。
A×A=0.64
2(A×a)=0.32
a×a=0.04
Aとaを求めると次のようになる。
A=0.8
a=0.2
一般的には、遺伝子頻度はp、qといった値として参考書などには掲載されている。遺伝子型の頻度は、pとqの値によって決定する。
ハーディ・ワインベルグの法則
以下の条件が揃った時には遺伝子頻度が変化しない。しかし、実際にはそのような個体群は存在しないため、遺伝子頻度が変化し、進化が生じる。
- 集団内の個体数がきわめて大きい。
- 集団への個体の移入・移出が起こらない。
- 集団内で個体が自由に交雑できる。
- 集団内では突然変異が起こらない。
- 個体間で生存力や繁殖力に差がなく、自然選択が働かない。
ハーディ・ワインベルグの法則の証明
A遺伝子頻度をp、aの遺伝子頻度をqとすると、次のような表が成り立つ。ちなみに、p+q=1である(pとqを合わせると100%になるよという意味)。
pA | qa | |
pA | p2AA | pqAa |
qa | pqAa | a2aa |
このグラフを改めて式に書くと次のようになる。
pA × pA + pA × qa + qa × pA + qa × qa = p2AA + 2pqAa + p2aa
左辺をまとめると次のようになる。
(pA + qa)2 = p2AA + 2pqAa + q2aa
次に子世代の各遺伝子の頻度に注目する。Aの遺伝子の数は次のようになる。
2p2 + 2pq
P2AAにはAが2つ含まれているわけあるから、Aの数はp2A + p2A = 2p2Aとなる。一方、2pqAaにはAが1つしか含まれていないから、2pqのままで良い。丁寧に説明すると下のようになる。
p2AA + 2pqAa + q2aa←これを解体すると…
p2A + p2A + 2pqA + 2pqa +q2a + q2a
つまり、Aの遺伝子の数は2p2 + 2pq、aの遺伝子の数は2q2 + 2pqとなる。
次世代のAの遺伝子頻度(Aの遺伝子の数 / 全体の遺伝子の数)を計算してみると次のようになる。p+q=1であることに注意しよう。
( 2p2 + 2pq ) / (( p2+2pq+q2)×2 )
= 2p(p+q) / 2(p+q)(p+q)
= p / (p+q)
= p
※p + q = 1である。
つまり、次世代のAの遺伝子頻度も「p」のままである。ちなみに、分母を「( p2+2pq+q2)×2」としているのは、Aとaの数を正確に計算するためである。Aの数の総数は( 2p2 + 2pq )であるが、同様にaの数の総数は( 2q2 + 2pq )である。つまり、Aとaの数の総数は ( p2+2pq+q2)×2である。
同様にaの次世代の遺伝子頻度を計算してみると、同様に次のようになる。p+q=1であることに注意しよう。
(2q2 + 2pq)/ ((p2+2pq+q2) × 2) = 2q / 2=q
よって、次世代もaの遺伝子頻度はqとなる。つまり、次世代になってもAとaの遺伝子頻度は変わらない、これがハーディ・ワインベルグの発見である。
最後の計算
(2q2 + 2pq)/(p2+2pq+q2) × 2= 2q / 2=q
はどうやって解きましたか?
記事の方も加筆しておきましたが、一応書いておきますね。
( 2q2 + 2pq ) / (( p2+2pq+q2)×2 )
= 2q(p+q) / 2(p+q)(p+q)
= q / (p+q)
= q
※p + q = 1です。