抗生物質とは
抗生物質とは細菌などの微生物の発育や機能を妨害する物質の総称です。具体的には、ペニシリンやストレプトマイシンなどの物質があります。
これらの物質の特徴は、細菌の発育や機能を妨害するのであり、ヒトの細胞には無害です。なぜ無害なのかはその仕組みを知れば理解することができます。
抗生物質の仕組み
抗生物質が効く仕組みは主に4つに分けることができます。
- 細菌の細胞壁合成を阻害する。
- 細胞膜機能を阻害する。
- DNA複製を阻害する。
- リボソームの機能を阻害する。
1つ1つ見ていきましょう。
1. 細菌の細胞壁合成を阻害する
細菌はペプチドグリカンを主成分とした細胞壁を持っています。ヒトの細胞は細胞壁を持っていません。そのため、この細胞壁合成を阻害すれば、ピンポイントに細胞の増殖を抑えることができます。
これは、ぺニシリンやセフェム系と呼ばれる抗生物質が持つ作用です。しかし、1つ難点としては、細胞壁をもたない細菌(マイコプラズマなど)には効果がないということです。
2. 細菌の細胞膜機能を阻害する
細胞膜は様々な物質を通過させる役割を持っています。細菌が独自に持っている細胞膜上のリポ多糖に作用することにより、物質の出し入れを阻害して細菌を殺すことができます。
コリスチンやポリミキシンBと呼ばれる抗生物質が持つ作用です。
3. DNA複製を阻害する
細菌のDNA複製に必要な酵素を阻害して、増殖することができなくします。ニューキノロン系と呼ばれる抗生物質が持つ作用です。
4. リボソームの機能を阻害する
ヒト持つリボソームと、細菌が持つリボソームの種類は異なっており、細菌のリボソームの働きを阻害します。これによりタンパク質が合成できなくなり、細菌は死に至ります。
ストレプトマイシンといった抗生物質が持つ作用です。
細菌特有の構造に作用するのがPOINT
抗生物質は、ヒトの細胞にとって無毒であるということが「魔法」とも呼ばれる理由です。つまり抗生物質は、細菌が特有に持つ構造にピンポイントで作用する物質ということですね。