NADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)とは
簡単にいうと、電子と水素の運び屋さんである。「還元型」と「酸化型」があり、電子や水素を運ぶ役割を持つ。酸化型NADP+では電子を受け取りやすく、還元型NADPHでは電子を放出しやすい。式にすると次のようになる。
NADP+ + H+ + 2e− → NADPH
また、NADPHは補酵素とも呼ばれている。補酵素とは、酵素の活性を発現させる非タンパク質性の低分子の有機化合物であり、様々な種類がある。NADPHは脱水素酵素(物質から水素を引き抜く酵素)が働く手助けとして、水素と電子を受け取っている。
補酵素は、「酵素」と名付けられているが、酵素と比べて非常に単純な構造をしている。下画像はアミラーゼ(酵素)であるが、補酵素とは比べものにならないほど分子数も非常に大きい。
NADPHは肝臓での解糖系にも関わるが、最も有名なのは葉緑体での光合成に関わる働きである。
NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とは
基本的な役割についてはNADPHと同じであるが、働く場所が異なる。NADHは主に好気呼吸での中心的な役割を担い、主にミトコンドリアでよく見られる。解糖系(細胞質気質)およびクエン酸回路(ミトコンドリア)での、糖あるいは脂肪酸の酸化によって、還元物質NADHが得られる。
NADP+とNAD+の構造的違い
名称では「P」が付いているかいないかであるが、構造においてもP(リン酸)が付いているかいないかだけの違いである。下画像は側鎖Rを省略しないで記したNADP+とNAD+の違いである。
NADPHとNADHの役割の違い
NADPHとNADHはともに電子・水素の運び手(脱水素酵素の補酵素)であることには変わりはない。しかし、前述したとおり、使用される場所が異なる。NADPHは葉緑体で使用され、NADHはミトコンドリアで使用される。