統合失調症とは
統合失調症は妄想や幻覚の症状がみられる精神疾患である。「誰かに襲われている」「狙われている」といった被害妄想が多くみられ、傍からみると奇怪な行動をしていることが多い。
診断基準として次の5つがあげられる。
- 妄想
- 幻覚・幻聴-患者の思考をそのまま説明する内容であったり、二つ以上の声同士で会話している幻聴を聞くことが多い。
- つながりのない会話
- まとまりのない行動・話し
- 感情、発想、会話が乏しくなる、意欲がなくなる。
1~4は陽性症状と呼ばれ、抗精神病薬で抑えることが可能である。5は陰性症状と呼ばれる。1~5の症状が6か月以上みられる場合は、統合失調症の可能性が極めて高い。
統合失調症(精神分裂病)の歴史
統合失調症は以前は2002年までは「精神分裂病」と呼ばれており、言葉の印象から、「人格が分裂する」、つまり、多重人格などと誤解されることがあった。しかし、「分裂」との言葉には、人格の分裂は意味されておらず、全くの誤解である。
「精神分裂病」に繋がる症例は19Cの後半から公表されはじめた。1852年フランスのB.A.モレルが「早期痴呆」、1874年土井宇津野K.L.カールバウムが「緊張病」、1871年にE.ヘッカーが「破瓜病」との概念を発表し、1899年にE.ヘッカーがそれらを総称して「早発性痴呆」と呼んだ。
それらの精神症状は、精神機能の分裂によるものであるとE.ブロイラーらは考え、「精神分裂病」との新しい名称を作った。
精神分裂病の治療は、当初はインスリンショックや、脳外科手術を行う「ロボトミー」(下画像)に依存しており、極端な治療が行われていた。
しかし、1952年のクロルプロマジン(抗精神病薬)が開発され以後、治療方法が大きく変化した。その後は、抗精神病薬の限界も認識されはじめ、心理社会的な治療によって社会復帰を目指す医学が発達しつつある。
再発率・自殺率が非常に高い
統合失調症の初回発症者の95%は1年以内に社会復帰が可能なまでに回復する。しかし、2年以内には40~70%が再発することがわかっている。
発症者の50%は自殺を試み、その後20年間の間に10%は自殺に成功する。日本においては、現在統合失調症の患者は100万人いると考えられているから、50%の50万人は自殺を試みているということは、深刻な問題である。
20年間の間に、30%は社会復帰を果たし、50%は投薬治療を続けながらであれば社会復帰ができるようになる。
投薬治療を受けている患者であっても、対人関係に深刻な障害が残る場合が多々あるため、社会的なスキルを訓練する必要もある。また、家族との関係において、心無い言葉によって再発することもあり、家族に対する心理的な教育も重要となってくる。
統合失調症体験と芸術
統合失調症はしばしば芸術分野において強烈な個性を残す。患者として有名な人物には、ドイツ・ロマン派詩人のヘルダーリン、ノルウェーの画家のムンクなどがいる。
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