遺伝子組換え
DNAに特定の塩基配列を組み込むことを遺伝子組換えと呼ぶ。インスリン、成長ホルモン、インターフェロン(抗癌剤)などが遺伝子組み換え細菌によって合成されている。遺伝子組み換え技術によってできた生物をトランスジェニック生物と呼ぶ。
糖尿病治療-インスリン-
様々な生物で遺伝子組み換えが行われているが、大腸菌のインスリン合成が有名である。大腸菌からインスリンが合成される前はブタのインスリンを抽出して利用していた。
科学者たちはヒトインスリンに構造が非常に近いブタやウシのインスリンからヒトインスリンを合成する研究を進めた。1979
年、ノボ社がブタインスリンから酵素変換法によるヒトインスリン(半合成)の合成に成功し、1982年に世界初のヒトインスリン製剤「アクトラピッド
ヒューマン」、「モノタードヒューマン」を発売した。ヒトインスリン製剤の登場で、アレルギー反応などの副作用は激減した。しかしこの方法では、将来的な材料不足の懸念は解消されていなかった。1人の糖尿病患者が1年間に使用するインスリンを生産するには、約70頭のブタが必要だったからだ。
豚の膵臓の山http://blog.goo.ne.jp/
大腸菌の遺伝子組み換え
遺伝子組み換え大腸菌は次の手順で作成される。。
- ヒトのインスリンの遺伝子を制限酵素で切り取る。制限酵素はある配列でDNAを切断する酵素である。
- 大腸菌のプラスミド(環状DNA)を同じ種類の制限酵素で切り取る。すると、切り口が同じになる。
- ヒトの遺伝子とプラスミドをDNAリガーゼで結合させる。
- 組み換えプラスミドを大腸菌に戻し、複製、発現させる。
遺伝子組み換え方法http://www.bbc.co.uk/
遺伝子を組み込まれたプラスミドのように、遺伝子の運び手となるものをベクターと呼ぶ。
制限酵素について
制限酵素はある決まった配列部分を切る酵素である。その種類はいくつかあり、それぞれ認識する配列が異なっている。下画像はEcoRIとBam HIと呼ばれる制限酵素の認識部位と切り方である。
制限酵素の認識部位は回文構造になっているのが特徴である。EcoRIの場合、上段を左から読むとGAATTCで、下段を右から読むとGAATTCCになっている。それぞれの塩基配列を覚える必要はないが、回文構造になっていることだけ頭に入れておこう。塩基配列から制限酵素認識部位を推測する問題が過去に出題されたこともある(福井大)。
インスリンは2本のペプチドがジスルフィド結合で結合していますので、上記にある普通の遺伝子組換えではできないと思いますが、どのような工夫をしているのでしょうか。
コメントありがとうございます。そのペプチドは元々は1本で、ある酵素によって切られ、2本となります。