卵の構造は種によって多少異なる
大抵の教科書に掲載されている卵はウニのものである(下画像)。ヒト(哺乳類)の卵もウニと全く同じかとの誤解が生じやすい。しかし、実際は多少の違いがある。
哺乳類の卵(卵細胞+極体)
哺乳類の卵は透明帯と呼ばれる膜に覆われている。透明体はウニの卵では卵黄膜に相当する。透明帯は糖タンパク質によって構成されている。透明帯は二次卵母細胞と第一極体を包み込んでいる。下画像では第一極体、第二極体が見える。
細胞分裂が進んだ胚が子宮に着床する際には胚は透明帯を破り「孵化」する必要がある。
胎生の動物では、胚が受精膜から出てきた段階で孵化と呼ぶが、このままでは成長できず、子宮壁に着床する必要がある。
受精と減数分裂
ヒトの場合、卵巣から排卵された直後は減数分裂の第二分裂中期で停止している。
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卵管で精子と卵子が出会い受精すると、この受精がシグナルとなって減数分裂の再開され、第二極体が放出されて卵の核が出現する。
http://cellbank.nibiohn.go.jp/
精子の核と卵の核は互いに近づくが、融合は起こらず、受精後の最初の細胞分裂を経てようやく核融合する。
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第二極体の利用
第二極体は卵と同じゲノムを持っているため、遺伝子診断などの際にゲノム解析の材料として利用される。
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極体双生児
透明帯内には極体が存在しており、この極体は通常消失するが、ごく稀に消失せずに精子と受精することがある。この場合、正常な成熟卵と受精して誕生した胎児と合わせて、極体双生児と呼ぶ。極体と受精した側の胎児は無心体となる。無心体とは一卵性双胎の一方で心臓・脳・上半身の形成が殆どみられないもののことである。
ヒトの卵形成
ヒトの場合、受精後3週には始原生殖細胞が胚の中に認められる。一方、生殖巣の形成は受精一ヶ月後から始まる。始原生殖細胞は生殖巣(卵巣)内に入り、増殖・分化し、出生時には200万個の一次卵母細胞となる。
成長につれて、一次卵母細胞の大多数が死滅し、思春期には40万個の一次卵母細胞が残る。思春期以後は、その中の一部が減数分裂の次の段階に進み、第二分裂中期その後、年を重ねるにつれて、卵の数が減少していく。