ネアンデルタール人とは
40万年前に出現し、2万数千年前に絶滅したとみられるヒト属の一種である。ヨーロッパ地方に住んでいたと考えられている。
ネアンデルタール人が発見された頃、Homo neanderthalensisと名付けられ、ホモ・サピエンスと異なる種とされていた。しかし、現在はネアンデルタール人をホモ・サピエンスの一亜種であるホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス (Homo sapiens neanderthalensis) と分類されている。
ネアンデルタール人とホモサピエンスの違い
両者の遺伝子差異は他の動物種ならば別種と認定されるレベルである。しかし、2010年のサイエンス誌において、ホモサピエンスのゲノムにネアンデルタール人の遺伝子が数%混入しているとの説が発表された。
「種」の定義は、「交配可能な子孫を残せる」ことである。その境目は極めて微妙であり、交配がなされない期間が長引くほど遺伝的な差が大きくなり、交雑しても子どもに異常が生じて交配不可能な個体が生まれるようになる。しだいに、子ども自体生まれなくなり、そうなると完全に別種となる。「亜種」とは、別種になる過程にある存在であり、交配して交配可能な子どもが生まれるものも、生まれないものもある。
ネアンデルタール人の遺伝子の研究
発見されたあるネアンデルタール人頭蓋骨には、DNA解析できるだけの十分なDNA量が含まれており、解析が行なわれた。
その結果、現生人類とネアンデルタール人のDNA配列は99.7%一致していることが判明した。ちなみに、現生人類同士の配列は99.9%一致している。
解析の結果、現生人類とネアンデルタール人のDNA配列は99.7%が一致していることが判明した。なおチンパンジーとは98.8%一致している。
また、ネアンデルタール人と現生人類のDNAを比較してみると、アフリカ人以外での民族において、ネアンデルタール人の遺伝子と一致する部分が見つかった。これは、ネアンデルタール人の化石が見つかるヨーロッパ地域において、人類とネアンデルタール人が交配したことを示唆している。
「現生人類とネアンデルタール人の間で遺伝子交換があったとするなら、その地はヨーロッパだと考えるのがこれまでの常識だ。数千年の共存期間を証明する、十分な考古学的証拠があるからだ」
さらにアフリカ以外の現生人類とネアンデルタール人のDNAの比較により、アフリカ以外の現生人類にはネアンデルタール人からの遺伝子が1.8~2.6%含まれていることが判明した。
今回の論文によると、ユーラシア系の祖先を持つ人々の全遺伝子の1.8~2.6%がネアンデルタール人の遺伝子に由来しているという。
しかし、ネアンデルタール人と現生人類との遺伝的な差の大きさから、その交配が大規模なものであったとは考えにくく、小規模な交配によるものと考えられている。
「ネアンデルタール人と現生人類は一晩だけの関係だったのかもしれないし、異種間のあいびきを何度も重ねていた可能性もある」