共有結合とは?
2個の非金属元素がそれぞれの価電子を1つずつだして電子対をつくり、電子を共有することによって作られる結合を共有結合と呼びます。
また、この時に共有されている電子対を共有電子対と呼びます。
電子は自転(スピン)しており、方向性があります。逆向きのスピンをしている電子同士が電子対を作る場合は、反発せずに、共有結合を作ることができます。一方、同じ向きのスピンを行う電子同士は反発を生み、電子対を作ることが出来ず、共有結合は形成されません。
分子軌道法とは?
分子軌道法とは共有結合の説明の仕方の1つです。電子対を作ることによって原子軌道が消滅し、新しい電子の分子軌道が作られる、という説明です。この分子軌道は2つの原子を包み込むような軌道を持っています。
高校化学では、各原子軌道の相互作用による共有結合の形成を説明しています(原子軌道法)。
電子対・不対電子・非共有電子対の違いとは?
原子の価電子は2個で対となった時に安定する性質を持っています(逆向きのスピンの時に限る)。このような安定した価電子の対を電子対と呼びます。
一方、電子対を形成していない価電子を不対電子と呼びます。
また、電子対の中でも共有結合に関与しない電子対を非共有電子対と呼びます。
電子式・原子価とは?
電子式は、最外殻電子を点(・)で示した式です。この式を示せば、どれだけの不対電子を持っているかが一目瞭然となります。
また、不対電子の数は、他の原子と共有結合を作れる数と同じです。そのため、この不対電子の数のことを原子価(何個の共有結合を作るかを示す数)と呼びます。
希ガス型の電子配置になっていない分子はある?
例外として、希ガス型になっていなくとも安定した分子も存在します。
- CO:Cの最外殻電子は6個
- NO:Nの最外殻電子は7個
- BF3:Bの最外殻電子は6個
- PCl5:Pの最外殻電子は10個
共有結合の種類
1組の共有結合による結合を単結合と呼び、2組の共有結合を二重結合、3組の共有結合を三重結合と呼びます。
電子式をその都度描くのは大変なため、1つの共有結合を「-」(価標)で示したものを構造式と呼びます。
なぜC(炭素)は2p軌道の空きが2つしかないのに4つのHと結合できるの?
CのL殻の原子配置は、次のようになっています。↑・↓はそれぞれ電子を示しています(↑・↓はスピンの方向性の違い)。電子は8個です。
1s軌道 ↑↓
2s軌道 ↑↓
2p軌道 ↑ ↑
これだけを見ると、電子対(スピンの対)を構成できる電子は残り2つしか残されていません。しかし、実際にはメタンCH4のように4つのHと結合できます。
ポーリングは、2S軌道と2P軌道が混ざりあって、4個の不対電子を持つ電子軌道が作られると考えました。これをsp3混成軌道と呼びます。
1s軌道 ↑↓
sp3混成軌道 ↑ ↑ ↑ ↑
この軌道には4つのHが結合できます。
sp3今世紀道は、それぞれの軌道の反発を少なくするため、正四面体に軌道が伸びます。そのため、CH4の構造も正四面体となっています。
なぜNH3(アンモニア)は正四面体にならないの?
また、窒素原子は以下の電子軌道を持っています。
1s軌道 ↑↓
2s軌道 ↑↓
2p軌道 ↑ ↑ ↑
アンモニアも同様にsp3軌道を形成します。
1s軌道 ↑↓
sp3混成軌道 ↑↓ ↑ ↑ ↑
アンモニアも正四面体を作ろうとしますが、非共有電子対の軌道が、他の共有電子対の軌道と反発するため、正四面体にはなりません。共有電子対は水素の原子核からの引力によって容積が少ないですが、非共有電子対は原子核が含まれないため、より大きく膨らみます。
また、H2Oも同様にsp3混成軌道を形成し、非共有電子対が2つ存在しますから、非共有電子対に押されて、共有結合の結合角はさらに小さくなります。
なぜSF6(六フッ化硫黄)はできるの?
S原子は不対電子が2つであり、電子式で考えると、共有結合を形成できるFは2つです。しかし、実際にはSF6という物質が存在します。
S原子は原子番号が16なので、電子が16あります。電子軌道を記すと次のようになります。
1s ↑↓
2s ↑↓
2p ↑↓ ↑↓ ↑↓
3s ↑↓
3p ↑↓ ↑ ↑
S原子は、内殻の電子数が多いため、相手の原子と十分に重なり合うが難しいです。これが理由で原子半径が大きな原子(硫黄、セレンなど)は、sp3混成軌道を作りづらいと考えられています。S原子にとっては、sp3d2軌道を作った方が、結合できる原子が増え、この時に発生する結合エネルギーによって励起に必要なエネルギーが補填され、より安定した構造を取ることができます。
1s ↑↓
2s ↑↓
2p ↑↓ ↑↓ ↑↓
sp3d2混成軌道 ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
これによって、F↓が6個結合できるようなります。結果、SF6が形成されます。