ワシントン条約とは
1973年に調印され、1975年に発行された国際条約である。正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」。野生動植物が国際取引によって過度に利用されるのを防ぐため、国際協力によって種を保護することを目的としている。批准国は176ヶ国である。
ワシントン条約の内容
絶滅のおそれのある動植物の野生種を、希少性に応じて3ランクに分類し、附属書I、附属書IIおよび附属書IIIに分けて合計約30,000種の動物を取引制限の対象としている。
附属書Ⅰ
絶滅のおそれのある種で、取引により影響をうけるもの。1000種程度がリストアップされており、ゴリラ、ジャイアントパンダ、トラ、アフリカゾウ、コンゴウインコ、シーラカンス、アジアアロワナ、ウミガメ、サボテン科(一部)等がリストアップされている。
商業目的の国際取引禁止学術目的等の取引は可能である。しかし、輸出国、輸入国政府の発行する許可書が必要である。
附属書Ⅱ
現在は、必ずしも絶滅のおそれはないが取引を厳重に規制しなければ絶滅のおれのある種となりうるもの。約 34,000種の動植物がリストアップされており、ホッキョクグマ、カメレオン類、リクガメ類、猛禽類、ピラルク、タツノオトシゴ類、シャコガイ等がリストアップされている。
商業目的の国際取引可能である。しかし、輸出国政府の発行する輸出許可書が必要である。
附属書Ⅲ
締約国が自国内の保護のため、他の締約国の協力を必要とするもの 。国ごとに指定される生物種であり、セイウチ(カナダ)、アジアスイギュウ(ネパール)等がリストアップされている。
商業目的の国際取引可能である。しかし、輸出国政府の発行する輸出許可書が必要である。
ワシントン条約が制定された経緯
1972年の国連人間環境会議において、「特定の種の野生動植物の輸出、輸入及び輸送に関する条約案を作成し、採択するために、適当な政府又は政府組織の主催による会議を出来るだけ速やかに招集すること」が勧告された。これを受けて、アメリカ合衆国連邦政府および国際自然保護連合 (IUCN) が中心となって条約作成のための準備が進められた。
国内法(種の保存法)との関連性
ワシントン条約は罰則規定がないため、各国内における法整備によって取り締まりが行なわれている。日本国内においては、国際取引が原則として禁止された種の取り引きを規制する「絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律」(種の保存法)が1987年に制定された。
生物多様性条約とワシントン条約の違い
ワシントン条約と混合されやすい条約として、生物多様性条約(1992年採択)というものがある。生物多様性条約は特定の行為や生息地のみを対象とするのではなく、野生生物保護の枠組みを広げ、地球上の生物の多様性を包括的に保全することが重視されている。
条約加盟国は、生物多様性の保全と持続可能な利用を目的とする国家戦略または国家計画を作成・実行する義務を負う。