細胞融合とは
2つの細胞が融合し、1つの細胞になる現象を細胞融合と呼ぶ。基本的に同種の細胞同士だと融合しやすいが、異種間でも融合することもできる。
自然界の細胞融合
もっとも顕著な細胞融合は、受精の際に精子と卵が細胞融合し受精卵となる現象である。
植物細胞の細胞融合
植物細胞は細胞壁があるので、そのままでは細胞融合できない。そのためまずはセルラーゼで細胞壁を分解し、細胞膜のみの状態とする。この細胞をプロトプラストと呼ぶ。
さらにポリエチレングリコールで処理すると、何故か細胞が融合する。この理由ははっきりとは解明されていないが、ポリエチレングリコールによって、水分子が奪われ、脂質二重層の疎水基の相互作用が不安定になるためと考えられている。結果、核融合が起こり、共通の細胞壁が再生され、2つの細胞の遺伝子を持った細胞ができる。
動物細胞の細胞融合
動物細胞はポリエチレングリコールで処理する方法と、センダイウィルスに感染させる方法がある。このウィルスに感染すると、細胞が融合されてしまう。このウィルスは、1957年に岡田善雄によって発見された(東北大なので仙台ウィルス)。
細胞融合の応用-モノクローナル抗体-
普通、体液中には様々な抗体が混在しているため、一種類の抗体を多量に取り出すことは難しい。そこで、ある抗体を産生するB細胞と、細胞増殖能力が強い腫瘍細胞を細胞融合させる(この雑種細胞をハイブリドーマと呼ぶ)。すると、ある抗体を産生する増殖能力が強い細胞を作り出して増殖させ、単一の抗体を多量に産生することができる。このように、単一の抗体細胞のクローンによって得られた単一の抗体をモノクローナル抗体と呼ぶ。
モノクローナル抗体の応用
抗体は基質特異性を持っており、ある特定のものにしか結合しない。そのため、癌細胞特有の物質に結合する抗体を作り出すことによって、癌の早期発見、がんの位置検出、抗がん剤の癌細胞への運搬などに利用することができる。