染色体とは
染色体の定義は、「真核細胞の核内にある、カーミンなどの塩基性色素でよく染まる構造」(駿台 生物用語集)である。さらに、染色体の項目では、ヒストンがDNAにからみつき、ヌクレオソーム、クロマチン構造を構成している様子が描かれている。
つまり、染色体とは「真核生物が持つクロマチン構造を持った構造体である」と言うことができるだろう。
原核生物は染色体を持っているのか
しかし、駿台生物用語集の同ページにおいて、「原核生物の染色体」との項目で、「原核生物の染色体は、タンパク質と結合していない環状の二本鎖DNAによって構成されている」と記されている。
先ほどの染色体の定義では、「真核細胞の」と書いていたのにも拘わらず、「原核生物の染色体」を説明し始めるのだから、混乱しないはずがない。
原核生物には真核生物のような染色体は存在しないが、核様体が存在する。核様体とは、原核生物においてDNAが折りたたまれた構造物である。中にはヒストン様タンパク質を持ってヌクレオソームのような構造を作る原核生物も存在する。下画像左は原核生物、右は真核生物のヌクレオソームである。
核様体が、「原核生物の染色体」と表現される場合が参考書や問題集によってはある。また、DNAそのものをことを染色体と呼んでいる場合もある(ワトソンの遺伝子の分子生物学 第5版日本語訳)。
まとめ:核様体=染色体とも言える
ここまでのことをまとめると、原核細胞においてもDNAは折りたたまれていることもある。これを核様体と呼び、いわば「原核生物の染色体」であるとも言える。しかし、構造としては核様体よりも真核生物の染色体の方が遥かに複雑である。
最も困るのが、「原核生物は染色体を持っていますか?」との質問であるが、「(広義においては)持っている」と答えるのが妥当だろう。問題集等でも「持っている」が定番の答えのようである。