静止電位が起こる仕組み

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静止電位とは?

神経細胞(ニューロン)が活動していないときの膜電位を静止電位と呼ぶ。膜電位とは、膜の極近傍の電荷の偏りによって生じる電位のことであり、神経細胞の静止時には-70mVに保たれている。

膜を介して電位が生じる仕組み

静止電位はある特定の物質のみを透過できる膜によって起こる。。例えば、ある容器の真ん中にカリウムイオンだけを通せる膜(しきり)を作ったとしよう。左を容器1、右を容器2とする。

①同じ濃度の塩溶液を入れてみる。

あるカリウム塩(K+、A-)の溶液を容器1,容器2どちらにも同じ濃度で入れてみる。K+は左右へ自由に行き来できるが、濃度差がないのでK+の偏りは生じない。

②異なる濃度の塩溶液を入れてみる。

あるカリウム塩(K+、A-)の溶液を容器1,容器2に入れる。その際、容器1へは容器2の10倍の濃度の溶液を入れる。すると何が起こるだろう。入れた直後は電位差は0である。しかし、容器1・容器2の間に濃度勾配があるために、濃度の高い方から低い方へとK+が移動する。もちろんA-は移動できない。

正の電荷を持つK+が容器1から容器2へ移動し、負の電荷を持つA-は移動できないため、容器1で負の電荷を持つA-が多く存在することになる。その結果、電気的なアンバランスが生じ、膜を境に容器1側では電気的に負の状態になる。また、容器2側では電気的に正の状態になる。

膜を境にした電気的アンバランスは、お互いに引き合う力を持っている。K+の一部は電気的に負である容器1に引きつけられ、容器1に戻る。濃度勾配による容器1から容器2へのK+の移動と、電気的な力による容器2から容器1へのK+の移動が調度釣り合った時を、平衡電位と呼ぶ。細胞においては、これが静止電位である。

静止電位が起こる仕組み

細胞膜を境にして、細胞内ではK+、細胞外ではNa+の濃度が高くなっている。これは、ナトリウム・カリウムポンプがATPを使ってそれぞれのイオンを輸送しているためである。

K+漏洩チャネルによるK+の移動

細胞膜には様々なチャネルがあるが、静止時に開いているのはK+漏洩チャネルである。ここからは濃度勾配に従って、K+が細胞外へ流出する。正の電荷を持つ粒子が細胞外へ移動するため、細胞内は電気的に負になる。

濃度勾配と電気的引力によるK+の移動

また、電気的なアンバランスにより、K+が細胞内に引き寄せられる移動も起こる。このK+の濃度勾配によって拡散しようとする力と、電気的に引き寄せられる力が釣り合った時の電位を静止電位と呼ぶ。

-70mVとは?

静止電位は-70mVである。これは細胞外へ基準電極を置き、細胞内に電極を指したときに得られる値である。基準電極は細胞膜よりも離れた細胞外であり、そこを0mVとしている。細胞膜近傍の外側に基準電極を置くと、基準電極の電位の変化(細胞膜外側は+である)が生じ、グラフが変形してしまう。

 

静止電位によって生じる正・負はあくまで細胞膜近傍であることも頭に入れておかなければならない。細胞膜近傍以外では、イオンの差が殆ど生じること無く正負の電荷は釣り合っている。正負の電荷に偏りが生じるのは、細胞膜の極近傍のみである。

ネルンストの式

静止電位-70mVという値は、実際に測定して求められたものであるが、イオン濃度がわかれば計算によって導くことができる。この式はネルンストの式と呼ばれるものである。

http://csls-db.c.u-tokyo.ac.jp/

R、T(室温で20℃とする=293K)、F、zは定数なので、RT/zFについては一定の値となる。

RT/zF = 26.7

ln は e を底とする対数(自然対数)のことである。ln x=logx である。また、常用対数から自然対数への変換は 2.303 倍すれば得ることができる。なので次の式となる。

2.303×26.7×log [K+]1/[K+]2 = 58 log [K+]1/[K+]2

[K+]1、[K+]2には膜に隔てられた2つの異なる溶液の濃度を代入する。細胞膜を介したK+の濃度は下画像の通りである。

http://csls-db.c.u-tokyo.ac.jp/

細胞内を130mM、細胞外を5mMとして、計算式に当てはめてみると、-80mVとなる。この値が実測値-70mVと異なるのは、静止電位はK+のみで決定するわけではないからである。Na+やCl-などのイオンの影響を加味して計算する式(ゴールドマンの式)を用いると、-70mVの数値を得ることができる。

この式で導入されているPという係数は、それぞれのイオンに対する透過係数である。透過がなければ0であり、透過しやすければ値が上昇する。

 

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