時間と生成物量の関係を表すグラフ
ある量の基質に酵素を加えて、時間ごとに生成物の量を調べると次のようなグラフになる(下画像緑線)。
グラフがある点か水平になるのは、基質が全て消費されてしまったためである。たとえば、酵素濃度を多くして同様(基質の濃度は同じ)の実験を行うと、基質が消費されるまでの時間が半分になる(画像紫線)。しかし、最終的な生成物の量は変化しない。
基質濃度と反応速度の関係を表すグラフ
基質濃度を増加させた際の反応速度の変化を示したのが次のグラフである。反応速度は酵素基質複合体の量によって決まる。基質が多ければ多いほど、酵素と基質が合体して酵素基質複合体を作ることができるため、反応速度は速くなる。グラフがある点から水平になっているのは、全ての酵素が酵素基質複合体を形成しているためである(それ以上反応速度は上昇しない)。
酵素濃度を高くすると、酵素基質複合体の量が多くなるから反応速度は高くなる(下画像赤線)。また、酵素の少なくすると、反応速度も小さくなる(下画像青線)。
競争的阻害剤を加えた際の反応速度を示すグラフ
基質と類似した物質を加えると、酵素が誤って類似物質と結合し、全体の反応速度が低下することがわかっている。このような阻害を競争的阻害と呼ぶ。類似物質はくっついたりとれたりを繰り返している。
基質濃度が低い場合は、阻害物質の影響が大きいため反応速度が低下するが(下画像赤線)、基質濃度が十分高いと類似物質と酵素が出会う機会が空くなりなり、競争的阻害が起こりづらくなる。その結果、反応速度が阻害物質なしの時と同じになる。
非競争的阻害剤と反応速度のグラフ
阻害剤の中には、非競争的阻害剤と呼ばれるものも存在する。この阻害剤は酵素の活性部位以外の部位に結合し、酵素反応を阻害することができる。
基質と結合部位が競合しないので、阻害物質と酵素の濃度が一定の場合、阻害物質が一定の確率で酵素に結合する。そのため、基質濃度を高くしても阻害を受ける酵素の量に変化はなく、阻害の程度に影響が殆ど表われない。下画像では、赤線が競争的阻害、青線が非競争的阻害を示している。競争的阻害は基質濃度が上がれば反応速度は通常時まで回復するが、非競争的阻害は基質濃度が上昇しても反応速度は回復しない。
競争阻害剤とは違い、基質濃度を高めても酵素全体の能力は変わらない。反応速度論としては、Kmは変わらず、Vmaxが小さくなる。
グラフは次のようになる。
アロステリック酵素
アロステリック部位にアロステリック因子が結合した酵素をアロステリック酵素と呼ぶ。アロステリック因子が結合すると活性部位の立体構造が変化して活性が阻害または促進される。多くのアロステリック酵素では、基質濃度に対する反応速度の変化を示す曲線がS字になっている。これは、実際には1つの酵素にはアロステリック部位が複数あり、1つが結合すると、次々に他の部位の結合が促進されるためである。
アロステリック酵素と非競争阻害の違い
実際のところ、何が違うのかはよくわからなく、多くの参考書にあたってみたが明確な違いは明記していなかった。非競争的阻害のことを、アロステリック効果と書いていた参考書もあった。実際、非競争阻害剤が結合している部位も、実はアロステリック部位なのである。
全ての非競合阻害剤は酵素のアロステリック部位(すなわち活性部位以外の場所)に結合する
また、アロステリック酵素の反応曲線は必ずしもS字ではないともいう。また、非競争的阻害は必ずしも、基質濃度によらず一定とも限らない。実際のところ、「その酵素に依る」としか言いようがないのだろう。
酵素の活性部位に、基質の有無によらずに結合し、酵素活性を阻害する機構。基質の濃度が高くなると、阻害できる割合が減少する。
ただ、高校生物で押さえておきたいのは、「S字曲線が出たらアロステリック効果」、「反応速度が減ったら非競争阻害」ということである。高校レベルではこれで十分。
合わせて質問されるS字曲線のグラフ
同様のS字曲線にヘモグロビンの酸素解離曲線がある(よく試験で聞かれる)。ヘモグロビンは、4つ酸素と結合できる箇所を持っている。1つが結合すると、他の部位がより結合しやすくなるという性質を持っており、結合率が一気に上昇する。すなわち、曲線がS字になる。