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カウンセラーの態度-治療者としての3条件(純粋性、無条件の積極的関心、共感的理解)-

カウンセラーの3条件

ロジャーズはカウンセラーの3条件として、純粋性、無条件の積極的関心、共感的理解をあげている。ロジャーズはこれら3つについて次のように述べている。

3つのセラピィ的な諸条件が記述される順序は、それらが論理的に絡み合わされているので、ある意味重要な意味を持つのである。

セラピストが、ある高いレベルの正確な共感に達成するちということは、重要である。しかしながら、別の人の、瞬間、瞬間の「在り方」に深く敏感であるということは、われわれが第一にこの他人を受け入れ、そしてある程度まで尊ぶということを、セラピストとしてのわれわれに要求するのである。従って、ある満足のゆくレベルの共感は、かなりの程度の無条件の肯定的配慮もまた、あるのでなければ存在しえないのである。

しかし、これらの諸条件がいずれも、それらが本当のものでなければ、その関係において意味のあるものとはとてもなりえないのである。従って、そのそのセラピストが、これらの点、及び他の点において、セラピィ的な出会いの中で統合されており、かつ純粋であるのでなければ、他の条件は満足のゆくような程度まで存在することが殆どできないであろう。

したがって、純粋さ、もしくは一致という、この要素が3つの条件のうちで一番基本的であると思われる。

ロジャーズは、カウンセラーの純粋性は、正確な共感的理解、無条件の積極的関心を根底から支える必要条件であるとし、最重要項目としている。

純粋性とは

ロジャーズが語る純粋性とは何であろうか。純粋性が示す意味は次の言葉で説明される。

クライアントは、カウンセラーが、役割を演じているのではなく、あるがままの自分である時に、カウンセラーを信用できると感じる
(國分康孝編カウンセリング辞典より)

簡単に言うならば、専門家や個人としてではなく、「ありのままの自分として居ること」と言えるだろう。ロジャーズは次のように語る。

その瞬間においてオープンに自己自身であることのできる人、しかもこれだけ深い水準において彼のありのままであることができる人、そういう人が効果的なセラピストである

セラピストが関係の中で自分自身であり、専門家としての仮面や個人としての仮面をつけていなければいないほどクライアントが建設的な変化成長を遂げる可能性も増す。セラピストがその瞬間に内部でうごめいている感情や態度のままに居るということである。「透明」という言葉がこの状態の雰囲気を伝えている。すなわち、セラピストは自分自身をクライアントに対して透明にする。したがってクライアントは関係の中で、セラピストがどう居るかを見透すことができる。

まるでクライアントの内面を映し出すかのようなセラピストの透明性があって初めて、クライアントはそれまでしっかりと向き合うことのできなかった感じ・感情に触れる体験を持つことができる。

無条件の積極的関心とは

無条件の積極的関心についてロジャーズは次のように述べる。

セラピストが、自分のクライアントの体験の1つ1つをそのクライアントの1つ1つの姿として温かく体験している。それは受容について何も条件がないこと。すなわち、「私があなたを好きなのは、あなたがかくかくしかじかだからこそだ」という感情がないことである。それは一個の人間であることを讃えることである。それは選択的評価的態度、すなわち「あなたはこういう点は悪いが、こういう点は良い」の対極にある。

ただ「受け入れる」ということに徹した態度であり、肯定も否定もしない、評価もしない姿勢だと言えよう。それは、クライアントを一人の価値ある人間として丸ごと受け入れることである。

共感的理解とは

もちろん、無条件の積極的関心とはクライアントの言うことをただ鵜呑みにしてハイハイ聞いていくことではない。あくまでカウンセラーは主体を持った人間としてクライアントの前に立ち、クライアントの言うことを受け入れ、自分の内部的照合枠に照合していくことが求められる。これにより、カウンセラーの内部においてクライアントと同型的対決が生じ、それが共感を可能にさせる。

例えば、「死にたい」と訴えるクライアントにはどのように向き合ったら良いであろうか。河合隼雄は次のように述べている。

たとえば、クライアントが自殺したいという場合、カウンセラーはその感情を受け入れようとする。しかし、カウンセラーの心の一部には自殺を否定したい気持ちも働くだろう。その結果、クライアントの自殺に対して、それの効智慧と否定の感情の対決を自分の内面で対決することになる。

これにより、カウンセラーはクライアントの矛盾した思いに深い共感的理解を示せるようになると考えられる。ロジャーズも、この死をも受け入れようとする共感的理解がクライアントのパーソナリティの変化に作用することを述べている。

セラピストが死も選択肢の1つなのだということをみずから進んで受け入れようとしている時にこそ、生が選択される。

ロジャーズは、これを「カウンセラーの最深部にうごめいている葛藤」と呼んでおり、この葛藤こそがクライアントの内面に実際に存在しているものであると言えよう。

まとめ

カウンセラーとしての3条件とは、純粋性、無条件の積極的関心、共感的理解の3つである。特に純粋性が重要であり、他2つの要素の土台となっているものと言える。

カウンセリングとはクライアントが「ありのままの自分」となれるよう援助することである。この援助は、カウンセラー自身が純粋性(深い自己一致)があって成り立つことを心に留めておこう。クライアントに求めるものは、何より自分自身に求めるものなのである。

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