酸化剤・還元剤とは?
相手から電子を奪う働きを持つ(相手を酸化させる)物質を酸化剤と呼びます。一方、電子を与える傾向が強い(相手を還元させる)物質を還元剤と呼びます。
半反応式とは?
酸化還元反応の反応式は複雑なので、いきなり書くことは難しいです。そのため、酸化剤・還元剤それぞれのイオンの動きを示した反応式(半反応式)を書き、それを足して酸化還元反応の反応式を作ります。
代表的な酸化剤の例として、オゾンO3、過マンガン酸カリウムKMnO4、二クロム酸カリウム(酸性)K2Cr2O7、濃硝酸HNO3、希硝酸HNO3、熱濃硫酸H2SO4、塩素Cl2、過酸化水素H2O2、二硫化硫黄SO2があります。
代表的な還元剤として、ナトリウムNa、水素H2、硫化水素H2S、シュウ酸(COOH)2、二酸化硫黄SO2、塩化スズ(Ⅱ)SnCl2、硫酸鉄(Ⅱ)FeSO4、ヨウ化カリウムKI、過酸化水素H2O2、チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3があります。
H2O2とSO2はなぜ酸化剤でもあり還元剤でもあるの?
H2O2とSO2は相手によって酸化剤として働くか、還元剤として働くかが変わります。そのため、どちらにも記載されています。
最高酸化数・最低酸化数とは?
各原子に存在する酸化数には幅があります。最高8段階で、その原子の持つ価電子との関連性があります。
例えば、S原子はH2SO4では酸化数+6です。これは、S原子の電子を全て他の原子にあげてしまった状態です。一方、H2Sでは酸化数-2となります。これはH原子から電子を2個受け取った状態です。
各原子で最高酸化数を持つ化合物では、酸化数は増加しようがないため、還元剤にしかなりません。また、中間の酸化数を持つ化合物では酸化剤にも還元剤にもなり得ます。
H2O2のO原子は中間の酸化数となっています。
O2 | 0 |
H2O2 | -1 |
H2O | -2 |
また、SO2も酸化剤・還元剤になり得ますが、中間の酸化数です。
H2SO4 | +6 |
SO2 | +4 |
S | 0 |
H2S | -2 |
半反応式の作り方
半反応式を作るためには、反応後に何になるかは覚えておく必要があります。例えば、KMnO4は酸性下では、電離したMnO4 –からMn2+になります。
酸化数に変化に応じて、酸化数の差だけ電子を加える。今回は酸化数+7から+2への変化のため以下のような式になります。。
両辺の電荷を合わせるためにH+を加える(溶液が塩基性ならばOH–を加える)。
酸化剤の場合、水を生成することが多いため、原子数が合うようにH2Oを加える。
還元剤でも同様の方法で半反応式を作ることができる。
酸化還元反応式
酸化剤の半反応式と還元剤の半反応式を組み合わせることによって、酸化還元反応式を作ることができます。
酸化剤KMnO4と還元剤H2C2O4(シュウ酸)の半反応式は次の通りです。
MnO4 – + 5e– + 8H+ → Mn2+ 4H2O
H2C2O4 → 2CO2 + 2H+ + 2e–
それぞれ、e-の数を等しくして消去すると次のようになります。
両辺に2K+と3SO4 2-を加えると次の化学反応式となります。
代表的な酸化剤・還元剤
代表的な酸化剤・還元剤として、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、ハロゲン単体、過酸化水素、硝酸、熱濃硫酸、硫化水素があります。
過マンガン酸カリウムKMnO4
黒紫色の結晶で、水溶液はK+の赤紫色と、MnO4 –に電離します。MnO4 –は酸性下では強力な酸化作用を持ちます。高校化学で扱う酸化剤の中では、最も強い物質です。
MnO4 – + 5e– + 8H+ → Mn2+ 4H2O
MnO4 –は、他の物質から酸素を奪い、Mn2+となります。中性・塩基性下では、酸化数が+4の酸化マンガンMnO2(黒色沈殿)までにしかなりません。
MnO2を含む溶液に、希硫酸を加えるとMn2+まで変化し、酸化作用が復活します。
二クロム酸カリウムK2Cr2O7
二クロム酸カリウムは赤橙色の結晶です。水に溶けると、Cr2O7 2-(赤橙色)のイオンを生じます。酸性下では他の物質から電子を奪い、酸化数+6から+3まで変化します。
ハロゲン単体
ハロゲン単体は、他の物質から電子を奪ってハロゲン化合物となりやすい傾向を持ちます。酸化力は、F2 > Cl2 > Br2 > I2の順になります。
過酸化水素H2O2
過酸化水素のO原子は酸化数は-1ですが、不安定な状態にあり、O原子にとって安定な酸化数-2になろうとする傾向があります。酸性下では酸化力が強いですが、中性・塩基性下でも酸化力を示します。
酸性:H2O2 + 2H+ + 2e– → 2H2O
中・塩基性:H2O2 + 2e– → 2OH–
一方、反応する相手によっては還元剤として働きます。
硝酸HNO3
N原子の酸化数は+5で、N原子が取れる最高の酸化数を持ちます。そのため、他の物質から電子を奪って、低い酸化数へと変化します。濃硝酸と希硝酸とでは反応が異なります。
濃硝酸:HNO3 + e– + H+ → NO2 + H2O
希硝酸:HNO3 + 3e– + 3H+ → NO + 2H2O
濃硝酸と希硝酸はどちらが酸化力が強いの?
電子を受け取れる数は1分子あたりでは希硝酸の方が多いですが、濃硝酸では濃度が高い(分子の数が多い)ため、結果的に反応速度は濃硝酸の方が高いため、濃硝酸の方が酸化力が強いと言えます。
熱濃硫酸H2SO4
濃硫酸は比較的安定した化合物ですが、熱すると化合物が反応しやすくなります。
硫化水素H2S
硫化水素の酸化数は-2で、S原子の最低酸化数です。そのため、電子を放出しやすく、強い還元作用を持っています。