酸化還元滴定とは?
酸化剤(または還元剤)の標準溶液を用いて、濃度不明の溶液の濃度を滴定によって決定する方法を酸化還元滴定と呼びます。方法は基本的に中和滴定と変わりません。
過マンガン酸塩滴定とは?
KMnO4は水に溶かすと濃い赤紫色となります。
硫酸を加えて酸性にした還元剤の水溶液にKMnO4を滴定していくと、MnO4–は還元剤と反応してMn2+となり、無色となっていきます。
中性・塩基性下では、酸化数が+4の酸化マンガンMnO2(黒色沈殿)までにしかなりません。
MnO4–がなくなると、水溶液全体が淡い赤色を示すため、酸化還元反応が終わったことがわかります。この点を、当量点と呼びます。
KMnO4は酸化剤であると同時に、指示薬の役割を持っていることがわかります。
過マンガン酸カリウム水溶液の濃度も滴定によって求める
過マンガン酸カリウム水溶液は、正確な濃度の溶液を作りづらいため、シュウ酸(標準溶液)などで濃度を決定し、標準溶液とします。このように作られた過マンガン酸カリウムの標準溶液を2次標準溶液と呼びます。
過マンガン酸カリウム水溶液の正確な濃度の水溶液が作ることができない理由として、①空気中の物質と接触し還元され、結晶の純度が低くMnO2が含まれていること、②水溶液に含まれる有機物との反応によって濃度が変化すること、③光で分解しやすいこと、などがあります。③の理由により、KMnO4は褐色ビンに保存し、褐色ビュレットを使用します。
なぜシュウ酸を70℃に温めるの?
実験書には、シュウ酸と過マンガン酸カリウムの酸化還元滴定では、シュウ酸を70℃前後に温めておくことが記されています。これは、常温ではシュウ酸と過マンガン酸カリウムは反応しづらいためです。一旦、反応が始まるとMn2+が触媒となるため、温度が下がっても反応はスムーズに進みます。
また、80℃を超えるとKMnO4が熱分解するため、80℃を超えないように注意することが大切です。
なぜ溶液を酸性にするのに硫酸を使用するの?
HClを使用すると、HClが還元剤として働き、過マンガン酸カリウムと反応してしまいます。また、HNO3を使用すると、NO3–が酸化剤として働き、シュウ酸を酸化してしまいます。
一方、硫酸は酸化剤・還元剤としても働かない安定した物質です(熱すると酸化剤となります)。ただ溶液を酸性とするためだけならば、硫酸を使用することが都合が良いのです。
ヨウ素滴定とは?
ヨウ素I2の酸化力を利用して、濃度不明の還元剤の濃度を測定する方法を、ヨウ素酸化滴定と呼びます。ヨウ素はそこまで酸化力の高くない酸化剤です。
ヨウ素I2の一定量を計り、ヨウ化カリウムKI水溶液に溶かして、ヨウ素の標準溶液を作ります。
I2は無極性分子のため、水には殆ど溶けませんが、ヨウ化カリウム水溶液ではI3–になってよく溶けます。
I2 + I– ⇔ I3–
ヨウ素I2が還元されるとI–となり、褐色が淡くなっていきます。無色になった点が当量点ですが、肉眼で確認することは困難です。そのため、溶液に少量のデンプンを加えると、ヨウ素デンプン反応によって青色の呈色を示し、I2の存在を肉眼で容易に確認することができます。I2がなくなると、青紫色の溶液が無色になります。
デンプンは、当量点間近に加えます。これは、デンプンの一部が分解されて呈色が鈍るためです。
ヨウ素還元滴定とは?
還元剤をとして作用するヨウ化物イオンI–に、濃度不明の酸化剤を反応させると、I2が遊離します。デンプンを加え、チオ硫酸ナトリウム(標準液)で滴定を行い、デンプンの色が消失した点(I2が無くなった点)を調べることで酸化剤の濃度を計算することができます。これをヨウ素還元滴定と呼びます。
例えば、ヨウ化物イオンの水溶液に酸化剤のH2O2を加えると次の酸化還元反応が起こります。
ここに還元剤のチオ硫酸ナトリウムを加えると次の反応が起こります。
チオ硫酸ナトリウムが必要とされた量を計算すると、加えたH2O2の濃度を測定できます。
なぜチオ硫酸ナトリウムを使うの?
チオ硫酸イオンは酸化されやすく、容易にS-S結合を作るため、弱い酸化剤であっても四チオン酸イオンS4O62-になりやすいためです。