種とは何か?
「代々生殖機能がある子孫を作り続けていくことができる集団」を生物学的種と呼ぶ。イノシシとブタは姿形は大きく異なるが、交配によって生じるイノブタは生殖能力を持っているので同種であると言える。ブタの特徴的な形質はは人が品種改良によってイノシシから作り上げたものである。
異種生物間の種間雑種(交雑)
異なる種(しかし近しい種に限る)を掛け合わせることを交雑と呼ぶ。同種同士では交配と呼ぶ。主観雑種は殆どが人工的に作られたものである。また、種間雑種は生殖能力を持たない(稀に持つ個体が生まれてくることもある)。
細胞融合による種間雑種
受精・受粉によって発生が進まない場合でも、細胞融合という技術を用いることによって種間雑種を作ることができる。植物細胞の場合では、細胞壁を取り除いた細胞(プロトプラスト)と、他の種のプロトプラストを融合させて様々な種間雑種を作り上げている。
キメラ
種間雑種は交配によって(異なる種の配偶子が接合して)生まれる生物であるが、キメラは別の個体の細胞が共存している状態である。胚に別の種の胚の一部を移植することによって生み出される。過去にはニワトリとウズラのキメラが作られた。しかし、脊椎動物には免疫系が成熟するにつれ、移植細胞に対して拒絶反応を起こすため、長生きすることはできない。
ウズラの脳の原基(脳胞)を移植されたニワトリは、生後ウズラの脳が機能して、ウズラの鳴き声で鳴く様になり、ウズラの行動様式を示すようになるが、やがてニワトリの免疫系がウズラの脳を「非自己」として拒絶してしまうので、キメラは生き延びる事が出来ない。これがキメラという全体性を欠いた異端の生命体の運命である。生物学的にみた個体の「自己」は免疫系が決めているので、鳴き方など、キメラのの行動様式を支配してきた脳さえも、異物として排除してしまうのである。
ニワトリとウズラの神経管キメラの実験では、ウズラの神経管をニワトリの胚に移植するとき、ウズラの「胸腺」の原基を同時に移植すると、ウズラの組織の排除は起こりにくくなる。即ち、免疫系の「自己」と「非自己」の識別は、「胸腺」によって決定されているのである
免疫の意味論 多田富雄
モザイク
モザイクは同一個体内に、染色体不分離した細胞を有する個体のことを指す。例として、体半分が雌で体半分が雄の雌雄モザイクなどが、クワガタ、チョウなどで確認されている。
ダウン症にもモザイク型があり、体の一部がトリソミーになっている人も存在する。その場合、受精始めからトリソミーの人よりも、比較的軽症の傾向にある。