当初は10万個あると思われていたヒト遺伝子
1980年当初は、ギルバートによって遺伝子数は10万個ほどであろうとの推測が立てられていました。これは、ヒトの遺伝子の平均的な大きさ3×104塩基対とヒトゲノムの大きさ3×109塩基対から概算したもので、10万という数字は切りも良く、論文や教科書に広く引用されるようになりました。
うーん、たぶん10万!
しかし、2003年にヒトゲノムが解読され、ヒト遺伝子の数は3万5千個ほどであるとの報告がなされました。さらに数年後には、ヒト遺伝子の数は2万個~2万4千個ほどしかないと大幅な訂正がなされました。
2018年には米ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブン・サルツバーグ教授らは、ヒト遺伝子の数が現時点で2万1306個になると発表しました。
うーん、2万1306個!
…(めっちゃ正確な数出してきよる)
ちなみにこの2万個1306個という数は生物界では決して多い遺伝子数ではありません。寄生虫であるセンチュウですら約2万個の遺伝子を持っています。マウスは2万2千個、イネやトウモロコシは4万5千個ほどもあります。
- 大腸菌(遺伝子数約4,400個)
- 出芽酵母(遺伝子数約5,800個)
- 線虫(遺伝子数約20,000個)
- キイロショウジョウバエ(遺伝子数約14,700個)
- シロイヌナズナ(遺伝子数約26,500個)
- トウモロコシ(遺伝子数>45,000個)
- イネ(遺伝子数~45,000個)
- マウス(遺伝子数約22,000個程度)
遺伝子の数だけが重要なのではない
当初、人間が2万個ほどしか遺伝子を持っていないと分かった時は、ショックを受けた人が多くいました。人間のような複雑な生物が、センチュウと同じ遺伝子数というのが気に食わなかったようです。
しかし、その後研究により、1つの遺伝子から複数のmRNAを合成できる選択的スプライシングがヒトでは活発に行われていることが判明しました。
また、チンパンジーとの遺伝子の比較により、遺伝子の数(種類)そのものではなく、その遺伝子の発現の仕方の方が重要であることもわかってきました。
遺伝子の数(種類)というハード面だけでなく、それぞれの遺伝子がどのように作用し合い発現が調節されているのかというソフト面を今後は研究していく必要があります。