「生存に有利でも不利でもない中立な変異が殆どである」
ダーウィンが提唱した進化論は突然変異と自然選択に基づくものであり、生存に有利なものが生き残っていく「適者生存」の考えが土台であった。しかし、国立遺伝学研究所の木村資生博士は分子レベルの変化においては、有利も不利もない変化が殆どであると主張した。これが中立説である。
[amazonjs asin=”4004300193″ locale=”JP” title=”生物進化を考える (岩波新書)”]中立説はダーウィンの適者生存の考え方を否定したわけではない。分子レベルの変化においても、やはり生存に有利な変化が残る場合もありえる。しかし、多くの変化はたんぱく質の構造や働きに影響を与えないような微小な変化であり、中立な場合が多い。
好運者生存
そうなると、分子的な中立な変化が残るか残らないかはただ運(偶然)によって決まるものであり、木村博士はこれを「好運者生存」との言葉で説明した。当時は分子的な変化も「適者生存」の原理が働くと信じられていた時代であったから、木村博士の考え方は斬新であり批判の対象となった。しかし、現代においては中立説は進化論の中心理論となっており、木村博士はイギリス王立協会から「ダーウィンメダル」を授与されている。