遺伝暗号の解明
ニーレンバーグはUUUのみのmRNAを合成し、フェニルアラニンのポリペプチドが合成されたことから、UUUがフェニルアラニンを示すコドンであることを解明した。一方、コラーナはさらに実験を発展させ、数種類の塩基が規則正しく繰り返しているRNAを用いてコドンの解読を進めた。
コラーナの実験
実験1
- …ACACACACACACACACACA…
上記の様なmRNAを翻訳させると次のようなポリペプチドができた。
- トレオニン―ヒスチジン―トレオニン―ヒスチジン―トレオニン―ヒスチジン―
コドンとして認識されるのはACAとCACが考えられる。しかし、この段階では、どちらがトレオニン、ヒスチジンかが判断できない。
実験2
- …CAACAACAACAACAA…
さらに上記のようなmRNAを翻訳させると次のようなポリペプチドが3種類できた。
- グルタミン―グルタミン―グルタミン―グルタミン―グルタミン―グルタミン―
- アスパラギン―アスパラギン―アスパラギン―アスパラギン―アスパラギン―
- トレオニン―トレオニン―トレオニン―トレオニン―トレオニン―トレオニン―
コドンとして認識されるのは、3パターン考えられる(どこから翻訳が開始するかによって異なる)。
- CAAの羅列
- AACの羅列
- ACAの羅列
実験1と照らし合わせてみると、実験1・2で共通して出現するコドンがACAであることから、ACAがトレオニンを指定していると推測できる。
その後~ニーレンバーグとレダーによる実験~
コラーナの実験では、結果を比較することによって、コドンが指定するアミノ酸を推測することができる。しかし、この方法は思考による推論であって、決定打に欠けていた。もっとシンプルに、直接的に指定アミノ酸を確定する方法がニーレンバーグとレダーによって確立された。
彼らは、UUUというトリヌクレオチドを作成し、これをリボソーム、放射性標識をつけたアミノ酸を持つtRNAと共に反応させた。すると、フェニルアラニン(放射線標識有り)を持つtRNAがリボソームに結合し、UUUに結合した。
この実験を64通りのコドンに対して行い、遺伝暗号を確定することができた。
ニーレンバーグのグループは、64個のコドンのうち54個を解読し、残りはゴビンド・コラーナ(Gobind Khorana)により解読された。