ちょっとディープな生物の世界

中枢パターン発生器(CPG)とは

中枢パターン発生器(CPG)

バッタをつるして、頭部の触覚(感覚毛)に風を当てると、羽をリズミカルに動かし始める。この運動は、胸部にある打ちあげ筋と、打ち下げ筋が羽を上下に動かすことによって成り立っている。

筋肉の収縮・弛緩を中枢に伝える神経を切断しても、通常と同じ運動が起こることが知られている。

つまり、筋肉の収縮・弛緩の情報によって、筋運動が制御されているのではないことがわかる。実際には、中枢に存在する神経回路によって、リズミカルな収縮・弛緩運動が起こっている。このような神経回路を中枢パターン発生器(CPG)と呼ぶ。

バッタのCPGモデル

バッタのCPGモデルは以下のような構造をしている。Xは3つのニューロンによって構成されている神経回路であり、Yは多数の介在ニューロンによって構成されている。

ピンク色の矢印は興奮性シナプスであり、青色の矢印は抑制性シナプスである。

実際には下のような順序で羽ばたきが生じる。

  1. 風の刺激が感覚毛に与えられると、Xと呼ばれる回路へと伝達される。
  2. XからはYと打ちあげ筋に刺激が与えられる(Yでは情報処理に時間がかかる)。
  3. Xから刺激を受けた打ちあげ筋が収縮し羽が上がる。
  4. 少し遅れて、YからAと打ち下げ筋に刺激が与えられる。AはXに繋がっており、興奮を抑制する。
  5. Xの興奮は収まるが、Yの興奮は一定時間続き、打ち下げ運動がなされる。その後、Yの興奮も治まり、打ち下げ運動が停止される。また、AによるXの抑制も治まる。
  6. 結果、抑制が解除され、風刺激によってXが再度興奮する(以後繰り返し)。

他の生物でのCPG

CPGのような神経回路は他の生物にも存在していることがわかっている。例えば、カイコガの性フェロモンに対する定位運動や、ネコやイヌの歩行、魚類の遊泳などもそれである。

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