ちょっとディープな生物の世界

宇宙人「全ての人間は地球語を話している、言語の違いは方言のようなもの」

宇宙人からみると、全ての言葉は地球語

地球上には現在7000の言語(英語、日本語、スペイン語…)がひしめいていると考えられています。私にとってみれば、それらの言語の文法は大きく異なり、全く異なる言語だと感じざるを得ません。 しかし、もし地球人とは全く異なるコミュニケーション方法を持つ宇宙人がいたとします。宇宙人が地球人の言語を見渡した時に、「7000の方言がある地球後を話している」と感じるだろうと、言語学者ノームチョムスキーは考えています。

全ての言語には共通の機構がある

チョムスキーは「脳に予め言語を生み出す装置が備わっており、普遍文法として存在している」と言います。全く異なる言語でも奥底には共通の記号操作機構があり、言語ができるあがる過程で「少々」の違いが生じ、別々の言語になります。 この考え方には、批判や賛同さまざまな意見がありますが、言語学の大変革的な考え方でした。 [amazonjs asin=”4480098275″ locale=”JP” title=”チョムスキー言語学講義: 言語はいかにして進化したか (ちくま学芸文庫)”]

脳は勝手に言語を習得する

チョムスキーの主張の根拠として、子どもの言語習得の過程があります。 子育てをしていて、意識的に子どもに「言葉」を覚えさせようとする人はいないでしょう。子どもは、大人が話す言葉を聞き、文法を習わずとも言語を身に着けます。 例えば、「泣く(終止形)」と「泣け(命令形)」という言葉を吸収した子どもは、そこから終止形と命令形のルールを抽出し、他の動詞に対しても同様に適応させます(例:立つ→立て)。 もちろん、言語には例外的なものも多くあるので、その都度大人によって修正されなければなりません。しかし、それにしても子どもは大人から言語を習うのではなく、勝手に習得してしまう本能をもっていると言えるでしょう。

言葉をかけなければ言語は習得できない

子どもが言語を習得するためには、実際に使われる言葉を聞くことが重要です。いくら本能として言語獲得能をもっていたとしても、その機構にスイッチを入れるだけの情報量を与えなければ正常に働きません。 一方で、どこの国の赤ん坊でも、その言語に触れる機会が多くありさえすれば、どんな言語でも習得することが可能です。日本人の子どもだからといって、英語を獲得する能力が低いというわけではないのです。 しかし、人間が言語獲得できる時期にはリミットがあり、それを過ぎると「母語」として言語を習得することはできなくなります。

上のグラフはどの年齢で新しい言語を獲得しようとしたか(横軸)と、実際の習得具合(縦軸)を指しています。年齢が高くなればなるほど、習得は難しくなっていきます。 ある人物は31歳まで知的障害だと思われていましたが、実は聴覚障害をもっており、知的には正常だということがわかりました。補聴器をつけた彼に対して、言語教育が熱心に行われましたが、最後まで正確な文法を獲得することはできませんでした。 大人になってから語学を勉強する難しさは、脳のハード面にあるようです。できるだけ小さい頃から英語教育は始めた方が良いということですね。 一方で、闇雲に英語教育を実践するのも危険だとも言われています。ネイティブの英語を話す父、日本語を話す母、との間で育った子どもはどちらの言語も正確に習得することができるでしょう。 しかし、どちらもネイティブの日本語を話す両親が、日本語よりも英語を教えようとすると、どちらの母語も十分に育たず、言語に対して不安定な状態に陥ることもあります。とても難しいところです。

まとめ「人間=地球人」

チョムスキーの議論の面白い点は、巨視的な視点で言語を見れることだと思います。 学生時代など、英語を学ぶときには「違い」について強く意識していました。英語を日本語はここが違う、文法上の違いが思考の違いを生み出す、などです。 しかし、言語習得機構のハード面は人類に共通したものであり、言語的な違いはそこから派生する「方言」のようなものであるとするならば、多言語に対してとても親しみが湧いてきます。 チョムスキーの議論は、あくまでヒトは同一種であることを意識させてくれるように感じます。  

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