ニーレンバーグの実験のおかしな所
普通、私たちが翻訳の過程として学習するのは、翻訳は開始コドンAUGから開始されるということである。実際に様々な翻訳に関する設問においても、この点はブレることはない。しかし、ニーレンバーグの実験では一点不可解なことがある。それは「開始コドンなしに、どうして翻訳することができたのか」ということである。本来ならば、下画像のようにスキャニングによってAUGが認識されてから、翻訳が開始する。
http://altair.sci.hokudai.ac.jp/
ちなみに、ニーレンバーグの実験とは、UUUのみのmRNAを合成しフェニルアラニンのポリペプチドが合成された実験である。このことから、UUUがフェニルアラニンを示すコドンであることを解明した。
人為的影響(アーティファクト)による幸運
彼の実験結果は人為的影響によるものと言えるだろう。人為的影響とは、生体内とは異なる人工的な環境で何らかの影響が生じ、実際とは異なる反応が出ることである。この実験での影響は、「AUGがなくとも翻訳が開始される」というものだった。しかし、UUUがフェニルアラニンというアミノ酸を指定することには何の影響も無かった。ある意味、人為的影響のラッキーと言える実験であった。
教科書などには、このことが書かれていないので、UUUからでも翻訳が開始されるかのような誤解を生じるばかりである。しかし、あくまでの翻訳が開始されたのは単純に人工的環境による影響だったと理解しよう。