自分たちの体で橋を作る
軍隊アリが自分たちの体を使って橋を作り、軒下の蜂の巣を襲撃している様子です。このような光景は良く見られるそうで、ネット上でも多くの動画が上がっています。
中には自らの体でイカダを作るアリも・・・。
どうやって橋を作るの?
軍隊アリの脳は非常に小さく、知性によって橋を建設しているわけではありません。しかし、ただ2つのアルゴリズムを軍隊アリはもっていると言われています。
①背中に乗られたら止まる
背中に他の軍隊アリが乗った時点で、動きが止まります。乗り越えた軍隊アリは、行き止まりとなり、先に進むことができません。そこに、また他の軍隊アリが乗り越えようと背中にのります。これを繰り返すことで橋ができます。
②交通量が少なければ動き始める
あまりにも多くのアリが橋になってしまっては、行軍するのに不効率なため、橋状態を解除するアルゴリズムがあります。それは、単純に「交通量」です。自分の背中を通るアリの量が少ない場合、アリは停止状態を解除し、動き始め、異なる行軍ルートを探し始めます。
橋になって死ぬアリもいる
橋になることは相当な負担ですから(しかもそれが長時間になった場合はなおさら)、そこで息絶えるアリもいます。しかし、アリのような真社会性の動物では、このような「捨て身」はよく起こる事象です。
真社会性動物とは、生殖できる(子どもを産める)個体が限られている社会性の動物のことです。ハチやアリが有名ですし、哺乳類ではハダカデバネズミがいます。
ミツバチなどは、巣に敵が入ってきたときは、集団で突っ込んで「ミツバチボール」を作り、高温状態にして敵を殺します。もちろん、そこで自分も死にます。このような「自己犠牲」は真社会性の昆虫では当然のようです。
なぜ真社会性が生まれたのか
なぜこのような社会性が進化の過程で残ってきたのでしょうか。ハミルトン博士は次の3点を挙げて、説明しました。
- 女王とワーカーは同一の遺伝子を持っている可能性が高い。
- 子が親を手伝うことで、子の持つ遺伝子は兄弟を通して次世代に伝わる。
- 子が独立して子孫を残すより、親を手伝うことによってもっと多くの自分の遺伝子を残せる。
自然選択の考え方は、「進化は将来の世代に残る遺伝子数を最大化するような形で起こる」というものです。ワーカーのアリの遺伝子は、女王アリを守ることによって、より多くの兄弟姉妹へと伝わっていくことになります。それは進化の考え方と矛盾するものではありません。
この一見、「奴隷制」(?)、「過度な自己犠牲」にも思えるような社会システムは、ワーカーのアリにとってもメリットのあるものなのですね。