ハロゲンとは?
17族の元素をハロゲンと呼びます。ハロゲンは価電子を1つ持ち、電子を1つ受け入れて1価の陰イオンになります。
ハロゲンの名前の由来
ハロゲンはギリシャ語で「塩をつくりやすい」との言葉に由来します。実際、PtとAu以外の金属とは塩を作ります。
ハロゲンの単体
ハロゲンの単体は二原子分子です。性質は原子番号に従って変化していきます。
沸点 | 原子番号が小さいほど低い |
融点 | 原子番号が小さいほど低い |
酸化力 | 原子番号が小さいほど大きい |
水素・水との反応 | 原子番号が小さいほど激しく反応 |
ハロゲンの単体は酸化剤
ハロゲンの単体の原子は、陰イオンになりやすく、他から電子を奪う性質があります。そのため酸化剤として使われます。酸化力の強さは原子番号小さいほど高いです。
なぜ原子番号が小さいほど酸化力が強いの?
原子番号が小さいほど電子殻が小さくなり、電子核の正電荷が電子に働く力が強くなります。そのため、原子番号が小さいほど、酸化力が強く(相手から電子を奪いやすく)なります。
フッ素F2とは?
フッ素は刺激臭のある淡黄色の猛毒の気体です。酸化作用が最強で、水H2Oを酸化してO2を発生させます。
塩素Cl2とは?
塩素はも毒性のある黄緑色の気体です。空気よりも重く、水に少し溶けて次亜塩素酸HClOを生じます。
次亜塩素酸HClOとは?
HClOも強い酸化用を持つ物質で、殺菌漂白に使用されます。HClOは水溶液中のみで存在できる不安定な弱酸で、原子状酸素を放出し、他の物質から電子を奪い取ります。
塩素Cl2の発生方法
塩素は塩化ナトリウム水溶液を電気分解して製造します。
陽極:2Cl-→Cl2+2e–
陰極:2H2O+2e– → H2+2OH–
また、実験室では、酸化マンガンに濃塩酸を加えて加熱する方法があります。
上記の反応では、MnO2は酸化剤として働きます。この反応を進めるためには加熱が必要です。MnO2以外でも、強力な酸化剤であるKMnO4でも代用することができます。KMnO4の場合には加熱は不要です。
なぜ酸化マンガンと濃塩酸の反応には加熱が必要なの?
MnO2とCl2はどちらも酸化剤ですが、酸化力の強さはCl2 > MnO2です。そのため、本来は右向きの反応は起こります。そこで熱エネルギーを加えてやることにより、無理やりに左向きへの反応を起こさせています。Cl2は気体として発生するため、熱エネルギーを加えてさえやれば、左向きへの反応は起こりません。
また、加熱することにより、揮発性のHClも一緒に発生してしまいます。そのため、洗気ビンを準備し、HClは水に溶かして除去します。
また、さらし粉に塩酸を加えて発生させる方法もあります。
塩素のオキソ酸とは?
酸素原子を含む酸のことをオキソ酸と呼びます。塩素原子を含むオキソ酸には、HClO、HClO2、HClO3、HClO4があり、酸化数が大きいほど酸性が強くなります。
なぜHClOのことを「次亜」塩素酸と呼ぶの?
化学では最も安定した酸を基準として、それよりも酸化数が大きいものに「過」、酸化数が少ないものに「亜」、「次亜」とつけます。
HClO | +1 |
HCl2O | +3 |
HClO3 | +5 |
HClO4 | +7 |
塩素のオキソ酸の中で、最も安定した物質は塩素酸HClO3です(酸化数+5)。酸化数+3のHClO2を亜塩素酸、酸化数+1のHClOを次亜塩素酸と呼びます。
臭素Br2とは?
臭素は赤褐色の有毒な気体です。水に少量溶け、その水溶液は臭素水と呼びます。ちなみに、常温で単体が液体の物質は、臭素Br2と水銀Hgしか存在しません。
臭素水中ではBr2は水と反応してHBrとHBrOが発生しています。HBrOは酸化力を持つ物質です。
ヨウ素I2とは?
ヨウ素は昇華性のある結晶です。ヨウ化物イオンの水溶液に塩素を通じると、ヨウ素が遊離します。
水には溶けにくいですが、ヨウ化カリウム水溶液には溶けて三ヨウ化物イオンとなります。この溶液をヨウ素液と呼びます。
なぜベンゼンにヨウ素が溶けると赤色になるの?
溶媒の種類によって、I2への電子供給が起こり、色が変化します。ベンゼンに溶解すると赤色に、エタノールには褐色になります。一方、ヘキサンなどにはI2のまま存在できるため、紫色の溶液となります。
ヨウ素デンプン反応
ヨウ素溶液にデンプンを加えると青紫色になります。ヨウ素やデンプンの検出に使われます。
ハロゲン化水素
ハロゲン化水素はいずれも無色・刺激臭のある有毒気体です。極性分子のためよく水に溶け、溶液は酸性を示します。フッ化水素以外は強酸です。
フッ化水素HFとは?
フッ化水素は白金または鉛の容器中で、フッ化カルシウムCaF2に濃硫酸を加えると発生します。CaF2はホタル石とも呼ばれます。
なぜフッ化水素の沸点は他のハロゲン化水素よりも高いの?
フッ素は電気陰性度が大きいため、HF分子は強く極性を持ち、強力な水素結合が形成されます。その結果、沸点が他のハロゲン化水素よりも高くなっています。
なぜフッ化水素は弱酸なの?
フッ化水素は水素結合で結ばれているため、H+として電離することが中々できない状況にあります。そのため、フッ化水素の電離度が小さくなり、酸性が弱くなります。
フッ化水素の性質
フッ化水素は二酸化ケイ素SiO2を溶かす性質があり、ガラスの加工に利用されます。
SiO2 + 6HF(aq) → H2SiF6 + 2H2O
SiO2 + 4HF(g) → SiF4 + 2H2O
なぜフッ化水素は二酸化ケイ素を溶かすの?
二酸化ケイ素のSi-O結合のSiは⊕に帯電しています。そこに強い電気陰性度を持つFがF-として攻撃し、新たな結合を形成します。この反応が繰り返されることによって、Si-Oの結合が切れ、SiF4が生成されます。SiF4は水溶液中では、〔SiF6]2-という錯イオンとなっており、これを普通はH2SiF6として記します。
塩化水素HClとは?
塩化水素は水素と塩素を直接反応させて作られます。実験室では塩化ナトリウムに濃硫酸を加えて熱すると得られます。
加熱しなければ、硫酸と塩酸もどちらも強酸ですので反応は進みません。加熱するとHClが揮発するため、右側に反応が傾いていきます。
塩化水素の性質
通称「塩酸」と呼ばれる実験室では身近な酸です。塩酸とアンモニアを接触させるとNH4Clの白煙が生じるため、HCl、NH3の検出に利用されます。
ハロゲンの単体はなぜ有色なの?
フッ素分子の電子配置では、反結合性軌道も含まれています。この軌道が上位の軌道へと励起されると、電子間の反発は幾分か緩和され安定します。この反結合性軌道と上位のキドウのエネルギー差が、可視光から近紫外線の間の波長に相当し、F2分子はこの光を吸収するため、淡黄色に見えます。他のハロゲン分子も同様の原理で、光の波長を吸収し、有色の気体となります。