中和の量的関係には酸・塩基の強さ(電離度)は関係ない
例えば、酢酸の電離度は0.004なので、1mol/lの酢酸水溶液1Lには、H+は0.004mol存在します。この溶液に0,004molのOH–(NaOH)を投入しても中和は成立しません。H+の量が減るため、CH3COOHの電離が進むためです。
つまり、1molのCH3COOHを中和するためには、1molのOH–(NaOH)を準備する必要があります。中和の量的関係は以下のようになります。
中和する酸・塩基の量的関係には、酸・塩基の強弱は全くの無関係です。
価数の違う酸・塩基同士の中和
中和反応は、H+とOH–が量的に同じでなければ成立しません。そのため、次の関係式が成り立ちます。
中和の公式とは?
濃度をc(mol/l)、価数をn、体積をv(l)とすると、次の式が成り立ちます。これを中和の公式と呼びます。
中和滴定とは?
中和の公式を利用すると、酸・塩基のどちらかのモル濃度がわかっていれば、もう一方のモル濃度を求めることができます。
正確の濃度がわかっている溶液(酸または塩基)に、濃度がわからに溶液(酸または塩基)を少しずつ加え、中和に達するまでに必要とした体積から濃度が求まります(中和したかどうかはpH指示薬でわかります)。このような操作方法を中和滴定と呼びます。
指示薬には様々な種類がありますが、指示薬が示すのはあくまで滴定の終点です。そのため、中和点が終点ができるだけ近づくように指示薬を選ぶ必要があります。
指示薬とは?
中和滴定で、中和点を知るために加えられる試薬を指示薬といいます。指示薬は、弱い酸性・塩基性の物質であり、加えすぎると滴定に影響が及びます。
指示薬は特定のpHで分子構造が変わって変色します。この変色するpHの領域を変色域と呼びます。
リトマス紙は中和滴定には使用しない
リトマス紙は変色域が広く、またその変色具合が明瞭ではありません。そのため中和滴定には使用しません。
シュウ酸水溶液で水酸化ナトリウムを滴定してみよう
0.050mol/lのシュウ酸水溶液10mlを中和するのに、x mol/lの水酸化ナトリウム水溶液が8.3ml必要だったとします。すると、次の式が成り立ちます。
0.050 × 10 × 2 = X × 8.3 × 1
※シュウ酸は2価の酸です。
X = 0.120 mol/l
なお、実際の実験では、水酸化ナトリウムをビュウレットに、シュウ酸をコニカルビーカーに入れます。これは、空気中のCO2と塩基水溶液を反応させないようにするためです(空気中のCO2は水と反応して炭酸となります)。
電導度による中和点の決定方法
指示薬を用いずに、電導度を使って中和点を用いる方法もあります。中和が成立している状態では、イオンの濃度が減り、電導度が下がります。
例えば、塩酸の水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えていくと、水溶液中のH+とOH–が反応してH2Oとなり、徐々に電導度が下がっていきます。
電導度が最低になった所が中和点と言えます。
逆滴定とは?
中和滴定は、水溶液同士で中和させます。これは、水溶液同士では中和反応がしやすいからです。しかし、不溶性の塩基や気体(NH3やCO2など)を中和滴定で定量死体場合には、逆滴定を行います。
NH3(気)の逆滴定
まず、定量したいNH3(気)を過剰のH2SO4(濃度と体積はわかっている)と完全に反応させます。その後、別のNaOH標準溶液で未反応のH2SO4と中和させ、中和点を決定します。そうすると、NH3の物質量を求めることができます。
つまり、次の関係が成り立っています。
なぜ逆滴定と呼ぶの?
NH3は塩基性物質です。普通は、これに酸性の溶液で滴定して中和滴定を行いますが、一度硫酸に溶かすという作業をすることで、塩基性の溶液で中和滴定を行います。そのため、逆滴定と呼びます。
NH3の逆滴定で使われる指示薬
この逆滴定では、酸性側に変色域を持つメチルオレンジ、メチルレッドを用います。中和店においては、(NH4)2SO4が生じていますが、塩の加水分解により、弱酸性を示します。そのため、中和点が酸性に偏るのです。
CO2の逆滴定
CO2を過剰の水酸化バリウムBa(OH)2に完全に溶かします。すると次の沈殿が生じます。
残ったBa(OH)2をHCl標準溶液で中和することで、CO2の濃度を測定します。