ヒトの脇の下はめちゃくちゃ臭い
ヒトの脇の下は、動物界の中でもめちゃくちゃ臭い部類に入るらしいです。ヒトの脇の下の臭い発生能力にまさる動物は、ジャコウジカの香嚢やジャコウネコの肛門腺ぐらいらしいとのことです。
ヒトの脇の下はそもそも、匂いを発するのに特化した器官です。脇の下にはびっしりアポクリン腺がしきつめられており、その分泌物で腋毛にコーティングをしています。また、脇の下は蒸れて温かくなり、簡単に物質を蒸発させられます。アポクリン腺の分泌物自体は匂いはありませんが、バクテリアに分解されることによって臭いが生じます。
さらに、その湿気はバクテリアが増殖するのにもってこいの場所であり、臭いを強烈化させます。
アポクリン腺の役割
アポクリン腺(上記画像青色)は皮脂腺とは異なり、粘着性の脂肪分を分泌します。分泌物の色は人種や食べ物によって異なっており、白色から赤色まで様々です。
脇下の匂いは実際、器官の大きさから見ても、ヨーロッパ・アフリカ系の人々の方が発達しています。より多くの分泌腺が集中しており、独特の匂いを発しています。
一方、日本人は脇の下の分泌腺等が比較的小さく、腋下腺が全くない場合もあります。日本人の90%には察知可能な脇下腺がなく、残りの10%の人々が非常に苦しい思いをしながら過ごしています。
脇の下の臭いは誘惑の臭い
中世のヨーロッパには、一日中腋の下に挟んでいたハンカチを、パートナーの鼻先にくるようにしてデートに誘うと大成功を収めたというような話がたくさんあります。
また、女性がスライスしたリンゴを脇の下に挟んでおき、それをダンスパーティの終わりに好みの男性に食べてもらうといったような行為も行われていたようです。食べてもらえれば告白成功を意味し、「ラブアップル」と呼ばれていました。これは、脇の下の臭いが異性を誘惑するとの経験則から出た行動でしょう。
他にも、ある貴族が、汗まみれの女性のタオルで顔をぬぐったところ、一瞬で恋心を抱いてしまった、など様々な話があります。そのため、当時のお姫様ですら腋毛を剃らないような時代でした。
ナポレオンはジョゼフィーヌに「風呂を入るな」と書き送り、彼女の臭いを楽しんだとのことです。ジョゼフィーヌ自身は、日常生活では自身の匂いを強い香水で隠していたようです。
腋の下の臭いを見直してみる
ヒトにもフェロモンがあることは確認されています。女性が脇の下にパッドを入れ、他の女性にかいでもらうと生理周期が同期するようです。これは、寮生活などの集団生活ではよくある現象のようです。
しかし、性的な応答を呼び起こす性フェロモンはいまだ確認されていません。また、カイコガのように性フェロモンを嗅いだら雌に一直線というわけにもいかないので、ヒトの性フェロモンの同定は難しいでしょう。
なんにしても、ここまで臭いを出すために発達している器官なのですから、生物学的意味は大いにありそうです。中世の人々が夢中になったように、脇の下には本能を呼び起こす物質(フェロモン)が分泌されているのかもしれません。