ちょっとディープな生物の世界

ゾウリムシに寿命はないの?

ゾウリムシに寿命がない派 VS ある派

「ゾウリムシに寿命がない」と考えられていた時期もあった。ゾウリムシに限らずだが、単細胞生物は十分なエサを与え続ければ、分裂を続ける(クローンを作り続ける)と考えられていたのである。分裂しても遺伝子的な変化がなければ、その個体は「寿命がない」と言える。しかし、一方で、そのような単純なクローンを作る分裂には限界があるとの考え方もあった。

ゾウリムシ

ワイズマンとウッドラフの主張

ワイズマンは生殖質説を打ち立て、「多細胞生物は不死の生殖質と、死ぬ運命にある体質とからできているのに対し、ゾウリムシのような原生生物は生殖質のみからできているので不死である」と主張した。また、イエール大学のウッドラフはゾウリムシを33年間飼育し続け、接合を起こすことなく分裂を続けたと報告した。

ソネボーンの実験

しかし、最終的にはインディアナ大学のソネボーンがウッドラフの追試実験を行い、一細胞内で自家生殖が起こっていることが判明した。通常、ゾウリムシは小核を交換して「生殖」を行い、新生象リムシとなるのであるが、接合できない状況であると自らの小核同士を結合させる。減数分裂を伴う結合であるため、元のゾウリムシのゲノムとは異なる個体が誕生する。この自家生殖では他の個体と接合するよりも小さい遺伝的変化である。

参考:http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/LifeRh/02/98Bio02Paramecium.html

結論 「寿命はある」

さらに、ソネボーンは自家生殖できない環境下におくと、300回の分裂で死滅することを確認した。自家生殖を許す環境では、ゾウリムシはいつまでも分裂を続けることができた。つまり、ゾウリムシには寿命があり、(ゲノム的に)新たに生まれ変わらなければ存続できないと結論づけることができる。

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