卵巣周期
殆どの女性は思春期になると性周期と呼ばれる一定リズムのホルモン作用を経験する。生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンが視床下部から分泌され、生殖腺刺激ホルモンが脳下垂体前葉から分泌される。生殖腺刺激ホルモンには卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの2つがあり、卵巣の働きを支配している。
卵胞の成熟
卵胞刺激ホルモンが分泌されると、5~15個の原始卵胞が発育を開始する。この卵胞のうち1つだけが最終的に残り、他の卵胞は退化して閉鎖卵胞となる。閉鎖卵胞は結合組織となり、閉鎖体(corpus atreticum)を形成する。
また、卵胞細胞はエストロゲンを分泌する。エストロゲンは子宮内膜に作用して、増殖期へと移行させる。増殖期では子宮内膜は厚くなり(下画像下段)、着床できる状態へと準備する。また、エストロゲンは脳下垂体に作用して黄体形成ホルモンを分泌させる。黄体形成ホルモンは卵胞成熟の最終段階に必要なホルモンである。
排卵
卵胞が成熟したものをグラーフ卵胞と呼ぶ。グラーフ細胞と共に卵細胞も排卵の準備を始める。
また、卵巣の表面にはふくらみが複数個生じ、卵胞斑(下画像Follicle stigma)が出現する。卵巣の表面が局所的に結合が弱くなり、卵胞内の圧力も高くなって、卵子が放出される。その際には卵子だけでなく、周辺の組織(卵丘細胞、果粒層細胞)も同時に卵巣から押し出される。この排卵と同時に、卵子の減数分裂第一分裂が終了し、第二分裂へと突入する。しかし、受精するまでは第二分裂の中期でまた休止する。
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映像でもイメージしてみよう。
黄体の形成
排卵が終了すると、卵巣内に残っていたグラーフ卵胞は黄体細胞へと変化する(下画像は妊娠したために十分に成長した黄体)。黄体はプロゲステロンを分泌し、発情を促すと共に子宮粘膜に働きかけて着床の準備を行う。
卵管内での卵子の輸送
卵子は卵管采の掃くような運動と、卵管内を繊毛による運動によって卵管へと移動する。卵子は卵管の運動によって子宮へと送られる。子宮へは3~4日で到達する。卵管への移動中に精子と出会い受精する。卵管采の実物を見たい人はこちら(※手術映像につき閲覧注意)。
白体の形成
黄体は排卵後9日後に最も成熟し黄色になる。その後、受精しなければ黄体は退化し白体を形成する。黄体の退化と共にプロゲステロンの分泌も減少し、月経出血が促される。
卵子が受精した場合は、発生中の卵の栄養膜が分泌されるヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)によって黄体の退化が妨げられる。黄体は成長を続け、妊娠黄体になる。妊娠黄体は卵巣全体の1/3~1/2の大きさまでに発達し、プロゲステロンを分泌し続けるが、途中で妊娠期間中であっても退化が始まる。これは、胚の栄養膜が発達し、そこから分泌されるプロゲステロンの量だけで十分足りるようになるためである。
何らかの原因によるプロゲステロンが分泌されなくなると、流産が起こる。流産誘発剤は何らかの働きによってプロゲステロンを阻害する抗プロゲステロン作用を持つ物質である。