ちょっとディープな生物の世界

仮道管と道管の共通点と違い-構造・機能・植物種-

仮道管も道管も基本的な役割は同じ

仮道管・道管どちらも役割は水分の通路であり,体の支持の役割ももつ。どちらも死んだ細胞(死細胞)で構成されているという共通点がある。道管は仮道管の構造が進化したものと考えられている。

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仮道管と道管は構造が異なる

仮道管は細胞同士が縦につながる末端部が斜めに交わっている。

仮道管

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仮道管の細胞と細胞の間には下画像のような穴(壁孔)の開いた壁があり、穴を水が通っていく。

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一方、道管は細胞同士が上下で繋がって細胞内が死滅し、細胞間に壁がない貫通した筒状の構造をしている。

道管

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道管のメリット・仮道管のメリット

道管は上下の細胞が貫通しているため、スムーズに水の輸送を行なうことができることが最大のメリットである。

しかし、冬季に道管内の水が凍結すると、道管内の小さな気泡が集合し、気泡を形成してしまう。春先に溶けた際には、道管内に気泡があるために水の繋がり(水柱)が断絶されてしまい、水を吸い上げることができなくなる。水柱は一旦途切れると、水の凝集力が働くなるなり、それより上は蒸散によって吸い上げられ、それより下は重力によって引き下げられてしまい、もう二度と水柱がつながることはなくなってしまう。その結果、背の高い樹木は枯れてしまう。

しかし、仮道管は内部の水分が凍結しても、仮道管は上下が細かい穴で繋がっているだけであり、小さな気泡が集合せずに大きな気泡を作りにくい。また、縦一列に並んでいるわけではなく、斜めに接しながら複数列で繋がっているため、水のルートがどこかで確保されており、水の繋がり(水柱)が断絶されることは少ない。そのため、針葉樹は寒冷地においても生きていくことができるのである。

植物によって仮道管・道管どちらを使うのかは異なる

仮道管の方がより原始的な通道組織であり、シダ植物や裸子植物では主として用いられる。特に、針葉樹では仮道管だけが水の通路となっている。

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被子植物は主に道管が用いられているが、種や部分によって仮道管も含まれている。センリョウ(下画像)やヤマグルマは道管を欠き、仮道管だけからなる木部を持つ。

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まとめ:道管は仮道管が進化したもの

仮道管と道管を学ぶ上で大切なのは、仮道管の構造から道管へと発展していったという認識であろう。役割としてはどちらも「水の通路」であるが、道管の方が効率よく水が運搬できるような構造となっている。また、それぞれの管を持つ植物種を見てみても、進化の系図と同様に、原始的な植物であるシダ植物・裸子植物が仮道管、被子植物が道管を持っている。つまり、より原始的な水の通路が仮道管、より進んだ水の通路が道管と理解しておけば良いだろう。

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2 COMMENTS

管理人

コメントいただきありがとうございました。また、貴重な情報提供ありがとうございます。記事内に取り入れさせていただきました。今後ともどうかよろしくお願いいたします。

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