倍数性
倍数性とは、生存に必要な染色体が何セットであるかを示す値である。ヒトの場合は23種類の染色体が2セットあるため、二倍体であると言える。染色体突然変異には、染色体数が三倍、四倍となる場合がある。生物では二倍体が多いため、普通、三倍以上の個体を倍数体と呼ぶ。
nの使い方
たとえ三倍体であったとしても、体細胞の核相は「2n=○○」と書く。「n」はあくまでその生物の核相(単相世代か複相世代か)を示すのみであって、倍数体の値を示すものではない。しかし、胚乳などの特殊な場合は3nと表記する(理由は記事下に記載)。
単相・複相
- 単相:減数分裂によって染色体数が半減した状態。配偶子の時のことを指す。
- 複相:配偶子が接合し、染色体数が元に戻った状態。接合子の時のことを指す。
中には単相で長い間過ごす生物もいる。植物では、コケ、シダ植物はしばらくの間を単相で過ごす(下画像)。
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6644
三倍体-パンコムギ-
普通コムギは原種の植物から、交雑と染色体が倍数化することによってできた。原種のコムギは2n=14であるが、パンコムギは2n=42であり、三倍体となっている。「2n」は「複相世代」という意味なので、表示は変わらない。しかし、何倍体であるかを示すために「x」を用いることがある。次のような書き方をする。
パンコムギ:2n = 6x = 42
2n=14の原種の染色体のセットが三倍になったことを表現できる。
その他の倍数体の例
倍数体は体全体の大きさや器官の大きさが大きくなることがある。また、倍数体は繁殖能力の無い雑種になることが多い。これは、染色体が増えることによって、減数分裂などの際に上手く配偶子が形成されないためである。例として巨峰、三倍体のスイカ(種なしスイカ)などがある。これらの植物は挿し木で増やすことができる。
胚乳(三倍体)
胚乳細胞になる以前の中央細胞(下画像)は極核(n)を2つ持っており、この時点で複相(2n)であると言える。そこにさらに、精細胞(n)が加わって受精が行われるから、核相は3nと表現する。簡単に言えば、3つの配偶子が合わさるから3nであると言える。配偶子1つは単相、配偶子2つの接合は複相とすれば理解しやすいだろう。
http://waynesword.palomar.edu/
何故胚乳は三倍体なのかについては、次の説明が理解しやすいが、実際のところよくわかっていない。
胚乳が3倍体であることは倍数体強勢と考えられ、より多量のタンパク質合成ができる(より多くのmRNA が作られるので)ことで胚の早い成長を助長できる手段だと説明する学者もいます。