水の電離平衡とは?
純粋な水(蒸留水)は「電気を通さない」とよく言われますが、実際には僅かに電気を通します。それは、僅かな水分子が電離した状態で存在しているためです。
電離定数は次の式で表すことができます。
水の電離度は極めて小さいので、H2Oの濃度は殆ど変化しません。そのため、K[H2O]は定数であるとみなせます。K[H2O]= Kwとすると次の式が成り立ちます。
このKwを水のイオン積と呼びます。Kwは温度によって決まる定数です。
水のイオン積
蒸留水では、25℃では[H+]=[OH–]= 1.0 ×10-7 mol / lずつ存在しています。よって、水のイオン積は次のようになります。
水のイオン積は水の電離が邪魔されない希薄な酸・塩基でも成り立ちます。その結果、次のような関係になります。
[H+]>[OH-] 酸性
[H+]=[OH-] 中性
[H+]<[OH-] 塩基性
なぜ温度が高くなると水のイオン積Kwの値が大きくなるの?
水のイオン積は温度が高くなると、値が大きくなっていきます。これは、H2Oの電離が吸熱反応であるためです。
熱を加えるほど、右辺への反応が進むため、H+とOH–の濃度が上がり、水のイオン積Kwの値も大きくなります。
水素イオン指数pHとは?
水溶液の酸性・塩基性は、水素イオン濃度で示すことができます。水素イオン濃度の常用対数を水素イオン指数と呼び、記号pHで示します。
pHの値が1高くなると[H+]の濃度は10倍、2高くなると100倍になります。
[H+]の濃度が高すぎるとpHは使えない
例えば、[H+]= 10 mol/lでは、pHは-1になります。pHがマイナスの値になるのはおかしいことです。普通、pHは希薄な酸・塩基に使用されるものなので、10 mol/lのような濃度の高い溶液にはモル濃度を使用します。
1.0×10-5mol/lの塩酸を1000倍に薄めるとpHは何になる?
例えば、HCl =1.0×10-5mol/lを1000倍に希釈するとどうなるのでしょうか?単純に考えると、1.0×10-8mol/lとなり、pH=8と答えてしまいそうです。しかし、pH=8は塩基性であり、酸を薄めると塩基性になるとはおかしな話しです。
ここで考えなければならないのは、水の電離で生じた[H+]と[OH–]の濃度です。
HCl | H+ | Cl– |
10-8 mol/l | 10-8 mol/l |
H2O | H+ | OH– |
x mol/l | x mol/l |
HClの濃度が十分ある内は、H2Oの電離は極わずかなので考える必要がありません。しかし、HClが極めて希釈されると、[H+]H2Oは無視できなくなります。そのため、[H+]の総量は下の式のようになります。
この式を、水のイオン積に当てはめると次のようになります。
[H+]total ・[OH–] = 10-14
(10-8 + x)× x = 10-14
x2 + 10-8x – 10-14 = 0
xを解くと、9.5×10-8mol/lとなります。
よって、[H+]total = 1.05 × 10-7 mol/l
当たり前のことですが、水で薄めれば薄めるほど、中性(pH=7)に近づきます。
pH指示薬とは?
水溶液のpHの変化によって変色する物質をpH指示薬と呼びます。代表的な指示薬にはフェノールフタレインがあります。
なぜフェノールフタレインは塩基性で赤色になるの?
フェノールフタレインは弱酸であって、次のような電離平衡が存在しています。
塩基性の溶液にフェノールフタレインを加えると、H+が電離し、平衡が右へと移動します。A2-は赤色を示す陰イオンであるため、溶液全体が赤色となります。一方、酸を加えると、平衡が左に傾き、HA–(無色)が増えます。