中和反応と塩の生成
酸と塩基が反応すると中和反応が起こります。
HCl + NaOH → NaCl + H2O
H+とOH–が1:1の時に、完全に中和することができます。中和によって水と共に生じた物質を塩と呼びます。
なぜ中和熱は一定なの?
どの酸と塩基であっても、中和の反応熱は+56.6kJ/molです。これは、H+とOH–の結合によって生じる反応熱であるため、どの中和反応でも一定の値を示します。
水が生成されない中和反応
NH3とHClの中和の場合、水は生成されずに塩だけ生じます。
一般的にイオン結合性物質のうち、水酸化物と酸化物を除いたものを塩と呼びます。
塩基性酸化物と酸性酸化物
金属元素の酸化物には、水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じるものがあります。これらを塩基性酸化物と呼びます。
Na2O + H2O → 2NaOH
CuO + H2SO4 → CuSO4 + H2O
CaO + H2O → Ca(OH)2
また、非金属の酸化物も同様に、水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じるものがあります。これらを酸性酸化物と呼びます。
CO2 + H2O → H2CO3
SiO2 + 2NaOH → Na2SiO3 + H2O
SO2 + H2O → H2SO3
一酸化窒素NOと一酸化炭素COは酸性酸化物ではない
非金属元素の酸化物であっても、一酸化窒素NOと一酸化炭素COは水に溶けないため、溶液が酸性になりません。そのため、酸性酸化物には分類されません。
狭い意味の中和反応と広い意味での中和反応
狭い意味での中和反応とは、酸と塩基の中和反応を指します。酸性酸化物や塩基性酸物と酸・塩基によって塩が生じる反応を、広い意味での中和反応と呼びます。
正塩・酸性塩・塩基性塩とは?
中和反応が起こった結果、塩の中にHやOHが残っていない塩を正塩と呼びます。
一方、塩の化学式中にHが残っている塩を酸性塩と呼びます。
また、多価の塩基を酸で中和した際には、OHが残る塩が生成されます。これを塩基性塩と呼びます。
酸性塩・塩基性塩には次のような種類があります。
NaHCO3 炭酸水素ナトリウム
NaH2PO4 リン酸ニ水素ナトリウム
NaHSO4 硫酸水素ナトリウム
Na2HPO4 リン酸一水素ナトリウム
MgCl(OH) 塩化水酸化マグネシウム
Cu2CO3(OH)2 炭酸二水酸化銅(Ⅱ)
なぜ酸性塩・塩基性塩ができるの?
酸性塩・塩基性塩は多価の酸・塩基の中和反応で生成されます。これは、第二段の電離が起こりづらく、第一段の電離による中和が優先的に行われるためです。
さらに、中和反応の相手となる酸や塩基を加えていくと、第二電離による中和が行われ、正塩が生成されます。
酸性塩・塩基性塩は酸性・塩基性を示すわけではない
酸性塩・塩基性塩との名前につられて、水溶液もそれぞれ酸性・塩基性を示すかと勘違いされやすいですが、必ずしも名前の通りの液性を示すわけではありません。例えばNaHCO3は酸性塩ですが、水溶液は塩基性となります。
また、正塩であっても、NaClは中性、NH4Clは酸性、CH3COONaは塩基性を示します。
複塩とは?
K2SO4とAl2(SO4)3の混合水溶液からは、Al・K(SO4)2・12H2O(硫酸カリウムアルミニウム十二水和物)という塩が結晶として生じます。この物質の一般名称はミョウバンです。
このように、2種類以上の塩が組み合わせって生じた塩を複塩と呼びます。水に溶かすと、各成分のイオンに分かれます。
塩の化学式の書き方
塩の化学式は以下の順に並べます。
しかし、複塩のように複数の陽イオンを含んだり、塩基性塩のように複数の陰イオンを含む場合には各イオンをアルファベット順に並べます。
ただし、アルファベットが同じ場合には、単原子イオンは多原子イオンよりも前に並べます。そのため、MnO(OH)という塩基性塩では、OはOHよりも先に記述します。
塩の名称の付け方
塩の名称は次の方法で命名します。
例えば、Na2Sでは、硫化物イオンとナトリウムイオンのイオン結合の物質であるため、硫化ナトリウムと呼びます。
酸由来の陰イオンの場合には、次の方法で命名します。
例えば、Na2SO4は硫酸ナトリウムと呼びます。
また、Al・K(SO4)2のような複塩の場合、陽イオンは陰イオンから近い順に並べます。つまり、硫酸カリウムアルミニウムとなります。
逆に、MgCl(OH)など、陰イオンが2つある場合には、陽イオンに近い順に並べます。つまり、塩化水酸化マグネシウムとなります。