距とは植物において蜜腺が存在する筒状の構造です。マダガスカル島に生息するアングレカム・セスキペダレ(蘭の一種)は距の長さが30cm以上あり、通常の虫は距の蜜に到達することができません。
この蜜を吸うことができるのはキサントパンスズメガと呼ばれる蛾で、非常に長い口器を持っています。この蛾のみが蜜を吸えることによって、蛾は安定的に蜜にありつけ、蘭も安定的に蛾に花粉を運んでもらうことができます。お互いの利益が重なりあって、距の口器が長くなる進化(共進化)が促進されたと考えられています。アングレカム・セスキペダレとキサントパンスズメガは共進化のモデル的な生物として教科書で取り上げられる生物です。