カエルの体軸は表層回転によるディシェベルドタンパク質の移動によって決定される。精子が卵子に到着し、精子の中心体が卵の中に入ると、卵細胞表面がぐるりと30°回転する(表層回転)。これは精子の中心体によって引き起こされる運動である。
表層回転した結果、色素のずれによって灰色の領域が出現する、これを灰色三日月環と呼ぶ。表層回転により、植物極側にあったディシェベルドタンパク質が卵の中央(帯域)まで引き上げられ、それがシグナルとなって様々な調節遺伝子が発現する。精子は動物極側にしか進入できない。灰色三日月環は必ず精子侵入の反対側に出現することが知られている。
ご無沙汰しております()。2点ほど気になったことがあるので失礼させていただきます。
1.ディシュベルドタンパク質について
私の手元に唯一ある生物学資料集に記載がなかったので正確にはわからないのですが、インターネット検索をかけたところディシェベルドと呼ばれる(遺伝子発現を調整する)タンパク質があるとのことでした。日本語の発音に直したときに生じる差であればいいのですが、誤記かどうかが少し気になりました。
2.カエルの胚軸は~について
これ、体軸の間違い…とかではないですかね?
そういう意味なのかなと思って調べてみても植物しか見当たらなかったです。
その他)なぜ30°の回転なのか(=べつに45°とか、ただ動物極に入りやすいだけなら60°ぐらいのところでもいいんじゃない?)といったささやかな疑問は30°に位置する領域だけが特異的に導入されやすいんだろうなぁぐらいで自己解決したつもりになっているのですが、もしそういった解説をご存じでしたら…(教えていただけると喜びます)。
一応私自身でも探してみたのですが、やっぱり基本事項なのかそれとも応用内容なのか解説が見当たらなくて…。自習の常といえばその通りなんですけどね
誠に勝手ながらお礼/返信等は次回以降のコメントをもって代えさせていただきます。
(※管理人さんに対する負荷軽減のため
>すなぎもさん
いつも大変ありがとうございます・w・
参考書を確認した所、「ディシェベルド」であったので、そちらに修正しました。「体軸」についても誤字です。ご指摘ありがとうございます!
何故30°なのかは、文献等を探してみてもありませんでした;w;リサーチを続けていきたいと思います。見つかりましたら、ぜひ教えて下さい。よろしくお願いいたします・w・!
ディシェベルドはアフリカツメガエルの胚発生で、植物極から将来の背側に移動するとされています。正確にはディシェベルドにGFPをつけた融合タンパク質をコードするmRNAを未受精卵に注入した後に針でつついて賦活させた卵(精子は入ってないので発生しない)で、蛍光で緑色に見える顆粒が一方向に動くので、これが従来から知られているcortical rotationでの背側デターミナントの移動と一致しているのではないかと推定されてるわけです。で、アフリカツメガエル卵では、灰色三日月環は見えません。これはアフリカツメガエルの初期胚を見ている研究者なら常識かと思います(私は背側デターミナントの研究者です)。GilbertのDevelopmental Biolpgyでも灰色三日月環はアフリカツメガエルでは見えないと書かれています。おそらくは、非常に古い、Rana pipiensの研究で言われていたことが、cortical rotationの話と組み合わさってこのような「絵」になっているものと思われますが、私はこれは間違いだと思います。
なお、リンクされている動画ですが、これはアフリカツメガエルの発生ではなく、おそらくはRana pipiensかそれに近い何かです。で、おおざっぱに見たところでは13秒で第一卵割が、21秒で第二卵割が起こっています。第一卵割までの時間は、第一から第二までの約2倍なので、マイナス3秒のところで受精が起こっていると思われます。とすると、この動画は発生のかなり初期を捉えていることになり、この動画の最初にはいわゆる灰色三日月環はまだできてなくて、第一卵割までにできてくるはずです。ところが、この動画では最初から片方が明らかに白いです。たぶん、これは、灰色新月環ではなく、このような「模様」です。
>frog1954さん
コメント大変ありがとうございました。「アフリカツメガエル」では三日月環は観察されないのですね。大変勉強になりました。ありがとうございました・w・誤解が生じないように記事の方を訂正いたしました。お気づきの点がありましたら、またご指摘をお願いいたします。
質問です!
灰色三日月環と原口背唇部の違いはなんですか?
>こへさん
コメントありがとうございます。
灰色三日月環は、受精した直後の表層回転によってできる色の違う部位のことですね。
その後、卵割(細胞分裂)を繰り返して、多細胞になります。
次第に原腸が陥入してきて、その入り口を原口と呼びます。
原口の下側(動物極側)の領域を原口背唇部と言います。
図での位置的には似ていますが、時期が違います。