ちょっとディープな生物の世界

DNA、染色体、ゲノム、遺伝子の違いについて

DNA、染色体、ゲノム、遺伝子の違い

DNA、染色体、ゲノム、遺伝子は非常に混同しやすい単語である。また、特に「遺伝子」は狭義と広義の曖昧さを含んでいるため、非常に混乱しやすい。今一度、確認しておこう。

https://chugai-pharm.info/

[amazonjs asin=”4562055782″ locale=”JP” title=”ビジュアルで見る 遺伝子・DNAのすべて:身近なトピックで学ぶ基礎構造から最先端研究まで”]

DNAとは

DNAとはデオキシリボ核酸の略で、ヌクレオチド(リン酸+糖+塩基)が二重らせん構造を取ったものである。どんなに短くてもDNAであるし、どんなに長くてもDNAである。単純に物質名である。

DNA1

https://myndbook.com/

染色体とは

DNAがヒストン(タンパク質)に絡みついてヌクレオソームという構造を取り、それがさらに凝集してクロマチン構造となり、さらに凝集したものが染色体である。つまり、染色体はDNAとタンパク質から成る構造物であると言える。ヒトには46本の染色体がある。

http://ivd.mbl.co.jp/

ゲノムとは

ゲノムの定義は「自らの形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報」とされている。ヒトゲノムの塩基対数は30億塩基対(染色体23本分)である。

私たち2倍体の生物は、相同染色体を持ち、ある事柄に関する遺伝子を2組持っている。例えば、目の色に関する遺伝子は、母親由来のものが1つ、父親由来のものが1つの計2つである。ゲノムの定義に従うと、どちらか片方のみでも「自らの形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報」と言えるので、相同染色体を除いた23本の染色体の塩基対数がヒトゲノムであると言える。

ヒトはヒト設計図を2枚持っていて、2枚が相互作用しながら個体を作り出していると考えるとわかりやすい(下画像)。

体細胞は60億塩基対

全塩基対とゲノムは全くの別物で、体細胞の塩基対数は60億である(染色体46本全ての塩基対数)。

46本

http://square.umin.ac.jp/

遺伝子とは

遺伝子の定義は、特定のタンパク質をつくるための指令を含んだDNA(Essential 細胞生物学)とされている。最狭義においては、mRNAの配列を含むDNA領域である。しかし、広義においてはプロモーター領域や調節領域を含む場合もある。ヒトの遺伝子数は2万個ほどである。

https://ghr.nlm.nih.gov/

エキソンとイントロン

転写産物(mRNA前駆体)から除去されるものをイントロン、残る部分をエキソンと呼ぶ。エキソンが遺伝子であると言うことができ、イントロンは遺伝子を分断していると言える。しかし、選択的スプライシングでは、時と場合によって、あるDNA領域がエキソンになったりイントロンになったりすることもある。

https://socratic.org/

13 COMMENTS

クローキング

質問があります
DNAの中の塩基対が32億あるとされていますが、それは実際に数を数えた数値なのでしょうか?

さまざまな情報というのは具体的にどのような遺伝情報がわかるのでしょか?

返信する
管理人

ご質問いただきありがとうございます。
DNAの塩基対数は実際に数えられた数字です。実際、ワトソン(DNA構造提唱者)が自身の塩基配列を公開したりしていあmす。
DNAに含まれる情報は、タンパク質情報です。それが、酵素や体の物質、遺伝子の発現を左右する調節タンパク質などとして発現されます。また、イントロンにも遺伝子発現に関わる情報が記載されているとも考えられています。

返信する
トモロウ

1本(対)のDNAとタンパク質(ヒストン)によって46本の染色体が形成されているのでしょうか。即ち、46本の染色体は1本のDNAによってつながった状態なのでしょうか。

返信する
管理人

コメントいただきありがとうございます。46本はそれぞれ別々のDNA鎖によって構成されており、つながってはいません。

返信する
トモロウ

ご回答ありがとうございました。

返信する
しみず

教えて下さい。「交雑する人類」(NHK出版)44ページに、”どんな人のゲノムも、せんしょくたいDNAにミトコンドリアDNAを加えた47本のDNA鎖で構成されている。1世代さかのぼると、あなたのゲノムに寄与しているDNA鎖の本数は両親から伝わった約118(47プラス71)となる。2世代さかのぼると、・・・”この算術がわかりません。

返信する
管理人

コメントいただきありがとうございます。いろいろ考えてみましたが、よくわからない計算式ですね。

ちなみに2世代さかのぼると・・・の先はどんな数字があてられているのでしょうか。考える材料になるのでお教え頂ければ幸いです。

返信する
sugarfield

こちらの件該当書籍を確認したところ、生殖細胞が生じる際に卵子の場合45、精子の場合26(これで計71)の新しい組み換えが平均して生じることから計算されているようです。引用として提示されていた文献はちらです。
Kong, A., Gudbjartsson, D. F., Sainz, J., Jonsdottir, G. M., Gudjonsson, S. A., Richardsson, B., … & Shlien, A. (2002). A high-resolution recombination map of the human genome. Nature genetics, 31(3), 241.

ただ組み換えの数はあくまでゲノム断片の数なので、それをそのまま寄与しているDNA鎖の本数に置き換えることはできないのではと疑問があります。翻訳時のミスで意味がつながらなくなっているのかもしれません。

返信する
管理人

コメントいただき大変ありがとうございました。
組み換えが生じる可能性の数、卵子45、精子26という意味だったのですね。
確かに、「あなたのゲノムに寄与しているDNA鎖の本数」という言い回しには違和感がありますが、ある面ではすっきりしました!ありがとうございます。

返信する
しみず

一世代につき平均71の組み換えが起こるので、遺伝子プールの中にそれらが付け加わると解釈してもいいでしょうか?ただ、両親から受け継いだ46本の染色体にミトコンドリアの1本を付け加えた47本まではわかるのですが、2世代さかのぼると47プラス71プラス71の約189本に増えるという記述が分かりません。つまり両親の染色体は確かに47本ですが、おじいちゃん、おばあちゃんの染色体も入れれば47本よりもっと増えるのではないでしょうか。
また、引用文献(Nature genetics, 31(3), 241.)にはどんなことが書いてあったのでしょうか、教えて下さい。訳のミスというのはちょっと考えられません。基本的には数字の問題なので。

返信する
sugarfield

引用文献に関しては私が確認した限り組み換え率に関する内容だけでした。寄与するDNA鎖の計算は『交雑する人類』(NHK出版)の原書『Who we are and how we got here : ancient DNA and the new science of the human past』によるオリジナルの見解ではないでしょうか。私も数字の誤訳ではないと思いますが、寄与するDNA鎖をどう定義しているかは少なくとも和訳書の記述だけでは判断しかねると思います。もちろん原書も同様の記述になっている可能性もありますので、そこは確認してみないと何とも言えません。

返信する
匿名

原著者はハーバード大学医学大学院遺伝学教授、訳者は東北大学医学部薬学科卒業、協力者は東京大学理学系研究科博士課程修了(博士)とありますので、学術的にかなり厳密な検証を経てきていると考えられます。何か新たに分かりましたらご連絡ください。
とりあえず当方の理解力不足では必ずしもないということが分かり、少し胸を撫で下ろしています。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です