有性生殖

哺乳類と魚類の性決定遺伝子-Sry遺伝子 Dmy遺伝子-

哺乳類の性決定遺伝子

哺乳類はXY型の性決定様式を持っている。多くの哺乳類のY染色体には、Sry遺伝子(Sex determining region Yの略=Y染色体の性決定領域)と呼ばれる遺伝子がある。

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Sry遺伝子は、胚発生時に精巣形成に関して、マスター遺伝子として働く。このことは、XXの染色体を持つマウスの胚(♀)に、Sry遺伝子を導入すると精巣が形成された実験から確認された。下画像は染色体はXXなのにも拘わらず、遺伝子導入によって精巣が形成された個体である。

https://www.biotechniques.com/

XY女性症候群

ヒトを含む哺乳類は元々は女性型であり、Y染色体のSry遺伝子が発現することによって男性型となる。Y染色体のSry遺伝子が正常に発現しないと、XY染色体を持っていても、体は女性となる場合がある(XY女性症候群(XY型性腺形成異常症))。陸上競技などにおいては、体は女性で染色体が男性の場合には、どちらの性別を採用するかということでずっと議論が続いている。

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魚類(メダカ)の性決定遺伝子

メダカはXY型の性決定様式を持っている。Y染色体にはDmy遺伝子(DM-related gene on the Y-Chromosomeの略)が存在する。このことは、XXの染色体を持つメダカ(♀)にDmy遺伝子を組み込ませることによって雄化した実験から確認された。

http://www.nibb.ac.jp/

しかし、Dmy遺伝子はSry遺伝子とは異なり、メダカ属の2種に特異的な遺伝子であり、魚類全体への普遍性はないことが確認されている。

細胞質遺伝

細胞質遺伝とは

形質を支配する遺伝子が核ではなく細胞質に存在する場合の遺伝を細胞質遺伝と呼ぶ。具体的にはミトコンドリアや葉緑体に含まれる遺伝子の遺伝のことを指す。

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雄性配偶子由来のミトコンドリアは子どもに引き継がれることはない。精子などにはミトコンドリアが含まれているが、これは卵細胞の自食作用によって分解されてしまう。そのため、子は雌性配偶子由来の葉緑体・ミトコンドリアの遺伝子をそのまま引き継ぐこととなる。このような細胞質遺伝ではメンデルの法則などは一切成り立たない。

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ミトコンドリアイブ

ミトコンドリアDNAは必ず母親から受け継がれる遺伝子である。DNA塩基配列は長い年月をかけて一定の割合で突然変異を起こすため、塩基配列の差異を比較すればいつの時点で分岐したのかを考察することができる。アラン・ウィルソンはミトコンドリアDNAを調査し、約20万年前のアフリカにいた女性に起源を遡ることができるとの仮説(イブ説)を打ち立てた。

https://ja.wikipedia.org/

しかし、これは聖書の神話が指すような「一人の女性から人類が始まった」ということではない。ある人類のコロニーには集団として多数の男性・女性がいたことが推測される。しかし、ミトコンドリアDNAは男の子だけが生まれると次世代に遺伝子が残らなかったり、子孫を作れなかった女性もいたはずである。それが長い年月の間に偶然によって、コロニーの個体全部が、同じ起源のミトコンドリアを持つもので占められるようになり、やがてこのコロニーの一部が、各地に分散していったということである(下画像)。

https://ja.wikipedia.org/

ふ入りの葉の細胞質遺伝

オシロイバナなどは「ふ」を持つ植物である。葉の細胞に含まれる葉緑体が正常であれば、クロロフィルなどの光合成色素が合成されて緑葉になる。しかし、葉緑体の遺伝子に異常が生じれば、光合成色素が合成されず緑色にならない。

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オシロイバナの受精卵は正常な葉緑体と、異常な葉緑体どちらも持っている(異常な葉緑体のみだと、光合成ができないため死んでしまう)。これが、細胞分裂を繰り返すうちに次のように葉緑体を受け継いでいく。

  • 正常な葉緑体を持つ細胞 → 緑葉
  • 正常な葉緑体と異常な葉緑体を持つ細胞 → ふ入り葉
  • 異常な葉緑体を細胞 → 淡黄色葉

その結果、オシロイバナには3種類(緑葉、ふ入り葉、淡黄色葉)の葉がある。もちろん、全て緑葉の個体もある。オシロイバナの葉緑体の遺伝子は枝ごとによって差が生じる。

伴性遺伝

伴性遺伝

性染色体のどちらかにのみ遺伝子が存在する場合、性の区別と関連を持って遺伝が起こる。そのような遺伝を伴性遺伝と呼ぶ。普通、遺伝子型は性染色体の右上に記載する。

伴性遺伝

性染色体

ヒトの場合ならば23番目の染色体には、X染色体かY染色体の2種類がある。XXならば女性になり、XYならば男性になる。このように性決定に関係する染色体を性染色体と呼ぶ。

性染色体

様々な伴性遺伝

血友病

X染色体上には血液凝固因子遺伝子Aが存在する。また、血液凝固しない劣性の遺伝子aもあり、劣性ホモ接合(aa)となった時に、止血できない病気である血友病を発症する。

血友病

ヒトの赤緑色覚異常

X染色体上に赤緑を識別できる遺伝子Aが存在し、識別できない劣性遺伝子aも存在する。劣性ホモ接合(aa)となった時に赤緑色覚異常を発症する。下の動画は色盲テスト。

ショウジョウバエの目の色

ショウジョウバエの目の遺伝子はX染色体上に存在し、赤色が優性、白色が劣勢である。

ショウジョウバエ

伴性遺伝

伴性遺伝

性染色体のどちからにのみ遺伝子が存在する場合、性の区別と関連を持って遺伝が起こる。そのような遺伝を伴性遺伝と呼ぶ。普通、遺伝子型は性染色体の右上に記載する。

伴性遺伝

性染色体

ヒトの場合ならば23番目の染色体には、X染色体かY染色体の2種類がある。XXならば女性になり、XYならば男性になる。このように性決定に関係する染色体を性染色体と呼ぶ。

性染色体

様々な伴性遺伝

血友病

X染色体上には血液凝固因子遺伝子Aが存在する。また、血液凝固しない劣性の遺伝子aもあり、劣性ホモ接合(aa)となった時に、止血できない病気である血友病を発症する。

血友病

ヒトの赤緑色覚異常

X染色体上に赤緑を識別できる遺伝子Aが存在し、識別できない劣性遺伝子aも存在する。劣性ホモ接合(aa)となった時に赤緑色覚異常を発症する。下の動画は色盲テスト。

ショウジョウバエの目の色 

ショウジョウバエの目の遺伝子はX染色体上に存在し、赤色が優性、白色が劣勢である。 

ショウジョウバエ

様々な様式の遺伝

メンデルの法則に当てはまらない遺伝

遺伝には様々な種類があり、メンデルの法則に当てはまる場合の方が少ない。それらの種類として、不完全優性、複対立遺伝子、致死遺伝子などがある。

http://next.spotlight-media.jp/

不完全優性

対立形質の遺伝子の優劣が完全でない遺伝。優性と劣性の中間雑種が生まれる。アサガオは赤色RRと白色rrを交配させると桃色Rrが生まれる。他にキンギョソウの花の色(下画像)などがある。

複対立遺伝子

対立形質の遺伝子が複数ある場合のこと。ヒトの血液型を決定するのはABOの複対立遺伝子である。

致死遺伝子

ホモ接合体になった時に個体に死をもたらす遺伝子。ヒトの鎌状赤血球の遺伝子は、ヘテロ(鎌状赤血球と通常赤血球)の組み合わせでは、貧血で済むが、ホモ(血球すべてが鎌状赤血球)の場合には重度の貧血で死に至る。他にはハツカネズミの毛の色と関連した致死遺伝子がある。

下のネズミでは、Yが黄色の遺伝子、yが灰色の遺伝子であり、Yが優性である。一方で、Yはホモになると死亡する致死遺伝子でもある。

染色体地図

染色体地図

距離が遠い遺伝子ほど組換え価が高く、距離が近い遺伝子ほど組み換え価が低いという性質を利用して遺伝子の位置を調べた。モーガン「組換え価は遺伝子の距離の比例する」という考えが前提となっている。下図では染色体のどの位置にどの遺伝子があるかを示してある。遺伝子の名前は発見者が適当につける。

三点交雑

調べ方は次の通りである。

  1. 3つの形質の遺伝子(A、B、C)に着目する。A、B、Cは同一染色体上にある遺伝子である。
  2. 純系の個体(ABC/ABC)に劣性ホモの個体(abc/abc)を交配させ、ABC/abcの個体を作成する。
  3. さらに劣性ホモの個体を掛け合わせる。
  4. すると、様々な遺伝子型の個体が出現する。AとB、AとC、BとCの組換え価をそれぞれ求め、地図上に表すと染色体地図が完成する。

例題

例題
http://topicmaps.u-gakugei.ac.jp/

例題として上の図で考えてみよう。ある個体のヘテロ(AaBbCc※並び方は不明)に劣性ホモ(abc/abc)を掛け合わせた結果が図である。

Pの遺伝子型を探る

一番個体数が多いのは、[ABC]と[abc]である。一番個体数が多いのが組換えが起こっていない配偶子である。遺伝子型の半分は劣性ホモのabcが入るので、[ABC]はABC/abcと考えることができる。よって劣性ホモと交雑した個体はABC/abcである。ただしA、B、Cの並び方はわからない(ACBかもしれないし、CABかもしれない)。

AとBの組換え価を求める

組換え価は一組ずつ求めていくこと。AB、abが組換えが起こっていない配偶子である。それ以外(Ab、aB)は組換えが起こっている。

  • Abの個体数:11
  • aBの個体数:9

よって、組換え価は(11+9)÷(全体の配偶子数852)×100=2.3%

BとCの組換え価を求める。

BC、bcが組換えが起こっていない配偶子である。それ以外(Bc、bC)は組換えが起こっている。

  • Bcの個体数:38
  • bCの個体数:46

よって組換え価は(38+46)÷(全体の配偶子数852)=10%

AとCの組換え価を求める

AC、acが組換えかが起こっていない配偶子、それ以外(Ac、aC)は組換えが起こっている。

  • Acの個体数:38+11=49
  • aCの個体数:46+9=55

よって組換え価は(49+55)÷(全体の配偶子数852)=12%

染色体地図を描く

上の問題の解答欄は間違っていることが判明した。AとBが一番離れており、CはAとBの中間にある。染色体地図は下のようになる。

三点交雑

おすすめ練習問題本

遺伝問題を完璧にしたい方は次の本をお勧めします。他のDoシリーズ同様に非常に丁寧な解説と、重要点に絞った問題が用意されています。

不完全連鎖-乗り換えと組み換えの違い-

乗換え

相同染色体が対合した際に、染色体の一部が交換されることがある。この現象を乗換えと呼ぶ。

組換え

遺伝子が連鎖していた場合、乗換が起こることによって遺伝子の組み合わせが変わることがある。この現象を組換えと呼ぶ。また、組換えが起こった連鎖を不完全連鎖と呼ぶ。一方、組換えが起こらない連鎖を完全連鎖と呼ぶ。

下図では、ABC/abcが作る配偶子は本来、ABC×2とabc×2であるが、途中で乗換が起こり、ABC、ABc、abC、abcとなっている。

組換え

乗り換えと組み換えの違い

乗り換えは染色体が一部交換されることを指す。組み換えは遺伝子が一部交換されることを指す。当然であるが、組み換えは乗り換えなしでは起こりえない現象である。染色体を見るか、遺伝子を見るかによって呼び方が異なるということを理解しておこう。

組換え価

どれくらいの割合で組換えが起こったのかを示す%値である。組換えによって生じた配偶÷全体の配偶子数×100で求めることができる。

組換え

例えば、上の図で配偶子がAB:Ab:aB:ab = 8:2:2:8の割合でできたとしよう。すると次のように組換え価を求めることができる。

(2+2) / (8+2+2+8) ×100 = 10%

なお、図などが場合、AB、abとAb、aBのどちらが組み換えが起こった配偶子かを見分けなければならない。その場合には、全体を見て少ないものを探せば良い。組み換えが起こった配偶子は、組み換えが起こらない配偶子よりも多くなることはないのである。

また、配偶子AB:Ab:aB:abの割合が1:1:1:1だった場合を考えてみよう。配偶子の内2つに組換えが起こっている。よって、2÷4×100=50%となる。組換え価が50%だと遺伝子は独立していると言え、遺伝子が連鎖しているという前提が間違っていることが判断できる。

遺伝子の連鎖

独立

2つの形質に関する遺伝子(AとBなど)がそれぞれ別の染色体上にある場合を独立と呼ぶ。メンデルの法則は独立の状態でのみ通用する。下図は遺伝子型AaBbの個体で連鎖していない場合。

独立

連鎖

2つの形質に関する遺伝子が同一染色体上にある場合を連鎖と呼ぶ。連鎖している遺伝子のグループを連鎖群と呼び、遺伝子型は連鎖群でまとめて書く。例えば、AaBbの個体(下図)で、AとB、aとbが連鎖している場合はAB/ab又はab/ABと書く。

連鎖

連鎖している遺伝子の交配

個体AB/ABのと個体ab/abを交配する。AとB、aとbは連鎖している。AB/ABの配偶子はABのみ、ab/abの配偶子はabのみとなる。AとB、aとbはまとまって動くのがポイントである。結果、F1はAB/abとなる。F1の配偶子はABとabとなる。

F2(F1同士の自家受粉)の組み合わせは、AB/AB、AB/ab、ab/AB、ab/abとなる。表現型は[AB]:[ab]=3:1となる。

メンデルの法則

メンデルの法則

かつて染色体などのことが良くわかっていなかった時代に、遺伝の仕組みを解明した法則。優性の法則、分離の法則、独立の法則がある。分離の法則と独立の法則については、減数分裂の事を言葉を変えて説明しただけである。

メンデル
メンデルの死後に研究が評価された。http://en.wikipedia.org/wiki/Particulate_inheritance

優性の法則

対立形質を持つ純系を掛け合わせると、F1には優性の形質だけが現れる。

  • 例:AA×aaのF1はAaであり、表現型は[A]のみ。
優性

分離の法則

配偶子が形成されるとき、対をなした遺伝子(相同染色体)はそれぞれ別の配偶子に入る。

  • 例:Aaの配偶子は、Aとaである。
一遺伝子雑種
Pp(真ん中)の配偶子はPとpになる。http://www.zo.utexas.edu/faculty/sjasper/bio301L/genetics.html

独立の法則

2対以上の対立形質があるとき、各配偶子の遺伝子の組み合わせはランダムであり、独立している。

  • 例:AaBbの配偶子はAB、Ab、aB、abが同じ割合で生じる(AB:Ab:aB:ab=1:1:1:1)

二遺伝子雑種

二遺伝子雑種

二つの形質に着目した純系を掛け合わせたものが二遺伝子雑種である。エンドウマメの色と形に着目しよう。黄色の遺伝子をY、緑の遺伝子をyとし、Yはyに対して優性であるとする。丸い形の遺伝子をR、しわしわの形の遺伝子のrとし、Rはrに対して優性であるとする。YYRRyyrrの個体を掛け合わせてみよう。

Pの配偶子

YYRRの配偶子はYRである。YとYが相同染色体、RとRが相同染色体なので、減数分裂すると相同染色体が分離して配偶子に入る。その結果、YRの組み合わせだけとなる。yyrrの配偶子はyrとなる。

F1の遺伝子型と配偶子

YRとyrを掛け合わせるとYyRrとなる。YyRrの配偶子の組み合わせ方はYR、Yr、yR、yrとなる。

F2遺伝子型と表現型

遺伝子型は(YR、Yr、yR、yr) × (YR、Yr、yR、yr)の組み合わせは、4種類×4種類=16種類の組み合わせとなる。その表現型の割合は、[YR]:[Yr]:[yR]:[yr]=9:3:3:1となる。下の図の表を実際に数えてみるとそうなっている。異なる2つの純系の遺伝子を持つ個体同士を掛け合わせると(例:AAbb×aaBBなど)、表現型の割合は9:3:3:1になる。この数字は非常に重要である。

F2
[YR]:[Yr]:[yR]:[yr]=9:3:3:1http://en.wikipedia.org/wiki/Heredity