単細胞には「死がある」という人と「死なない」という人がいる
福岡伸一氏著の「生命の逆襲」には次のような文章があります。
ところが単細胞生物には死がありません。もちろん栄養不足などで分裂できないまま生命活動を停止するような単細胞もあり、この場合は細胞の死といえます。しかし、分裂を繰り返す限りにおいて単細胞生物には死がないのです。
しかし、大阪大学のwebページには次のような文章もあります。
つまり単細胞生物にも寿命はあるのです。
いいかたを変えると1匹のゾウリムシから出発した「姉妹細胞の集団」を一まとまりに考えると、有性生殖をしないかぎり寿命が来て死にます。
https://www.sci.osaka-u.ac.jp/
どちらが正しいのでしょうか。
何を基準とするかによって考え方が違う
前述した両者の主張の違いは、寿命を捉えるにあたって、何を基準とするかの違いによって生じています。福岡伸一氏は「細胞」を基準としており、大阪大学は「遺伝子」に着目しています。
「細胞の連続性」の観点から見ると不死身
細胞視点で見てみると、単細胞の生物は単純に分裂を繰り返すだけであり、個体としては連続しているように見えます。確かに細胞はずーっと連続しているので、終わりがなく寿命はありません。
「遺伝子の連続性」の観点から見ると寿命あり
単細胞生物は他の個体と遺伝子の交換を行うことが知られています。大腸菌はプラスミドを他の大腸菌に注入しますし、ゾウリムシも接合しないと分裂回数に限界が生じます。遺伝子の混合が起こると、起こる前の生物とは別の生物であると言うこともでき、混合前の生物は終わった、つまり寿命があると言えます。
まとめ:単細胞生物は遺伝子的には寿命があるが、細胞は続いている
単細胞生物同士でも遺伝子の交換は行われ、遺伝子は絶えず変化しています。そういう意味で、遺伝子レベルで同じ個体が存続し続ける(その個体のコピーが作られ続ける)ということはありません。つまり、ある個体(ある遺伝子の組み合わせを持った個体)の寿命はあると言えます。
しかし、細胞レベルで見てみると、単細胞生物は単純に分裂を繰り返しているだけなので、細胞は連続しています。つまり、半永久的に細胞は続いていくので、寿命はないと言えます。