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【化学】金属のイオン化傾向とは?

金属のイオン化傾向とは?

金属元素とは、原子を放出することによって安定する元素です。電子を放出して陽イオンとなろうとする性質を金属のイオン化傾向と呼びます。

金属元素の中でも、電子の放出しやすさが異なります。例えば、Ag+が含まれる溶液にCuを加えると、Cuはイオン化してCu2+となり、Ag+はAgとなります。つまり、Cuの方がイオン化傾向が高いと言えます。

イオン化傾向とイオン化エネルギーの違い

混合されやすいものとして、イオン化傾向イオン化エネルギーがあります。イオン化傾向は、単体の金属が水和イオンになるために必要なエネルギーのことを指します。このエネルギーが小さいほど、イオンになりやすい(イオン化傾向が大きい)です。

一方、イオン化エネルギーとは気体状態の金属原子から電子を取り去るのに必要なエネルギーのことです。

イオン化傾向に含まれるエネルギーには次の要素が含まれます。

  • 単体の結合を切り、気体(金属原子)にするエネルギー(=昇華熱)
  • 金属原子から電子を取り去るエネルギー(=イオン化エネルギー)
  • 金属イオンが水和の際に発する熱量(=水和熱)

例えば、Liの昇華熱、イオン化エネルギー、水和熱は次の通りです。

昇華熱-159 kJ/mol
イオン化エネルギー-520 kJ/mol
水和熱+507 kJ/mol
合計(イオン化傾向)-172

イオン化列とは?

金属元素をイオン化傾向順に並べたものをイオン化列と呼びます。

K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb [H+] Cu Hg Ag Pt Au

さらに詳しいイオン化列は次のようになります。

Li K Ba Sr Ca Na Mg Al Mn Zn Cr Fe Cd Co Ni Sn Pb [H+]Cu Hg Ag Pt Au

イオン化傾向の低い金属は電子を受け取りやすい(還元されやすい)性質を持っていると言えます。

アルカリ金属のイオン化傾向

一般的に、イオン化エネルギーが小さいほどイオン化傾向は大きくなります。アルカリ金属のイオン化エネルギーは原子番号が大きいほど大きくなるので、イオン化傾向は次のようになります。

Li > K > Cs > Rb > Na

水と金属の反応

常温で反応する金属:K、Ca、Na

イオン化傾向の大きいK、Ca、Naなどの金属は常温でも水と反応し、水酸化物を生成します。

2Na + 2H2O → 2Na(OH)2 + H2

熱水と反応する金属:Mg

Mgは沸騰水と徐々に反応します。

Mg + 2H2O → Mg(OH)2 + H2

また、さらに高温の水蒸気と反応させた時には酸化物を生じます。

高温の水蒸気と反応:Al、Zn、Fe

高温の水蒸気との反応するきんぞくでは、表面に酸化物質を生成します。

3Fe + 4H2O ⇔ Fe3O4 + 4H2

Niよりもイオン化傾向の小さな金属では、水とは反応しません。

酸素O2と金属の反応

速やかに酸化:K、Ca、Na

K、Ca、Naは空気中で速やかに内部まで酸化されます。

徐々に酸化:Mg、Al、Zn、Fe、Ni、Sn、Pb、Cu

上記の金属では徐々に酸化が行われます。表面に酸化被膜を生じます。

常温で酸化されない:Hg、Ag、Pt、Au

上記の金属は酸化されないため、光沢を持ち続けます。そのため、貴金属と呼びます。

水銀は高温条件では酸化される

Hgは400℃まで過熱すれば酸化されてHgO(赤色)となります。しかし、さらに過熱し500℃以上になると再びHgに戻ります。

酸と金属の反応

水素が発生する反応:K~Pb

[H+]よりもイオン化傾向が大きい金属は、水素を発生しながら酸に溶けます。しかしPbは実際には殆ど溶けません。

Fe + H2SO4 →FeSO4 + H2

Pbはなぜ酸に溶けないの?

Pbが酸と反応すると細かな酸化被膜が生じ(PbCl2、PbSO4など)、酸との反応を妨げてしまいます。そのため、反応が停止します。PbCl2は熱湯に可溶ですので、熱しながらHClと反応させるとスムーズに反応を進行させることができます。

酸化力のある酸に溶ける反応:Cu、Hg、Ag

Cu、Hg、Agは、硝酸や熱濃硫酸には溶けます。これは酸化還元反応ですので、発生する気体はH2ではありません。

Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + SO2 + 2H2O
3Cu + 8HNO3(希硝酸) → 3Cu(NO3)2 + 2NO↑ + 4H2O
Cu + 4HNO3(濃硝酸) → Cu(NO3)2 + 2NO2↑ + 2H2O

濃硝酸と反応しない金蔵

「Fe・Ni・Al・Cr・Co」などは酸化被膜を作り、濃硝酸とは反応しません。このような反応性を失った状態を不動態と呼びます。次のような覚え方が有名です。

「Fe・Ni・Al・Cr・Co」手にある黒いコーラ

王水に溶ける金属:Pt、Au

王水は濃硝酸と濃塩酸の体積比を1:3にした混合物です。濃硝酸と濃塩酸は次のように反応します。

HNO3 + 3HCl → NO + 2H2O + 3[Cl・](原子状塩素)

Auと王水の反応

Auとは次の反応を示します。

Au + 3[Cl・]+ 2HCl → Au3+ + H+ 4Cl → H[AuCl4](テトラクロロ金(Ⅲ)酸)

Ptと王水の反応

Ptとは次の反応を示します。

Pt + 4[Cl・]+ 2HCl → Pt4+ + 2+ 6Cl → H2[PtCl6

金属の精錬

電気分解で還元されるK、Ca、Na、Mg、Al

K、Ca、Na、Mg、Alの化合物は還元されにくく、炭素や水素で還元することはできません。そのため、電気分解で還元して得ることができます。これを融解塩電解と呼びます。

C、COなどで還元される:Zn~Cu

イオン化傾向が中程度の金属は酸化物などの状態で産出することが多いです。CやCoで還元して金属を得ます。

Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2

過熱によって還元される:Hg、Ag

イオン化傾向が小さい化合物は、過熱するだけで容易に還元することができます。

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