ヒトゲノムの塩基対数と遺伝子数

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ヒトゲノムは約30億塩基対である

ヒトゲノムは30億塩基対である。しかし、体細胞には60億塩基対が含まれている。この違いは様々な問題集で出題されるため、特に注意する必要がある。

ゲノムの定義は「自らの形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報」とされている。

私たち2倍体の生物は、相同染色体を持ち、ある事柄に関する遺伝子を2組持っている。例えば、目の色に関する遺伝子は、母親由来のものが1つ、父親由来のものが1つの計2つである。ゲノムの定義に従うと、どちらか片方のみでも「自らの形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報」と言えるので、相同染色体を除いた23本の染色体の塩基対数がヒトゲノムであると言える。

生殖細胞(染色体23本)の塩基対数がヒトゲノムと一致している。ヒトはヒト設計図を2枚もっていて、2枚が相互作用しながら個体を作り出していると考えるとわかりやすい(下画像)。

ヒトの遺伝子数

ヒトの遺伝子数は約2万個ほどであることが知られている。ちなみに、ショウジョウバエが約14000個、酵母が約6000個である。書かれた時期が異なるためか本によって多少数字が異なっている。

ワトソン遺伝子の分子生物学(第6版)によれば、

大腸菌(全長4.6 Mb、遺伝子数約4,400個)

出芽酵母(全長12 Mb、遺伝子数約5,800個)

線虫(全長103 Mb、遺伝子数約20,000個)

キイロショウジョウバエ(全長180 Mb、遺伝子数約14,700個)

シロイヌナズナ(全長120 Mb、遺伝子数約26,500個)

トウモロコシ(全長2,200 Mb、遺伝子数>45,000個)

イネ(全長430 Mb、遺伝子数~45,000個)

マウス(全長2,600 Mb、遺伝子数約22,000個程度)

ヒト(全長3,200 Mb、遺伝子数約20,000個程度)である。

http://www.toho-u.ac.jp/

驚くことに、ヒトの遺伝子数と線虫の遺伝子数は同じくらいである。このことからも、遺伝子の数が生物種の複雑さ(その固有さ)を決定するのではなく、遺伝子の発現がどのように制御されているかがより重要であるかがわかる。

1980年当初は、ギルバートによって遺伝子数は10万個ほどであろうとの推測が立てられていた。これは、ヒトの遺伝子の平均的な大きさ3×104塩基とヒトゲノムの大きさ3×109塩基対から概算したものであった。10万という数字は切りも良く、論文や教科書に広く引用されるようになった。

しかし、この計算は最大で何個の遺伝子を人は持ちうるのかという計算であって、実際の遺伝子数とは全くの無関係である。実際、今日ではゲノムの中には反復配列のような”ジャンク”が多く混ざっていることが確認されている。

ヒト遺伝子の同定方法

ヒトの遺伝子数を実際に調べるのは非常に困難な仕事だった。そのため、まずは原核生物の遺伝子調査から始まった。原核生物はイントロンを含んでいないため、開始コドンから終始コドンまでの間が100個以上コドンが続く塩基配列をコンピュータを利用し検索した。ランダムに塩基配列がコドンが並んだ場合、64個のうち3個が終始コドンなので、20個に1回は終始コドンが出現する計算となる。つまり、100個以上のコドンでも終始コドンが出現しないということは、遺伝子である可能性が高いと考えられる。

原核生物で同定された遺伝子は、ヒトの遺伝子の比較にも用いられた。生命の根幹に関わる遺伝子は、どの生物種においてもよく保存されているため、ヒトと大腸菌などで相似した遺伝子を持っていると考えられるためだ。事実、大腸菌とヒトには共通の遺伝子が多々ある。

また、実際に発現しているmRNAから逆転写酵素を使ってcDNAを作成する方法もある。このcDNAの配列は、ゲノムのエキソンの配列と一致している(途中イントロンで中断されているかもしれないが)。そのため、ゲノム全体の塩基配列と比較して遺伝子の位置を特定することができる。しかし、細胞によって発現しているmRNAが異なるため、あらゆる組織を調べる必要がある。

http://bio1511.biology.gatech.edu/

このような作業を積み重ね、2004年のNature誌に遺伝子数は20,000~25,000個にすぎないことが発表された。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*