ちょっとディープな生物の世界

公式化されたカウンセラーの3つの役割

3つの公式

クライアント中心療法が実践されていくにつれ、特にカウンセラーの効果的な態度や役割について明らかになった部分が増えた。それを言語化したものが「公式」と言うことができよう。これはいわゆる「治療者の三条件(自己一致、共感的理解、無条件の肯定)」以前の考えである。内容としてほぼ同じであるが、また別の言葉で補則しているものとして理解しておこう。

  1. 非指示的ということ
  2. 感情の明確化
  3. 感情移入理解的な理解

しかし、これらの公式は、根底から支える哲学(カウンセラーのクライアントへの態度)があって初めて真の意味を持つのであって、知識だけが先行しないように注意しよう。

1. 非指示的ということ

「非指示的」という言葉が持つ誤った認識として次のような態度がある。

「彼の側における積極性と情動的反応を最小限にしか包含しない受動性によって、最もよく表現されると思っている。彼は『クライトアンの邪魔をしないように努める』」

しかし、上記のような態度は、クライアントからしてみれば、関心の欠如・拒絶として経験される。また、無干渉主義はクライアントに対して価値がある人間であることを全く示さない。

2. 感情の明確化

感情の明確化とはカウンセラーが持つ役割であり、クライアントが自分がどう感じているのか、その情動を認知し明確化するように促すことである。これは、クライアントの情動をカウンセラーが客観的に認知してズケズケと断定的に言うことでは決してない。

「カウンセラーの言葉が断定的である場合には、それはひとつの評価、すなわち、カウンセラーによってなされたひとつの判断となり、カウンセラーはいまや、クライアントの感情がいかなるものであるかとクライアントに告げているのである。この過程はカウンセラー中心であり、クライアントの感情は『わたしは診断されようとしている』となる傾向がある」

それは、どのようにして感情の明確化はなされるのであろうか。そのプロセスは次の項目で説明される。

3. 感情移入的な理解

感情移入的な理解とは次のような理解である。

「カウンセラーが可能なかぎりにおいて、内部的照合枠を身につけ、クライアントがながめているままにその世界を知覚すること。クライアントがみずからながめているままにクライアント自身を知覚すること、そのようにしている間は外部的照合枠にもとづく一切の知覚を排除しておくこと、そして、この感情を移入して理解したことをコミュニケートすること」

「外部的照合枠」による理解とは、クライアントがどのような診断が下されるのか、訴えの原因とは何なのか、クライアントを客観的に理解しようとする仕方である。一方で、「内部的照合枠」による理解とは、クライアントから見える世界の見え方・自分自身の見方を共有しようとする仕方である。カウンセリングの過程とは、まさにこの内部的照合枠による理解そのものである。

しかし、この理解とはカウンセラーがクライアントに深い所で同一化することではない。カウンセラーは感情の動きのレベルで知覚しているが、クライアントそのものに巻き込まれるような情動的な同一化は避けなければならない。

「クライアントの態度を生きるということは、カウンセラー側における情動的同一化によるのでなくして、むしろ感情移入的同一化であり、この感情移入的同一化においてカウンセラーはある1つの感情移入の過程に専念することにより、そのクライアントの嫌悪や希望や恐怖を知覚しているが、しかしカウンセラー自身が、カウンセラーとしてそれらの嫌悪や希望や恐怖を経験することではない」

感情移入的に理解しようと努めるが、それは「カウンセラー自身のこと」ではなく、あくまで「相手のこと」であるという認識に立って行われる。

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