生態系とその保全

生態系保全

生態系保全のための条約・法律

生態系保全のために、様々な条約・法律が制定されている。

ラムサール条約

渡り鳥の生息地である湿地を保全する条約。沖縄のサンゴ礁、マングローブ、琵琶湖、釧路湿原が該当している。

釧路湿原

ワシントン条約

絶滅危惧種の捕獲・国際取引を禁じた条約。

ワシントン条約
ワシントン条約で保護されている動物http://www.trafficj.org/

生物多様性条約

生物多様性を保護する条約。これに基づいて外来生物法、種の保存法が成立された。

外来生物法

在来種に大きな影響を与える特定外来生物の飼育・運搬を規制している。

ワニガメ
特定外来生物のワニガメhttp://ligustrum.blog21.fc2.com/

種の保存法 

絶滅危惧種を保護する法律。 

ライチョウ
 絶滅危惧種であるライチョウhttp://ganref.jp/

生態系のバランス

生態系の復元力

生態系は様々な生物集団と環境の相互作用であり、物質量や生物量は絶えず変動している。しかし、その変動の幅は一定に保たれている。また、変動(自然災害、公害など)があったとしても長い年月が経てば、元に戻ろうとする力が働く。この復元力を生態系の復元力と呼ぶ。しかし、生態系の復元力を上回る変動が起これば、元には戻らず、異なる生態系へと移行せざるを得ない。

復元力

人類による生態系への影響

科学技術の進歩によって、人類は環境に大きな影響を与えるようになった。光化学スモッグ、酸性雨、地球温暖化、水質汚染、富栄養化、生物濃縮、外来生物、絶滅危惧種などは人類と関係深い現象である。

光化学スモッグ

排気ガスなどに含まれる二酸化硫黄・二酸化窒素が紫外線によって光化学オキシダントとなり、 光化学スモッグを引き起こしている。光化学スモッグとは、光化学オキシダントによって周囲の見渡しが悪くなる現象のことである。光化学スモッグは健康被害を引き起こす。

光化学スモッグ
光化学スモッグhttp://kinisuru.com/

酸性雨

排気ガスなどに含まれる二酸化硫黄、二酸化窒素が大気中の水と反応して硫酸硝酸となって、雨として降りだす現象を酸性雨と呼ぶ。酸性雨は森林を枯れさせたりなど自然破壊へと繋がっている。

酸性雨
酸性雨で枯れた森林http://seesaawiki.jp/

地球温暖化

火力発電の化石燃料や排ガスなどから発せられる二酸化炭素が大気中に増え、地表から放射される赤外線を吸収する(温室効果)。温室効果によって、地球の気温は上昇する。この現象を地球温暖化と呼ぶ。

地球温暖化
地球温暖化によって引き起こされる災害等http://www.city.soka.saitama.jp/

水質汚染

汚濁物質は川や海の微生物によって分解され浄化される。この現象を自然浄化と呼ぶ。自然浄化できる限度をを超えると、水質が汚染される。水質は、生物学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、水生生物の種類などによって調査することができる。

  • 生物学的酸素要求量(BOD):水中微生物が有機物を分解するのに必要な酸素量
  • 化学的酸素要求量(COD):酸化剤が水中有機物を分解するのに必要な酸素量
水質汚染

富栄養化

生活排水が流入し、海や川の窒素やリンなどの濃度が高くなる現象を富栄養化と呼ぶ。富栄養化によって植物プランクトンが過剰に増殖し、赤潮アオコを引き起こす。

赤潮
赤いプランクトンが大量発生する赤潮http://blogs.yahoo.co.jp/

アオコ
 緑色のプランクトンが大量発生するアオコhttp://www.epochtimes.jp/

生物濃縮

有害物質(有機水銀、PCB、DDT)が食物連鎖を通じて、高次消費者になればなるほど高濃度に蓄積されていく現象を生物濃縮と呼ぶ。水俣病などは、海に流れでた水銀がプランクトンや小魚に取り込まれ、さらにそれらの生物を食べる高次消費者の体内に蓄積され、最終的に高濃度の水銀を人間が食べることによって引き起こされた。

生物濃縮
PCB
PCBはPoly Chlorinated Biphenyl(ポリ塩化ビフェニル)の略称で、ポリ塩化ビフェニル化合物の総称です。コプラナーPCB(コプラナーとは、共平面状構造の意味)と呼ばれるものは毒性が極めて強くダイオキシン類として総称されるものの一つとされています。
PCBが大きくとりあげられる契機となった事件として、カネミ油症事件があります。この事件は、米ぬか油(ライスオイル)中に、脱臭工程の熱媒体として用いられたPCB等が混入したことが原因で、昭和43年10月、西日本を中心に広域にわたって、米ぬか油による食中毒が発生しました。当時の患者数は約1万3千名に上ったと言われています。
一般にPCBによる中毒症状として、目やに、爪や口腔粘膜の色素沈着などから始まり、ついで、座瘡様皮疹(塩素ニキビ)、爪の変形、まぶたや関節のはれなどが報告されています。
DDT
DDTとはジクロロジフェニルトリクロロエタンの略であり、かつて使われていた有機塩素系の殺虫剤、農薬である。自然界で分解されにくいため、長期間にわたり土壌や水循環に残留し、食物連鎖を通じて人間の体内にも取り込まれ、神経毒として作用する。またアメリカの野生ワニなどで環境ホルモン作用も疑われた。このため、現在、日本国内において製造・使用が禁止されているが、一部の発展途上国においてはマラリア予防のために使用されている。 

外来生物

人間によって他の地域から連れて来られた生物を外来生物と呼ぶ。非常に強い種であることが多いため、生態系を大きく変化させることがある。このような外来生物を侵略的外来生物と呼ぶ。アメリカザリガニ、ブラックバス、マングース、セイタカアワダチソウ、セイヨウタンポポなどがある。

セイタカアワダチソウ
セイタカアワダチソウhttp://bekkan.qherb.jp/?p=1005

絶滅危惧種

個体数が減少し、絶滅する可能性がある生物を絶滅危惧種と呼ぶ。人間による乱獲、環境破壊が大きな原因となっている。絶滅危惧種を示したレッドデータブックが作成されている。日本ではイリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナ、クマタカ、オオサンショウウオ、ミヤジマトンボ、アツモリソウ、ムニンノボタン、デンジソウ、マリモなどがある。 

ミヤジマトンボ
ミヤジマトンボhttp://www.miyajima-wch.jp/

アツモリソウ
 アツモリソウhttp://shop.plaza.rakuten.co.jp/

 ムニンノボタン
ムニンノボタンhttp://www.ogasawara-syokubutusi.com/

デンジソウ
 デンジソウhttp://jptopic.org/

生態系内の物質循環

炭素の循環

生物物質で重要な役割を占める炭素(グルコース・糖分など)は生態系において循環している。空気中の二酸化炭素が光合成によって有機物となり、呼吸などによって有機物が分解されて、また二酸化炭素に戻る。

炭素

窒素の循環

生物物質で重要な役割(核酸・タンパク質など)を占める窒素は生態系において循環している。 大気中の窒素は窒素固定細菌によって、アンモニウムイオンとして蓄えられる(窒素固定)。また、死骸から出るものなども含めてアンモニウムイオンは、硝化細菌によって硝酸イオンに変えられる(硝化)。硝酸イオンは、植物などによって有機窒素化合物に作り替えられる(窒素同化)。

窒素

窒素固定細菌

空気中の窒素をアンモニウムイオンとして固定する細菌を窒素固定細菌と呼ぶ。マメ科の植物の根に共生している根粒菌などが有名である。

konryu

硝化細菌

アンモニウムイオンを硝酸イオンに変える細菌を硝化細菌と呼ぶ。

syouka

窒素同化

植物が硝酸イオンを吸収して有機窒素化合物(アミノ酸・核酸など)に作り変える現象を窒素同化と呼ぶ(詳細はこちら)。

窒素同化

http://biolokii.web.fc2.com/

エネルギーの流れ

生物全体を支えるエネルギーは、太陽からの光エネルギーに支えられている。光エネルギーは、光合成によって化学エネルギーとして生態系に取り込まれ、生物間を移動し、熱エネルギーとして放出される。エネルギーは太陽から生物へと一方方向のみに流れており、循環しない。

生態系の働き

生産と消費

生態系は、物質を生産し、消費することによって成り立っている。それらの物質がどのように移行するかを表したのが下の図である。

生産と消費

  • S 現存量:もともとある量
  • G 成長量:ある時期に増加して成長した量
  • C 被食量:上位者に食べられる量
  • R 呼吸量:呼吸によって消費される量
  • D 死滅分解量・枯死量:組織などが死滅して分解される量
  • U 不消化排出量:消化せずに排出される量

生産者

生産者が光合成によって生産した有機物の全ての量を総生産量(G~R)と呼ぶ。その内のいくらかは、生産者自身が呼吸をするために呼吸量(R)として使われ、また、生産者自身が成長するための成長量(G)として使われる。蓄えた栄養分は被食量(C)と呼び、死滅した細胞などの有機物は枯死量(D)と呼ぶ。生産と消費

  • 総生産量:一定期間中に合成された有機物の全体量
  • 純生産量:総生産量-呼吸量
  • 成長量:純生産量-(被食量+枯死量)

消費者

消費者は、生産者を食べることによって、総生産量の内から被食量分(摂取量)の有機物を得ることができる。被食量の大部分は同化されて同化量(G~U)となる。同化されずに排出されるものは、 不消化排出量(U)と呼ぶ。同化量は、呼吸量(R)、成長量(G)、被食量(蓄えた栄養、C)、死滅分解量(死滅した細胞など、D)として使われる。

生産と消費

  • 同化量:摂取量(生産者の被食量)-不消化排出量
  • 成長量:同化量-(呼吸量+被食量+死滅量)

高次消費者

高次消費者は消費者を食べ、消費者の被食量(摂取量)が高次消費者に移行する。

生産と消費

分解者

分解者は枯死量、不消化排出量、死滅量などを分解する。分解する有機物の量を分解量と呼ぶ。

  • 分解量:生産者の枯死量+消費者の不消化排出量・死滅量

食物連鎖

食物連鎖とは

捕食者と被食者の繋がりを食物連鎖と呼ぶ。食物連鎖は生産者から始まり、一次消費者、二次消費者…と続いていく。

食物連鎖

https://smartsite.ucdavis.edu/

生産者からではなく、生物の死骸から始まる(分解者から始まる)食物連鎖は腐食連鎖と呼ぶ。また、実際には多くの生物の補食関係が複雑にからみあっている。そのような食物連鎖を食物網と呼ぶ(下画像)。

食物網

栄養段階

栄養段階とは生態系内の生物を栄養分の摂り方によって三段階に分けたものである。無機物から有機物を合成する生産者、生産者を捕食する消費者、生産者や消費者の死体・排出物を分解する分解者の三段階に大別できる。

eiyoudannkai

キーストーン種

食物連鎖にあって、比較的少ない生物量ながらも他の生物に大きな影響を与える生物種をキーストーン種(キーストーン捕食者)と呼ぶ。 例として北太平洋沿岸のラッコが挙げられる。1990年代にラッコの減少に伴い、その餌となっていたウニの個体数が増加した。ウニがジャイアントケルプの仮根を食い荒らしたため、ジャイアントケルプの海中林が破壊され、生物群集に影響が出た。

ラッコ

生態ピラミッド

生産者を最も底辺として、栄養段階順に生態系内の生物を並べていったものを生態ピラミッドと呼ぶ。高次消費者になればなるほど、個体数が少なくなるので、ピラミッド型になる。生態ピラミッドは、個体数のピラミッド、生物量(生物種の重さ)のピラミッド、エネルギー量(生物種が保有しているエネルギー)のピラミッドの3つが作られる。個体数・生物量のピラミッドにおいては、ピラミッド型にならない場合もある。

ピラミッド

生態系の構造

生態系とは

1つの地域に生息する生物集団非生物的環境(光、温度、水、大気、土壌・・・)が作る環境を生態系と呼ぶ。生物集団同士での相互作用と、生物集団と非生物的環境の相互作用に分けることができる。

生態系

作用と環境形成作用

非生物的環境から生物に及ぼす影響を作用と呼び、生物集団が非生物的環境に及ぼす影響を環境形成作用と呼ぶ。

作用

生物集団

生物集団は生産者消費者に分けることができる。消費者の中で、有機物を無機物に分解する生物は分解者と呼ばれている。

生産者

無機物から有機物を作る生物。植物、光合成細菌、化学合成細菌などがいる。

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https://www.pakutaso.com/

下画像は光合成細菌の一種である緑色硫黄細菌である。光合成細菌は、光エネルギーを利用してCO2を固定してグルコースを作る点は植物と同じであるが、クロロフィルの代わりにバクテリオクロロフィルを持つ。また、水H2Oの代わりに硫化水素H2Sなどを光合成に用いる。

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下画像は化学合成細菌の一種である硝化細菌である。化学合成細菌はアンモニアを酸化して硝酸にする際に得られるエネルギーを用いて、CO2を固定してグルコースを合成している。

 syouka

消費者

有機物を食べて生活する生物。植食性動物は一次消費者と呼ばれ、植食性動物を食べる肉食性動物は二次消費者と呼ばれる。肉食性動物をさらに食べる肉食性動物は三次消費者と呼ばれる。

生態系

分解者

消費者の内、死体や糞・尿の有機物を無機物に分解する生物を分解者と呼ぶ。細菌類、菌類などがいる。彼らも有機物を分解する点では消費者とも言えるが、死体や糞・尿を分解する点で他の消費者とは異なることから、区別されている。下画像はヒト腸内に住む細菌類の仲間である。

腸内細菌

細菌とは大腸菌などの原核生物を指し、菌類とはキノコなどの真核生物を指す。同じ「菌」とつくが全く異なるので注意。下画像は酵母菌(真核生物)である。

酵母菌