ちょっと変わった歯の持ち主たち
歯は口の中にある、食べ物を細かくするための咀嚼器官です。しかし、生物の中には咀嚼を目的とするのではなく、別の用途のために歯を使う生き物もいます。また、咀嚼の能力を最大限に高めるために進化した生き物もいます。
歯があり得ない進化を遂げた動物たちをご紹介します。
イッカク
イッカクは全長4mにも達する巨大な水棲の哺乳類です。オスには特徴的な角が生えていますが、実はこれは「歯」です。イッカクの歯は上顎に2本しか生えていません。そのうちの左側の切歯が巨大化し、口を突き破って外に出て、牙となっています。
右側の切歯は巨大化せず、小さなままです。中には右側も巨大化し、イッカクならぬ「ニカク」になる個体もいます。
牙を何に使っているのかは未だ調査中ですが、牙で魚を叩き捕食していたとの報告もナショナルジオグラフィックに掲載されています。
牙をすばやく突き出し、ホッキョクダラを叩いて気絶させている。こうすれば魚は動けなくなり、容易に捕食できるというわけだ。
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バビルサ
こちらのイノシシも特異な牙を持つ生き物として有名です。4本の犬歯が上向きに口から顔へ突き出しています。
犬歯がカーブして顔面に向かって成長することから、最終的に牙が脳に刺さって死ぬという噂もあり、「死を見つめる動物」との異名までありました。しかし、それはデマであることがわかっています。
牙は何に使われているか判明していませんが、牙が立派な方がメスと交尾できることがわかっています。性選択の結果、牙の特徴が強められていったのだと考えられます。
デイノテリウム
約100万前に絶滅したゾウの仲間です。ゾウ目の中では最大級で、体長は5mにも達しました。
牙が何故か下向きに突き出ており、現在いるどの生物とも似ても似つかない姿をしています。そのため、牙の用途ははっきりとわかっていませんが、確実に摩耗の跡があり、単なる飾りではなかったことが窺えます。おそらく、樹皮などを剥がすのに使用していたのではないかとの仮説が有力です。
プラティベロドン
1500万年前に絶滅したゾウの仲間です。下あごが異様に伸びており、あごの先端には大きな歯が生えていました。
発見された当初は、歯をスコップに使い、水辺の植物を掘り起こしていたと思われていました。しかし、現在では樹皮を剥ぐのに使用していたのではないかと考えられています。
ニジェールサウルス
白亜紀前期に生息していた植物食恐竜です。体長は10mほどで、上下の歯が左右ほぼ一直線に並ぶという極端な顔をしています。サメのように予備の歯があり、予備を含めおよそ500本の歯があります。
このような歯の並び方は、地面の草を食べやすくするために進化したと考えられています。
シノノメサカタザメ
シノノメサカタザメは頭はエイですが、尾はサメのような体をしている魚です。名称に「サメ」とついていますが、鰓は体の下についているのでエイに分類されます。
シノノメサカザメはサザエなどの貝類やウニが好物で、貝殻ごとバリバリすりつぶして食べます。そのため歯がすり鉢のような進化を遂げています。
ラブカ
ラブカはおよそ8000万年前から姿を変えていない「生きた化石」と呼ばれるサメです。
体長はおよそ1.5mほどであり、歯が縦に並んでおり、イカなどの柔わらかい獲物を引っかけやすい構造となっています。歯の数は300本です。
ヤツメウナギ
ヤツメウナギは顎を持たない生き物です。名前に「ウナギ」とついていますが、魚の仲間でもありません。魚以前の、もっと原始的な生物です。
ヤツメウナギは餌となる魚に吸いついて、肉を削ぎます。歯のように見えるものは、実は皮膚が角質化したもので、歯ではなく、毛や爪と同じようなものです。
カタツムリ
カタツムリは歯舌と呼ばれる器官があり、人の歯に相当する器官です。そこには1万本の細かい歯がならんでおり、やすりのような役割を持ちます。
大型のカタツムリであるアフリカマイマイは自分の殻を作るカルシウムを摂取するためにコンクリートすら歯舌で削りとると言われています。