葉緑体の構造
葉緑体は最外層が二重膜の構造である。二重膜の中には、チラコイドと呼ばれる構造が多数存在している。チラコイドが重なっている構造をグラナと呼ぶ。チラコイド膜には膜タンパク質が埋め込まれており、そこで光化学反応が行われている。チラコイド以外の基質の部分はストロマと呼ばれており、カルビンベンソン回路の反応が行われている。光化学反応と、カルビンベンソン回路を合わせて光合成と呼ぶ。光合成では二酸化炭素と水からグルコースが合成される。
光合成の反応:6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2
下画像は電子顕微鏡写真である。グラナの構造がよく観察できる。
光合成色素とは
光エネルギーをキャッチする色素を光合成色素と呼ぶ。光合成色素にはクロロフィルa、クロロフィルb、カロテノイド(カロテン、キサントフィル)などの種類がある。植物の持つ光合成色素の大部分はクロロフィルで、マグネシウムを持つ色素である。
光合成に有効な波長
光の吸収率と光の波長をグラフに表したものを吸収スペクトルと呼ぶ。青紫色と赤色が良く吸収されている。また、光合成速度と光の波長との関係をグラフに表したものを作用スペクトルと呼び、青紫色と赤色の光で良く光合成が行われている。青紫色と赤色の光が光合成に利用されることはエンゲルマンの実験によって証明された。
エンゲルマンの実験とは
エンゲルマンは19Cの科学者である。白色光をプリズムで波長ごとにわけ、アオミドロに照射し、光合成をさせた。すると、赤色と青色付近に細菌が集まった。この実験により、光合成はある波長のみを利用していることがわかった。
なぜ光合成では緑色の光は使われないのか
エンゲルマンの実験では青色・赤色の光が光合成で使用することが判明したが、なぜ全ての色のエネルギーを使わないのだろうか。それは、全ての色のエネルギーを吸収すると、かえって効率が悪いからだと考えられている。
全ての光のエネルギーをを吸収した方が効率が良いように思われるが、そもそも植物は大量の光エネルギーを化学エネルギーに変換する機構を持っていない。特にRubiscoは二酸化炭素への親和性が低く、酸素によって阻害されてしまう。つまり、大量の光エネルギーを得てしまうと、大量の酸素が発生し、結果としてRubiscoの反応が阻害されてしまうのである。これを防ぐためには、植物は大量のRubiscoを合成する必要があるが、葉のタンパク質の1/3の量のRubiscoが必要となる。それも現実的ではない。
緑色の光は全く使われないわけではない
緑色光はクロロフィルに吸収されにくいが、一部吸収されることも知られている。一旦、葉に入った光は葉の内部で何度も屈折し、何度も光合成色素に遭遇することによって吸収されるようになる。
特に海綿状組織の不定形な形が、光を強く散乱し、光と葉緑体との遭遇頻度を高めている。青色光や赤色光は、一度葉緑体と遭遇しただけでほぼ吸収されてしまう(90%)。葉内の反射による吸収は緑色光特有のものであり、これによって70~80%が吸収されるようになる。もちろん一部は葉の外に漏れ出すため、葉は緑色に見える。
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