遺伝子ノックアウト
ある特定の塩基配列を破壊して、遺伝子発現を阻害する技術をノックアウトと呼ぶ。下画像(右)は体節を形成する遺伝子をノックアウトされたマウスであり、上手く脊椎を形成できていない。
ノックアウトの方法
標的遺伝子の破壊は以下の手順で行われる。
- 標的となる遺伝子座で組み換えを起こすための相同領域を作成する(これをベクターと呼ぶ)。
- ベクターをエレクトロポレーション法等によってES細胞へ導入する。すると、ある確率で相同組み換えが起こり、標的とする遺伝子が選択マーカー遺伝子に置き換わり、目的の遺伝子が破壊される。
ノックアウトマウスを作成する方法
以下の手順で行われる。この実験手法はノーベル賞を受賞したものである。
- まず始めに胚性幹細胞(ES細胞)を取り出し、遺伝子組み換えて標的遺伝子を破壊し、ノックアウト細胞を作る。
- 作り出したノックアウト細胞を初期胚に移植し、母マウス内で育てさせる。すると、普通細胞とノックアウト細胞のキメラマウスができる。
- 上手く生殖腺にノックアウト細胞が進出していれば、ノックアウトされた遺伝子を持つ配偶子が形成される。
殆どの生物は二倍体で、対立遺伝子を有している。そのため、全ての標的遺伝子をノックアウトするまで、この過程を繰り返す。
ノックダウン
一方、塩基配列を破壊せずに遺伝子発現を抑制する技術をノックダウンと呼ぶ。下画像は脳形成因子の拡散を防ぐ遺伝子(nou-darake遺伝子)をノックダウンしたプラナリアである。nou-darake遺伝子についての詳細はこちらの記事を参照ください。
http://rstb.royalsocietypublishing.org/
ノックダウンの方法
2本鎖RNAを導入すると、それと相補的な配列を持つmRNAが破壊される現象をRNA干渉と呼ぶ。これは、生物が持つ遺伝子発現調節システムの1つである。ノックアウトは塩基配列を破壊するという非常に複雑な技術を要するのに対し、ノックダウンではmRNAの配列さえ分かっていれば、相補的な2本鎖RNAを導入しRNA干渉によって発現を簡単に抑制することができる。
「ノックアウトの方法」欄に書かれている内容は、「遺伝子組換えマウスの作製方法」です。「ノックアウトの方法」として書かれるべき内容は、「1.まず始めに胚性幹細胞(ES細胞)を取り出し、遺伝子組み換えて標的遺伝子を破壊し、ノックアウト細胞を作る。」の、どのように遺伝子を組み換えてノックアウト細胞をつくるか、の部分を解説しないと説明にならないです。修正をお願いします。
ご指摘いただきありがとうございました。確かに「ノックアウトマウス作成の方法」でした。記事、修正いたしました。よろしくお願いいたします。