生命現象とタンパク質

細胞内のタンパク質-微小管による運動-

べん毛・繊毛の運動

べん毛や繊毛は微小管ダイニンによって構成され。波打つような運動が可能となっている。真核細胞と原核生物(細菌)などのべん毛の運動の仕組みは異なるので注意。原核生物はべん毛モーターと呼ばれるモーターがべん毛の基部に備わっている。以下は真核細胞のべん毛運動の説明である。

微小管の構造

微小管はチューブリンと呼ばれる球状のタンパク質がいくつも結合し、管状の構造をとっている。直径は25nm程度である。

微小管

べん毛の構造

べん毛は微小管とダイニンが規則正しく並んだ構造をしている。中央の2本の微小管を中心微小管と呼び、その周囲に2本の微小管が対になった二連微小管が9つ並んでいる。 ダイニンは二連微小管同士を繋いでいる。

べん毛の構造
 http://www.seibutsushi.net/

べん毛の構造
https://ja.wikipedia.org/

屈曲運動の仕組み

 ダイニンがATP分解によって得られたエネルギーを用いて、隣接する二連微小管を掴んで押し上げる。そして、離し、また掴み、押し上げる、というような運動を繰り返し行う。

べん毛
 http://www.seibutsushi.net/

細菌のべん毛運動-べん毛モーター-

原核生物の細菌では、べん毛の基部が回転し、スクリューのようにべん毛が運動することが知られている。高校生物の範囲ではないが、あまりにもメカニックなその構造をぜひ一度は見てみて欲しい。

べん毛モーター
http://www.biophys.jp/


3:00~が3Dべん毛運動映像

生体内のタンパク質の種類

主なタンパク質の種類

体の主な成分は水(70%)であるが、それに次いで多いのがタンパク質(20%)である。人体を構成するタンパク質は10万種類あると言われている。生体内におけるタンパク質の大体のイメージを掴んでおこう。

タンパク質

コラーゲン

皮膚、腱、軟骨に多量に含まれている。細胞外マトリックス(細胞の外の構造)の主要成分である。グリシンと他2つのアミノ酸が繰り返されており、繊維状の構造をとる。多くが寄り集まってさらに強靱な繊維を形成する。

コラーゲン

アクチン、ミオシン(筋肉)

筋肉を構成するタンパク質である。サルコメアと呼ばれる構造を取り、筋繊維を作り出す。

サルコメア

輸送に関わるタンパク質 

細胞膜に埋め込まれ、細胞内外の物質の輸送に関わるタンパク質である。チャネル、輸送体、ポンプなどの種類がある。

アクアポリン

細胞内の様々なタンパク質

物質の輸送に関わるモータータンパク質や、タンパク質の三次構造を作り出すシャペロン、情報伝達物質として機能するペプチドホルモンなどがある。

キネシン

細胞接着に関わるタンパク質

隣接する細胞を密着させるクローディン、細胞同士を結合させるカドヘリン、細胞同士をつなぎ合わせ物質を輸送する経路となるコネクソン、細胞外基質と細胞を結合させるヘミデスモソームなどがある。

密着結合

酵素

化学反応の触媒(自身は変化せずに反応を促進させる)として機能するタンパク質を酵素と呼ぶ。5000種類ほどの酵素が人体に存在すると言われている。

セルラーゼ
セルラーゼ(紫)とセルロース(緑)http://www.a.u-tokyo.ac.jp/

ヘモグロビン 

赤血球内にあるタンパク質。ヘムと呼ばれる構造には鉄原子が組み込まれており、酸素と結合し、体全体に酸素を運搬する。

hemogurobin

免疫グロブリン

いわゆる「抗体」と呼ばれるタンパク質。 抗原と特異的に結合し、複合体(たくさんの抗体と抗原が繋がり合う)を形成し、抗原を無毒化する。

細胞内のタンパク質-細胞接着-

細胞接着

多細胞生物は細胞同士が接着している。動物細胞の細胞接着には、密着結合、接着結合、デスモソームによる結合、ギャップ結合などがある。

密着結合

隣接する細胞の細胞膜を密着させる結合。クローディンと呼ばれるタンパク質が使われる。

接着結合

細胞の形態を保持する結合。カドヘリンと呼ばれるタンパク質が使われる。カドヘリンは、同じ種類の細胞でなければ接着しない。また、接着にはカルシウムイオンが必要なため、カルシウムイオンが含まれない溶液に組織を浸すと細胞同士が離れやすくなる。

デスモソーム

細胞同士をボタン状につなぎ合わせる結合。カドヘリンが使用される。このカドヘリンも同じ種類の細胞でなければ接着しない。

ギャップ結合

隣接する細胞同士の物質移動ができるようにする結合。コネクソンと呼ばれるタンパク質が使われる。このコネクソンがチャネルとなり、ここを通って無機イオンや小さい水溶性分子が隣接細胞の細胞質から細胞質へと直接移動することができる。また、細胞同士を電気的に結合するため、心筋組織などの興奮伝播にも関わっている。

GAP

ヘミデスモソーム

動物細胞の外には糖タンパク質などの細胞外基質(細胞外マトリックス)が存在する。細胞外基質は、超分子化合物であり、骨格的な役割や足場の役割、細胞増殖因子を提供するなどの働きを持つ。細胞はインテグリンと呼ばれる接着タンパク質で、細胞外基質と結合している。この構造をヘミデスモソームと呼ぶ。

ヘミデスモソーム
ヘミデスモソーム。黄色が細胞外基質、緑がインテグリンhttp://meddic.jp/hemidesmosome

細胞内のタンパク質-内分泌に関するタンパク質-

内分泌とタンパク質

インスリンなどはタンパク質からできてるホルモンである。ペプチドで構成されているホルモンをペプチドホルモンと呼ぶ。ペプチドホルモンは親水性であるため、細胞膜を透過できない。そのため、細胞膜の受容体タンパク質と結合する。

セカンドメッセンジャー

ペプチドホルモンが受容体タンパク質に結合すると構造が変化し、Gタンパク質などを通じて、cAMP合成酵素が活性化する。cAMPはATPから作られる物質であり、標的タンパク質に結合して様々な反応を起こさせる。細胞外の情報を間接的に細胞内に伝えることから、cAMPやカルシウムイオンなどはセカンドメッセンジャーと呼ばれている。

Gタンパク質
細胞内シグナル伝達関与するタンパク質で、GTP加水分解活性を保つためにGタンパク質とよばれる構造により、3量体Gタンパク質と低分子量Gタンパク質存在し、いずれも細胞内における信号伝達中心的機能を果たす。
細胞内の生化学的反応を切り替える「スイッチ」としてグアノシン三リン酸 (GTP)をグアノシン二リン酸 (GDP)へ替える
http://www.weblio.jp/content/G%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA

セカンドメッセンジャー
ステロイドホルモン

脂質でできたホルモンは、ステロイドホルモンと呼ばれる。ペプチドホルモンとは異なり、細胞膜を透過し、受容体タンパク質に結合する。受容体タンパク質は、DNAに結合して遺伝子発現を調節する。

ステロイドホルモン

細胞内のタンパク質-シャペロン-

シャペロン

タンパク質は折りたたまれて三次構造を形成する。きちんと折りたたまれるように補助するタンパク質がシャペロンである。シャペロンは変性したタンパク質を元に戻す働きや、古くなったタンパク質分解促進をしたりもする。

細胞内のタンパク質-免疫に関するタンパク質-

抗体

抗体は免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質からできている。抗体は4本のポリペプチド鎖がS-S結合したものである。抗体に結合する部分は可変部と呼ばれ、B細胞が自ら遺伝子組み換えを行ってアミノ酸配列を変えている。

抗体
抗体。Y字の枝分かれしている部分が可変部http://www.virology.ws/

攻撃
抗原に結合する抗体http://www.shannonassociates.com/

B細胞レセプター

B細胞は抗体を産生する細胞である。B細胞は細胞表面のB細胞レセプターと呼ばれるタンパク質で抗原を認識している。

細胞表面の抗原レセプターとして細胞膜結合形の免疫グロブリンを発現しており、これによって自分に適合した抗原の出現を察知する。抗原が適合した場合には、それを細胞内に取り込んだ後、抗原提示する。提示された抗原をヘルパーT細胞が認識すると、ヘルパーT細胞からの刺激を受け、形質細胞に分化することになる[1]形質細胞分化すると分泌形の免疫グロブリン抗体として産生するようになる。個々のB細胞が産生する抗体は均一な免疫グロブリン分子(抗原分子)であり、単一の抗原特異性を示す。この単一な抗体産生細胞のクローンを分離してモノクローナル抗体を得ることができる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/B%E7%B4%B0%E8%83%9E

T細胞レセプター

T細胞は獲得免疫の司令塔となる細胞である。T細胞の表面にはT細胞レセプターと呼ばれるタンパク質がある。T細胞レセプターは、MHC(主要組織適合抗原)に結合し、自己と非自己を認識する。MHCは個体を識別するための細胞膜上にあるタンパク質である。

Tcell
T細胞表面のレセプターhttp://www.hybridmedicalanimation.com/

HLA

ヒトのMHCはHLAと呼ばれ、臓器移植の際などに重要となる。

svg
HLAは細胞膜上にあるhttp://en.wikipedia.org/

トル様受容体(TLR)

自然免疫に関するマクロファージ、樹状細胞、好中球の細胞膜上や細胞質基質内にあるタンパク質である。トル様受容体が結合することによって自己と非自己を見分ける。

細胞内のタンパク質-モータータンパク質-

モータータンパク質

ATPを使って細胞骨格上を動くタンパク質をモータータンパク質と呼ぶ、モータータンパク質は、運動や物質の輸送に関与する。ミオシン、ダイニン、キネシンの種類がある。

ミオシン

筋肉を構成するモータータンパク質。アクチンフィラメントをたぐり寄せる。

ダイニン

神経細胞では軸索末端から細胞体の方へ物質を輸送する。微小管の上を移動する。また、鞭毛を構成する。

下画像は鞭毛の断面である。微小管にダイニンが結合している。

ダイニン
http://www.res.titech.ac.jp/

キネシン

キネシンは神経細胞において、細胞体から軸索末端へ物質を輸送する。下画像では小胞を結合させて、微小管の上を移動している。

キネシン

 

細胞内のタンパク質-神経細胞-

神経系のタンパク質

電位依存性チャネル

ニューロンの細胞膜には電位依存性チャネルが存在する。膜電位が変化すると、構造を変化させてNa+などを細胞内に流入させる。

伝達物質依存性チャネル

ニューロンの軸索末端にあるシナプスに興奮が伝わると、シナプスからは神経伝達物質が放出される。神経伝達物質は、隣接する細胞の伝達物質依存性チャネルに結合し、興奮を引き起こす。

内分泌とタンパク質

インスリンなどはタンパク質からできてるホルモンである。ペプチドで構成されているホルモンをペプチドホルモンと呼ぶ。ペプチドホルモンは親水性であるため、細胞膜を透過できない。そのため、細胞膜の受容体タンパク質と結合する。

セカンドメッセンジャー

ペプチドホルモンが受容体タンパク質に結合すると構造が変化し、Gタンパク質などを通じて、cAMP合成酵素が活性化する。cAMPはATPから作られる物質であり、標的タンパク質に結合して様々な反応を起こさせる。細胞外の情報を間接的に細胞内に伝えることから、cAMPやカルシウムイオンなどはセカンドメッセンジャーと呼ばれている。

Gタンパク質
細胞内シグナル伝達関与するタンパク質で、GTP加水分解活性を保つためにGタンパク質とよばれる構造により、3量体Gタンパク質と低分子量Gタンパク質存在し、いずれも細胞内における信号伝達中心的機能を果たす。
細胞内の生化学的反応を切り替える「スイッチ」としてグアノシン三リン酸 (GTP)をグアノシン二リン酸 (GDP)へ替える
http://www.weblio.jp/content/G%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA

セカンドメッセンジャー
ステロイドホルモン

脂質でできたホルモンは、ステロイドホルモンと呼ばれる。ペプチドホルモンとは異なり、細胞膜を透過し、受容体タンパク質に結合する。受容体タンパク質は、DNAに結合して遺伝子発現を調節する。

補酵素と反応の調節

酵素と補助因子

酵素には反応を進めるために補助因子を必要とするものもある。補酵素、補欠分子族、金属などが補助因子となる。

補酵素

補酵素とは酵素の働きを助ける物質である。熱に強い低分子の有機物で、ニコチン酸ビタミンB1などを成分としている。脱水素酵素ではNADを補酵素とし、NADが水素の受け取り手となっている。

NAD-_to_NADH
NAD+が水素と電子を受け取ってNADHになる。
補欠分子族

カタラーゼは補欠分子族のヘムを補助因子としている。

ヘム
ヘム
金属

炭酸脱水酵素亜鉛を補助因子としている。

炭酸脱水酵素
中心の球が亜鉛原子

反応の調節

フィードバック調節

酵素反応で生じた生成物が、酵素の反応を阻害・促進する現象をフィードバックと呼ぶ。

アロステリック酵素

活性部位とは異なる部位に、反応生成物が結合する部位(アロステリック部位)を持っている酵素。反応生成物が結合すると、構造が変化して活性が変化する。

酵素の反応

酵素の基質特異性

酵素には基質と結合する活性部位がある。この活性部位と結合できる物質のみに作用する。この性質を基質特異性と呼ぶ。

酵素の反応

酵素と基質が結合したものを酵素-基質複合体と呼ぶ。結合すると、酵素の構造が変化し、基質の活性化エネルギーを下げる。すると、基質が変化しやすくなる。このように活性化エネルギーを下げる働きをする物質を触媒と呼ぶ。

酵素と温度

酵素には反応速度が最大となる最適温度がある。温度が低すぎても反応しないし、高過ぎるとタンパク質構造が壊れてしまう。しかし、超好熱菌などの酵素の最適温度は100℃を超える。

酵素とpH

酵素には反応速度が最大となる最適pHがある。普通、pH6~pH8の範囲であるが、中にはペプシンのように強酸に強いものもある。

反応速度

酵素濃度が高くなると、反応速度は上がる。また、基質濃度が高くなると反応速度も上がる。基質濃度だけをある程度まで高くすると、反応速度は上昇しなくなる。これは、酵素が基質と結合して離れるまで時間がかかるためである。そのため、反応速度は基質濃度が十分な場合は、酵素濃度に由来する。

競争的阻害

基質と化学的に構造の似た物質が活性部位を奪い合うために反応速度がさがる。基質濃度を十分にすれば反応速度はもとに戻る。

非競争的阻害

阻害物質が活性部位以外の部分に結合して酵素の構造を変化させる。基質濃度を高くしても反応速度は戻らない。